そしてすぐに、以前から興味のあった「LOHAS」という言葉を掲げた講座に自己再起をかけるために参加。そこに待っていたのは、これまで接する事のなかった、多種多様な職業の人たちだった。そして彼らもまた、「LOHAS」という分野に新たな種を見つけようとしていた。
LOHASな工夫が施されたコロラド大学を訪問
研修ではヨーガレッスンも体験。ヨーガには国境がないことを実感 「知らないことだらけの講義でしたが、その全てが新鮮で、大変刺激を受けました。と同時に、LOHASという分野は幅広く、かつ、その1つ1つがとても奥が深いため、もっと勉強が必要であるという現実にもぶつかったのです。」
講座終了後、自分なりにLOHAS関連の参考文献を読みあさり、同時にエコ検定の試験勉強もスタート。「でも、やはり“自分の目”で見なくては、何だかどれも納得が行かない感じがしたんです。」
LOHASアカデミー受講前の当初、ボールダー研修への参加は、今だ腫瘍を抱える身として各種の症状が生じる事が懸念され、難しいと思っていた。しかし、7月に研修ツアーが開催されるとの連絡がきた時は、「もう行かなきゃ始まらない!」という思いが大きく上回った。それに、それ以前の3月、インドへのヨーガヤトラ(巡礼)のかなり濃密な旅を敢行できていたことが自信となっていた。
「実際にボールダーへ行けた事は、少し大げさかもしれないけれど、私の中での“一生の宝”だと思います。」机上では知りうることのできない数々のLOHASの「現場」をナマで見られたことで、これまで疑問符だらけであった多くの事柄も「ストン」と腑に落ちた。また、ボールダーの街全体、そして研修の合い間をぬって訪れたロッキー山脈は、自然と共存することの意味を教えてくれ、改めて環境問題やライフスタイルを見直すきっかけとなった。
しかし、ボールダーより帰国してきてからが、実は苦悩の日々だったという。「実際に、LOHASに関する事柄を書いて伝えていくことが私の役割なのかな…と。日本においても地道ながら様々な活動をしている人たちが結構いらっしゃいます。だったら、自分も取材する側ではなく、実際に動いている『そちら側』の人間になりたい、という思いがふつふつと湧いてきたんです。」
ハンドマッサージをボランティアで。「気持ちよかった」という言葉に心から嬉しさを
少しでも血流をよくしたいと思って始めたヨーガは今では生活の一部。カルチャースクールやスポーツクラブではヨーガレッスンを担当 自身が病気を抱えているだけに特に興味のある『心と身体』に対する仕事を掘り下げて行こうと決めた。そのキーワードが『ホリスティック医学』だ。人には心と身体の両方の存在がある。だから、その人に起きた症状をその箇所だけの問題として捉えるのではなく、コンサルテーションを通して、個々のライフスタイルや生活環境、精神的状況など、すべてを理解し、その人の主訴の原因を探る、というもの。オーダーメイドな療法だ。
「さすがにこの身体と頭脳(笑い)では、お医者様になることは無理なので、それに近い、LOHASの1つの分野でもある代替医療に目をつけました。中でもスウェディッシュマッサージは、柔らかいタッチングによって全身の血液やリンパの流れを良くし、老廃物排出効果が期待できます。同時にアロマの香りで心が落ち着いたり、元気になれたりする効果があることを以前から肌で感じていたので、その道に進もうとしました。」
それまでも、ヨーガインストラクターとして身体には向き合ってきたけれど、更に解剖生理学の知識を深めるため、スウェディッシュマッサージの資格を取った今でも日々の勉強は欠かせない。既に、仕事や家事・育児などでストレスを感じている近しい人たちへ、アロマトリートメントを開始。今後は、念願だった医療の現場での活動も決まっており、着々と吉野さんなりのLOHAS道を歩み出している。
「自分が一番喜びを感じる時。それは、人と接し、かつ、その人が笑顔になってくれる時です。ひとりでも多くの人に心と身体を健やかに保てるようなお手伝いをしていきたいと思っています。」かつて、自分がストレスで身も心もボロボロになってしまった経験から、同じような病気を発症しかねない人たちを未然に防ぎたい。また、ストレスがたまりがちな入院生活を緩和させられるようなコトもしていきたい、とも言う。
ライターとしては、女性ファッションサイトから毎週コラムを発信している。「どちらかというとLOHASとは縁のないサイトかもしれません。でも、ファッションに興味のある女性たちも、日々、色々な悩みを抱えて過ごしていると思うんです。だから、ちょっとした言葉で、ほっとしたり、元気になったりしてくれれば、それがイコール、持続可能なライフスタイルを送れる事につながるのではないかと思って執筆を続けています。」いずれ機会があれば、ヨーガやアロマ関係の執筆やディレクション、コラボレート企画活動なども…という夢もあるそうだ。さらに輪を広げていくため、吉野さんはこれからも、好きな言葉である「制約の中にこそヒントがある」をモットーに、焦らず慌てずあきらめず、力の続く限り信じた道を歩み続けていくのだろう。