自由人 / 堀之内 健さん
Profile
1982年、奈良県生まれ。広島大学卒業後、2006年に日本アイ・ビー・エムに入社。エンジニアとして、主に銀行の基幹システムの構築に携わる。幾つかのプロジェクトを経て、リーダーとしてお客様との簡単な渉外や要員管理を任される。また、アメフト部に所属し、平日は仕事、休日はアメフトに従事した。ここで社会人としての訓練を受ける。
高校卒業後に行った大阪〜白浜のヒッチハイクの旅で人との交流や体験することの大切さを学び、大学の卒業旅行で行った、タイ・カンボジアの旅で「自分の目で見て考える」ことの重要さを実感。社会人になって暫くは海外へ出かけることもできなかったが、入社5年目にして会社を半年間休職し、2010年7月より世界一周の旅へ出た。そこで世界は日々変わり、一人ひとりが違い、毎日起きる様々な難問をどう解決するかは自分へのチャレンジと考え、半年間で 30カ国に足を踏み入れる。この旅から帰国後の 2011 年 2 月末、日本アイ・ビー・エムを退職。転職活動中に 3.11 の東日本大震災が起こり、衝動に突き動かされるまま、東北支援活動を開始した。今は主に宮城県亘理郡亘理町の泥出しボランティア活動に従事し、「人のためにボランティアをしているのではなく、自分のためにボランティアしている」ことに気付く。「人生楽しんでなんぼ」をテーマに日々驀進中。
急速に進む社会のグローバル化の中、国際人創造に向けた先進的な教育に取り組む大学や高校がある一方で、海外に出たがらない若者の増加が指摘されています。「若者の内向き志向」そんな風潮とは裏腹に、半年をかけて30ヵ国を巡る旅をした堀之内健さん。
また、就職超氷河期とされるなかで、就職希望が大企業に集中しているという。しかし、堀之内さんは一流企業を退職し、現在は東日本大震災の災害ボランティア活動をずっと続けているという。若者が見て感じた世界観を探ってみた。
「日本の若者があまり海外へ出なくなっている」と言われていますが、なぜ世界一周しようと思ったのですか?
マカオタワー(233m) からのバンジージャンプ
毎日せかせか働いていたとき、自分はこうやって働き続けなければ生きていかれないのではないかという錯覚に陥りました。口では「世界一周がしたい」などいろいろと言っていましたが、ずっと行動に移せずにいました。でもそんな時、高橋歩さんの本に出逢いました。そして、ある日思い立って世界一周の旅に出たのです。
世界には国の数だけ文化があり、その中で生きている人たちの生き方も人の数だけあるのだと思いました。様々な出来事がありましたが、事あるごとに「私は何をしてもいいのだ」「会社に行くことが全てではないのだ」「私は自由だ」と思いました。
日本で暮らしていると、他人と一緒であることが受け入れられがちで、なかなか自分の本心を語らなかったり、自分の意見を言わないことがよしとされているところがあると思います。でも、それではなかなか他の国の人と仲良くなるのは難しいと思います。自分の意見を求められるためです。彼らにとって、人は他人と違って当たり前で、その違いを認め合うのです。特に欧米人にそれが顕著に見られます。何の話をしていても、「お前はどう思う?」と、意見を求められます。英語で自分の考えを話すのには少し手間取りましたが、この環境は私にとって非常に過ごしやすかったです。
日本での常識的な価値観と世界を歩いてみての価値観のギャップはどんな所に感じましたか?
「日本を離れて初めて日本の良いところがわかった」とよく言われますが・・・
子どもの笑顔は万国共通(インド、バラナシにて)
世界一周中、貧しい国、豊かな国、どこの国を歩いていても感じていました。日本に比べて笑顔の人や幸せそうな人が多いなと。街中で、田舎の村で、空港で。恐らく、日本人より日々を楽しんでいる人が多いからではないかと思います。私が思う日本人が他のどの国よりも勝っている国民性は、他人のことを気遣えるというところです。私が行ったことのあるどの国よりも数段に優れていると思います。しかし、それと同時に、それが強すぎて自己犠牲の気持ちが甚だしく、自分を大切にしない人が多いように思います。他人のために会社のためにと…。
日本は世界基準から考えて経済的には裕福ですが、自殺者は年間3万人を超えており、決して幸せな国とは言えないと思います。笑顔の人が多いかどうか、幸せかどうかはやはり貧富とは関係なく気持ちの持ちようが大きく関係あるのだと思いました。
通りすがりの陽気なインド人
(インド、コルカタにて)
特に欧米人は、自分の国のことを愛していて、自分の国のことをよく知っている人が多いと思います。他国のそれについても興味があるらしく、彼らは私にも歴史や宗教などのことを質問してきました。「なんで、日本は第二次世界大戦のとき降伏したのか?」「日本の宗教は?君の宗教は?」などなど。にわかに応えられない自分にうろたえた経験があります。
そして、私は海外に行って初めて、今まで日本の常識で生きていたことに気付かされました。日本の常識はあくまで日本でしか通じない。旅中は思い通りに物事が運ぶことはほとんどありませんでした。最初は、思い通りにならないことに苛立っていましたが、あまりにもそういう事が多すぎて、気が付きました。「苛々していても楽しくない。それならこの思い通りにならなさ具合を楽しもう」と。それからは、「思い通りにならなくて当たり前。どう解決するかは自分へのチャレンジ」と考えるようになりました。
すると、旅がより一層楽しくなりました。実際、エクアドルのグアヤキルで飛行機から降りて預けていた荷物を受け取る際、ザックの肩紐が切れ掛かっていることを発見した時も、それまでであれば自分のザックが壊れかかったことで落ち込んだりしていただろうけど、そのことすら楽しむことができました。その後、ザックは航空会社にちゃんと修理してもらいました。