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(Boulder)vol.8 小規模農家の挑戦

  • 2008年7月1日

 「Abbondanza Organic Seeds and Produce(以下、Abbondanzaファーム)」のリチャード・オルソン、シャノン・オルソン夫妻は今まさに、開拓者として未知の領域へ一歩を踏み出そうとしている。彼らの切り開こうとしている道は、他の数多ある小規模農家の未来への指標となり、昨今のローカルオーガニックフードのムーブメントの活性化を予感させる。

2人の開拓者

Edible Front Range Magazine
Photo:Brian Rabin
Edible Front Range Magazine
www.ediblefrontrange.com
 リチャードさんはニューヨーク州ブロンクスでイタリア系の大家族に生まれ育ち、その家族環境は幼少の頃から彼に強い労働倫理観を植え付けた。コロラド州フォートコリンズに移り住んだ彼は、彼が生涯をかけて情熱を注ぎ込むべきもの-農業-と出会い、その後30年に渡りこの道を一途にひた走ってきた。
 「私は農業に於けるさまざまな取り組みを考案することと、それに挑戦することを心から楽しんでいる。19歳のとき、これを一生の仕事としていけると確信したんだ」
 その情熱は彼を長きに渡る農場廻りの旅に駆り出した。北は青々と草木が茂るオレゴンから、南は乾燥したニューメキシコまで、旅をしながら目指すべき農業のあり方を模索し続けた。20年の旅の末、コロラドに戻った彼は、そこで運命の人、シャノンさんに出会い、その長い旅を終えたのである。
 シャノンさんはミシガン州の田園風景が広がる長閑な土地で生まれ育った。祖母と果樹園を歩いたり、エンドウ豆を摘み取ったりした思い出は今でも大切な宝物だという。
 「家族の夕食のために摘み取ったエンドウ豆を帰り道でつまんでいたら、美味しくて止まらなかったの。家の前まで帰って来たら、かごの中が空っぽになって、あわてて畑に戻って摘み直したことを今でも覚えているわ」シカゴに移住した彼女は、Farmer John’s (Angelica Organics) Community Supported Agriculture (CSA)のメンバーとして活動し忙しい日々を送った。しかし、体調を崩したことがきっかけで、オーガニック食品とクリーンなライフスタイルの重要性を改めて実感したそうだ。
 仕事の関係でシカゴからコロラド州ボールダーへと移り住み、そこで「仕事のキャリア」と「娘の養育」を両立させることが人生の急務になる。


リチャードさんとシャノン
リチャードさんとシャノンさん、自宅にて
ボールダーのAbbondanzaファーム
ボールダーのAbbondanzaファーム
 Whole Foods社のオーガニックスーパーマーケット部門を担当するWholePeople.com社で働くうち、グリーンリビングとオーガニック関連の製品小売業者であるGaiam社でセールスとマーケティングの責任者に抜擢されるが、すぐに彼女は大企業のあり方に疑問を抱き始める。企業利益を優先するあまり、従業員への利益還元や社会的責任の遂行が十分でないように思えたのだ。「WholePeople.com社では代替医療の領域までもカバーした保険を用意してくれたし、週に1回針灸師やマッサージセラピストを職場に派遣までしてくれたの。でも、Giamでは商品知識も危なっかしい社員達がコールセンターでオーガニックチェアを販売し、その足でタコ・ベル(人気のファーストフードチェーン)にランチを食べに行くような環境だったわ」
 社内の労働環境と自分たちが提供している商品内容とのギャップに悩んだ彼女は、数年後、大企業で働くという生き方に終止符を打った。そんな時、シャノンさんとリチャードさんは出会うべくして出会う。それは前々から決められた運命のように極自然な出会いだったそうだ。
 2人は、ボールダー郡内の全ての学校で「パーマカルチャー(永続可能な農業・生活設計)」について教えるという活動を始めたが、時同じくしてあの悲惨なアメリカ同時多発テロ事件が起こり、全米を悲しみの底へ突き落とした。この事件は社会不安を引き起こし、各地の社会的な取り組みや非営利的な活動を萎縮させ、2人の活動も難しい局面に立たされた。これら様々な社会背景が、彼らを彼らの本来の専門分野-農業-へと再び導くのである。



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