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Vol.23 日本の伝統美が息づく「秩父銘仙」
企画コーディネーター/横川峰生さん

  • 2012年12月1日

新しい価値を見つける

秩父の捺染技術を利用したアニメ柄の巾着
秩父の捺染技術を利用したアニメ柄の巾着
(c) ANOHANA PROJECT
 「当時の銘仙デザインは数十年も前のものなのですが、古さを感じないのです。当時の建物などと同じで、アールデコやアールヌーボーといったヨーロッパのデザインを取り入れていることがわかります。私もこの分野のデザインが大好きなのですが、当時の日本人が海外からの文化を取り入れ、デザインに活かしていったというのは、現代の私たちと同じ感覚なのかもしれません。  もちろん色遣いなどは時代によって変化していくものなので、変えて行かなければいけないかなと思っています。この銘仙をルーツとして、当時のフィロソフィーを理解した上であれば、何かもっと別のものに生まれ変わっても良いのかもしれません。デザイン性は変わらないものとして受け継いでいかなければいけないものだと思います。あと、できるならほぐし捺染技術を使ったもの。上位ランクには必ず“本物”があって、ステップアップできるようになったら良いなと思っています。
 生活習慣が目まぐるしく変わっていく中で、今まで受け継がれてきた根本の部分は変えるべきではないと思います。そんなルーツを守りながら、使われ方など、時代に合わせて変えていくことも必要。使っていただける方とそんな価値観を感じ合える商品を作りたい」と横川さんは考えているようです。


現代のイラストレーター描き下ろしの手ぬぐい
現代のイラストレーター描き下ろしの手ぬぐい
 以前は日常的に使われていた風呂敷。いつの間にか紙袋やビニール袋などの使い捨てできる大量生産品にその座を譲ってしまいましたが、最近はその価値が見直されつつあります。包み方や縛り方を工夫することで、中身の大きさや形など、種類を問わず持ち運ぶことができ、非常に便利でロハス的。
 また、風呂敷よりも手軽に使える存在の手ぬぐい。古くから長く使われてきたツールに、現代の新しいデザインを合わせることによって「ちょっと良い物」に変身。さらに縫製などの加工を施すことによってトートバッグやインテリア製品など様々なオリジナル製品を生み出しています。

秩父織物フェスティバル

秩父銘仙柄を展示の着物カフェ。秩父織物フェスティバルで
秩父銘仙柄を展示の着物カフェ。秩父織物フェスティバルで
秩父織物フェスティバルでの着物ショー
秩父織物フェスティバルでの着物ショー

 秩父の織物文化は数件の小さい企業が守っているだけになってしまいました。秩父は観光地ということもあるので、「来ていただいて感じてもらう仕掛けが欲しいな」と思い、他業種とのコラボができないかと商工会議所とも話をしていた横川さん。そんな中で立ち上がった繊維産業プロジェクトへ参加することなりました。
 そのなかで、産地として普段から着物を着て出かける日があったら良いという意見から、初めての試みとして「秩父織物フェスティバル」として、新旧秩父銘仙の展示・現在作られている織物製品・繊維製品の展示などを始め、様々なイベントを開催しました。横川さんはファッションショーなどの構成や、展示品の演出など、中身を作ることを担当。
 「どう見せていくかというところは、見る方にとってはどう感じて頂くかということ。自分としても古い銘仙や織物を見ることによって、その奥深い世界を新しく感じることも多かったですし、イベントへお出かけいただいた方にも感じていただけていたら嬉しいです。秩父では織物文化が現在進行形で動いているということを少しだけ見せることができたかなと思っています」

 今回、たまたま秩父へたどり着いた横川さん。日本各地にはこうした隠れてしまった文化が眠っているのかもしれない。
 「私自身、旅行が好きで、行った土地では必ず街歩きをして生活感を味わってきます。歩いているとよく道を聞かれますので、馴染んでいると思います。そこで出会ったその土地の人と話しをすることもよくあります。ガイドブックなども見ずに勘だけでご飯を食べに入ったり、地元の人のおすすめのお店を教えてもらったり。その土地それぞれの時間の流れ方があって、その時間を感じることが旅行の醍醐味ではないかと思っています。
 そこで生まれたものは、それぞれがその土地に根付いて大切に育てられたもの。ほかの地方に似たようなものがあるということもあると思うのですが、それぞれの地域性というか、そういったところまで考えると、同じものということはないと思います。そういったものを自分自身が感じたいし、たくさんの人に感じてもらうことのお手伝いができたら嬉しいですね」

 雑誌などに取り上げられて話題性を作るという売り方がありますが、一時的なブームを作るだけで「本当のところ」までは伝わり切らないのではないかと思っている横川さん。「多くの人に思い出してもらうという感じでしょうか。地方の物を売っていくということは、そんな感じが合っているような気がします」
 人それぞれの「価値観」があって、それが共有できた時に物を買って、その土地の人とのコミュニケーションが生まれるような感じが良い。こんな時代だからこそ「人が動く」ということが大事かな…と。



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