何度トイレに行っても残尿感がある場合、病気の恐れがあります。考えられる原因や残尿感への対策を、薬剤師の山形ゆかりさんに聞きました。
残尿感は、実際に尿が残っているときに感じることもあれば、膀胱内に尿がないのに感じることもあります。
一因としては、血流の悪さがあります。血流が悪くなることで膀胱の伸縮性が失われ、少量の尿でも尿意を感じてしまうのです。
そうしたことが原因で常にトイレのことが気になってしまい、ストレスによって残尿感を感じる人もいます。
その他、細菌に感染したことによる知覚異常、自律神経の乱れが原因で残尿感を感じることもあります。
女性は膀胱炎や尿道炎といった尿路感染症にかかる人が多いといわれています。
膀胱炎になると、細菌によって膀胱が知覚異常を引き起こし、残尿感を感じることが多いです。
残尿感の他にも、排尿痛や頻尿、下腹部痛、血尿といった症状があらわれることもあります。
女性の場合、更年期障害によって残尿感を感じることもあります。
更年期に入ると女性ホルモンが減少し、ほてりやのぼせ、気分の落ち込みなどの症状があらわれる人が多いでしょう。
残尿感や尿が出にくいといった排尿症状もその一つです。
更年期障害によって排尿症状があらわれる原因は、女性ホルモンの減少による自律神経の乱れであるともいわれていますが、明確な理由はわかっていません。
頻繁に残尿感がある場合、以下のような対策をしましょう。
残尿感は細菌が原因になることも多いので、下着を清潔に保ちましょう。
おりものシートを使ったり、おりものシートや生理用ナプキンを頻繁に変えたりすることが大切です。尿漏れが気になる場合は尿漏れパッドや尿漏れパンツの利用も効果的です。
そうしたものを利用することでストレスが減り、残尿感を感じなくなることもあります。
残尿感があると、トイレの頻度を気にして水分を控えてしまう人もいるでしょう。しかし、細菌感染が原因で膀胱炎になり、残尿感がある場合は逆効果。
とくに、残尿感の割に排尿量が少ない場合、膀胱炎の可能性があると考えられます。水分を摂り尿を排泄して、膀胱内に細菌を発生させないようにしましょう。
残尿感は生活習慣病が原因となっている場合があります。
たとえば、糖尿病による血流障害によって膀胱の容量が減り、残尿感を感じることがあります。その他にも、睡眠不足やストレス、運動不足によって自律神経が乱れたことが原因で残尿感を感じることもあるでしょう。
このような原因の場合、生活習慣を改善すれば残尿感も解消する可能性があります。
上記の対策を行っても症状が改善しない場合、泌尿器科を受診しましょう。
残尿感を放置すると普段の生活に支障が出る恐れがあります。また、細菌感染による残尿感の場合、細菌が尿道を通って腎臓に入り、腎盂腎炎を引き起こす恐れもありますので、ご注意ください。
残尿感を解消するためには、漢方薬の服用もおすすめです。
泌尿器科などで排尿トラブルに対して、自然由来の治療薬として漢方薬が処方されることもあります。
残尿感が気になる人は、「ホルモンバランスを整える」「膀胱の炎症を鎮める」「自律神経を整えて膀胱の緊張を和らげる」「水分の代謝を改善する」といった働きのある漢方薬でアプローチしましょう。
残尿感が気になる人におすすめの漢方薬はこちらの3つです。
・清心蓮子飲(せいしんれんしいん):水分代謝を調整し、余分な水分を排出して尿路の機能を正常化します。精神的な疲労によって生じる残尿感や排尿痛もある人に向いています。
・猪苓湯(ちょれいとう):排尿を促して菌を排出させ、膀胱の粘膜を保護します。頻尿、残尿感などの排尿トラブルに悩んでいる人によく用いられます。
・八味地黄丸(はちみじおうがん):加齢に伴い衰えた泌尿器系の働きを高める漢方薬です。排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、軽い尿漏れに用いられます。
このような漢方薬の服用によって、残尿感だけではなく尿漏れや排尿痛といった症状の緩和が期待できます。
監修・文/薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター 山形ゆかり