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第15回 建築家・千葉大学教授 / 栗生 明さん
「環境健康都市」づくりを提唱する建築家

  • 2008年8月1日
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建築家・千葉大学教授 / 栗生 明さん

Profile
1947年千葉県生まれ 1971年早稲田大学理工学部建築科卒業 1972年早稲田大学大学院建築計画専攻終了 1973年株式会社槇総合計画事務所入所 1979年東京大学工学部助手(建築学科)
1983年株式会社都市建築設計事務所Kアトリエ、代表取締役就任 1987年株式会社栗生総合計画事務所に改名 主宰
1992年〜千葉大学 現在:千葉大学大学院工学研究科 建築学コース 教授
代表作品:1994年植村直己冒険館 2000年平等院宝物館 鳳翔館 2003年国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 2004年浜名湖花博 水の広場,花の街並み・雁木,国際花の交流館 2005年「愛・地球博」バイオラング など多数
主な受賞歴:1996年「植村直己冒険館」で日本建築学会賞2003年「平等院宝物館 鳳翔館」で日本芸術院賞 2006年「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」で村野藤吾賞 など多数

 

スター建築家の建築というと余りにも作品化されて、ともすると使い手である人間の視点が欠落しがちであるが、栗生明さんのつくる建築は、構築的な美しさを十二分に備えながら、絶えず有機的な人間視点が込められている。彼の提唱する「環境健康都市」づくりはその延長線上の結実であり、まさに21世紀に求められる居住環境といえるであろう。

医者志望から建築家へ

なぜ建築家になろうと思われたのでしょうか?

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平等院宝物館の緑
 小学生の頃なりたい職業は、医者になりたかったです。野口英世の伝記に影響を受け、医者は社会にとって非常に役立つ職業だと思い、医者になって病院をつくり社会に貢献しようと思いました。学校から帰って大半は外で遊ぶ毎日でしたが、家にいるときには自分の病院がどんなものが良いか絵を描いていました。自分がいる医院長室の部屋があって、手術室があって、病室が並んでいて、看護師さんがいて、という絵です。
 ところが絵を描いているうちにだんだん絵(図面)を描くことが面白くなってきました。小さい頃には誰でも自分で自分の小屋をつくるなんてことをしますよね。段ボールで小屋をつくったり、縁の下を掘って叱られたり。そういう体験と病院のスケッチを描いていることがリンクしてこういうのも面白いな、こんなことが仕事になるといいなと漠然と思っていました。
 その後、高校の最初の頃に、将来どういう職業が向いているのかという適正検査が雑誌に載っていたのでそれをチェックしていったら、ひとつは化学者、もうひとつが建築家でした。建築というのはいいなと思った小さい頃のことを思い出して、大学の受験勉強よりも建築雑誌を見ていましたね。やはりなによりも自分で空間をつくりたいという気持ちが非常に強かったです。そして今に至りました。


豊かな環境づくりとしての建築

環境からみた栗生さんの建築作品についてお話を伺いたいのですが…

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平等院宝物館入口
 僕の建築作品を見てみると、特に意識していた訳ではないですが、地下建築が非常に多いです。それらの作品は地下にした理由は違いますが、例えば「平等院宝物館」は国宝の鳳凰堂を見た時に邪魔にならないように建築の大半を地下に埋めました。
 また、当時最高の建築・美術の技術を使ったとも思われる鳳凰堂と現代の新しい技術や建築デザインを対峙させ、現代の極楽浄土まではいかなくても快適な空間をつくるということがテーマでした。
 鳳凰堂を正面に見て左側の小高い丘が平等院宝物館ですが、右側には商業地域に高層のマンションができて大問題になっています。鳳凰堂を写真に撮ると背景にマンションが見えてしまう。特に外国人の人々は、世界遺産なのにその景観ができてしまう状況に疑問を抱く人が多いといわれています。そういうひどい景観行政が日本にはあるわけです。平等院は歴史的景観を守り、範を示すという意味からもこういう形にしています。


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写真上:バイオラング。下:バイオラング壁面緑化
 また、愛・地球博 「バイオラング」では会場のステージの機能をもつ施設ですが、ただ単に施設をつくるのではなく世界最大級の壁面緑化をもつ施設を計画しました。バイオラングとはバイオ(生物生命の)とラング(肺)を合わせた造語ですが、都市や街の中にあることによってまさにその地域の緑の肺として、また、空気の循環、環境負荷の低減、環境の改善など、メッセージとそれを実現する技術を具現化した施設です。また、自然と人間、建物、都市などが対立するのではなく、日本古来からある里山のように自然と人間、建物、街が融合した場が、近代的な都市においても可能なのではないかと提言しています。壁面のデザインは、「里・庭」「野辺」「里山・奥山」のイメージで構成され、中央部のタワーの上は「鎮守の森」を表現し、その場にふさわしい植物が植えられています。また、りんごやいちごなど実のなる植物も植えられています。

 話は変わりますが、私のプロジェクトには様々な専門家に協力してもらっています。ランドスケープデザイナーをはじめ照明デザイナー、家具デザイナーなどさまざまな人とコラボレーションをして仕事進めています。いろいろな個性がいろいろな風に混じり合って、ハーモニーが生まれると、違った感性が入るほうが、建築が豊かになるだろうと思っています。環境も様々なものが多様に関わり合うことによって豊かになるのではと思います。

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