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(Boulder)vol.9 アメリカの環境政策はどこへ…

  • 2008年10月30日

代替エネルギー開発のメッカ、コロラド州

国立代替エネルギー研究所
デンバー郊外の国立代替エネルギー研究所(NREL)
ConocoPhillips社のリサーチ兼開発センター
ボールダー郊外に建設中のConocoPhillips社のリサーチ兼開発センター
 コロラド州が民主党に票を投じた記憶は1992年の大統領選に遡る。当時現職大統領だった共和党ジョージ・ブッシュ・シニアに勝利した民主党ビル・クリントン候補への投票だ。これ以前の話となると、1964年の大統領選まで約30年の時を戻す必要がある。この間、コロラド州が民主党に投票したことはなく、ほぼ一貫して共和党を支持して来たことがわかる。このような共和党色の濃いコロラドにおいて、伝統的にリベラル派の多いボールダー郡だけは1984年の共和党候補ロナルド・レーガンへの投票を例外として共和党支持に回ったことが近年一度もない。
 ただ、冒頭でも述べたように、8年に渡る共和党ブッシュ政権下において、州内の共和党不支持率は徐々に高まってきた。このためコロラドはどちらの党に投票してもおかしくない状況になった。しかし、オバマ&バイデン候補が公約として掲げる15兆円ものエネルギー開発分野への投資案は州内に大規模なエネルギー開発施設を抱えているコロラド州にとって非常に魅力的である。
 デンバー郊外にはアメリカ国内最大規模の国立代替エネルギー研究所(NREL)を有し、ボールダー郊外にはConocoPhillips社の再利用可能・代替エネルギーに関する巨大なリサーチ兼開発センターが目下新しく建設中である。また現在ボールダー市が合衆国で初めての「スマートグリッド(Smart Grid)」政策テスト区域として選ばれ全米から注目を集めている。政府の巨額投資がこれらのエネルギー開発分野へ投下されることは州として大変歓迎すべきことであり、今回の大統領選でコロラドが民主党支持に回る可能性は高い。


圧倒的な動員力をふたたび

 アメリカは世界第1位のガソリン消費国である。その驚くべき消費量は、第2位以下20カ国分の総量を併せてもなおアメリカ一国分に及ばないというものである。年々干ばつは厳しくなり、ハリケーンは更に頻発するようになり、洪水の被害もますます深刻になるだろう。世界中の万年氷は冬場に凍る分よりも多くの量が夏場に溶けて無くなっていくだろう。このような現象を目の当たりにしてもなお、私たちの多くは自宅の電球をCFL(Compact Fluorescent Light Bulbs:電球形蛍光灯)に取り替えることすらしようとしない。これ以上どんな恐ろしい警告を発すれば、事態の深刻さを私たちに知らしめることができるというのだろうか。
“freewheelin ride”の自転車
党大会で“freewheelin ride”の自転車
 第二次世界大戦中の1942年1月6日、ルーズベルト大統領は自動車業界の首脳陣を一同に集め、45,000両の戦車、 60,000機の戦闘機、20,000門の大砲、600万トン相当の輸送船団を造り出すというかつて誰も見たことの無い未曾有の大製造計画を発表した。自動車業界はこの途方もない案に半ば呆れながら反対したが、大統領の強力なリーダーシップの下、結果的には1942年4月から1944年までの間アメリカでは1台の自家用車も製造されることはなく、産業界は兵器製造に没頭し、この間アメリカの経済システム自体が再構築されることになったのである。この大変革にアメリカという国は数十年どころか、数年さえも要さなかった。最終的には129,000機もの戦闘機が製造され、アメリカは世界最強の軍隊を有するに至ったのである。

 今日、私たちは当時のように民主主義の生き残りをかけて戦っているわけではない。進行する地球温暖化とそれを悪化させるばかりの非能率的なエネルギー供給システムに手をつけられないまま、私たちは「文明の生き残り」という更に大きく重要なものをかけて我々自身と戦っているのである。第二次世界大戦中にアメリカが見せた圧倒的な動員力と迅速な社会構造変化をもう一度もたらすために、私たちは今また強いリーダーシップを持った指導者の登場を待ちわびている。そしてそれ以上に大切なことは、地球温暖化という問題に立ち向かうための最も重要な武器となるのは、人々がそこにある危機を正しく認識し、そして新しいライフスタイルを実行する意欲を決して失わないということなのだ。

■ 筆者紹介
サミュエル D グッドマン
サミュエル D グッドマン
Colorado House International, LLC 代表。コロラド州生まれ。コロラド大学ボールダー校心理学部を卒業後、約5年間に渡り、シンガポールと日本の公立及び私立の小中高校、各種企業・政府機関で英語を教える。アメリカに帰国後、コロラド州ボールダーで「コロラドハウス」を立ち上げる。Boulder Green Building Guild 執行委員、Boulder LOHAS Guild 共同創設者。
http://www.coho-online.com/cms/
info@coho-online.com (お問い合わせは日本語でどうぞ)

 

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