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Vol.3 マザーハウス 山口絵理子さん
ジュートバックに賭ける夢 Part 2 ダッカより寄稿

  • 2006年2月16日

Vol.3 ジュートバックに賭ける夢 Part 2
ダッカより寄稿

Mother House 代表 山口絵理子

生産

 翌日から生産がはじまった。日本で聞いたお客様の要望、声を全て工場のみんなに伝えた。
 まず前回生産した4種類のバッグの売れ行き、お客様の年齢層、アンケート調査の結果、追加・改善しなければならない点、全てを拙いベンガル語でみんなに説明した。輪になってみんなは真剣に一つ一つ頷きながら聞いてくれた。


新商品 ビジネスバッグ 18,500円

 前回同様サンプル作成から、試行錯誤が重ねられる。しかし前回と違う点は品質、デザインにおいて確実に進化している点だ。
 サンプル作成中にある国のバイヤーが工場を訪れた。
 私なんかと比較にならないほどの大量の注文をしている会社であるが、注文しているものを見ると全くお構いなしの品質管理だった。そして常に「可能な限り安く」と繰り返し工場のみんなにいっている。
 工場で働く一人が私にコソコソ言った。
 「どうしてこんな安さだけのこんなものを作らなきゃいけないんだ。」
 彼は冗談半分に言ったみたいだったが、私にとっては衝撃的な一言だった。

 みんなでいつもきれいに掃除をする工場内で煙草を吸いながら歩く彼らにどうしても我慢できなかった。
 「すみません。ここはみんなの工場なんです。あなた達の煙草はせっかくきれいにした工場に灰を落とすし、煙が製品に付着するし、何よりみんなが快適に仕事ができません。申し訳ないけれど工場の外で煙草を吸って下さい。」
 2mくらいあると思われる彼らを相手にこんなことを言うのは正直すごく怖かったが、みんながいいものを作るにはいい環境が大事だと思ったし、また私の言うことは間違っていないと思った。
 彼らは「さすが日本人だな。ハハ。」と言って無視して煙草を吸い続けたが、工場のみんなが必死に(うん、うん!)と頷くジェスチャーをした。
 遠くへ行く彼らを見て、なんだか鬼退治をしたような気持ちになって工場のみんなと大笑いしてしまった。

 私達は一日一日、目には見えないけれど確かな絆を築いている。
 途上国から先進国へ最高の商品を届ける、この活動を通じて私が実現したい格差のない社会というのは工場のみんなには言葉では伝えにくい。けれど多くを語らずとも私の心は工場のみんなに確実に伝わっているように感じる。

新商品 ハンドバッグ 12,000円

トートバッグVol.2 14,000円

思うこと

 マザーハウスの立ち上げ準備をしていた時、ビジネスって本当に難しそうで奥が深いものだと漠然と思っていました。でも実際に会社を立ち上げ、一から自分の手でやってみると本質的に大切なことというのは僅かしかないように感じます。
 それはいいモノを作ることだと私は思っています。
 「いい」、その意味は私の中で常に変わりません。
 お客様にとってのGood、工場のみんなにとってのGood、そして社会にとってのGood、そんなGoods=商品をマザーハウスは作り続けたいと思っています。

 今回ダッカで行っている生産も予想通り?計画通りには全くいっていません。でも、前と違うのはみんなの技術が目に見えるほど進歩していること、そして私と工場のみんなの信頼関係、最後に私自身が1月に生産した時よりもずっと強い覚悟と信念、そして大きな可能性を感じて40度近いダッカの工場で毎日奮闘しているということです。

 最後になってしまいましたが、辛い時、苦しい時、いつも温かい声援を下さる皆様、家族、そして何よりお買い上げ頂いたお客様、本当にありがとうございました。

Mother House 代表 山口絵理子

Profile

小学校時代、いじめられて登校拒否。中学校時代、小学校時代の反発で非行に走る。大宮工業高等学校:全日本女子柔道ジュニアオリンピックカップ-48kg以下級7位。慶應義塾大学総合政策学部:卒業制作SFCアワード受賞。バングラデシュBRAC大学院開発学部:初めての日本人生徒、2年間首席。
2006年3月 株式会社マザーハウス設立 代表取締役
http://www.mother-house.jp

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