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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.13 電力小売全面自由化~自然エネルギーの電力会社を選ぼう!

  • 2016年8月4日
  • green earth

 2016年4月からいよいよ始まった電力小売全面自由化。市場規模8兆円のうち、約7.5兆円は一般家庭です。これまではすべて大手の電力会社に支払われていたこのお金を、再生可能エネルギーを重視する電力会社にどれだけ振りかえられるか。安さだけで選ぶのではなく、環境に配慮した電気、再生可能エネルギーの電気を使いたいという人がたくさんいます。今こそ、市民・消費者が力を発揮するときです。

 2016年がスタートしてから、新電力会社の料金メニューが次々と発表され、メディアでも様々な形で報道されています。ただ、やはり「安さ」に注目するものが殆どです。私たちは本当に再生可能エネルギーの電気を選べるのでしょうか?

図1:全面自由化による市場規模
図1:全面自由化による市場規模

電力自由化で石炭・原発推進が加速!?

 そもそも日本のエネルギー政策は、2014年のエネルギー基本計画、2015年の長期エネルギー需給見通しで示されているように、原発・石炭火力を重視するものです(2030年に原発20~22%、石炭火力26%)。省エネルギー、再生可能エネルギーは不十分です。

図2:長期エネルギー需給見通し(2015年7月策定)
図2:長期エネルギー需給見通し(2015年7月策定)

 2015年12月のCOP21パリ会議では、すでに多くの被害をもたらしている気候変動を止めるために、気温上昇を2℃未満/1.5℃未満におさえていく必要性が世界で合意されました。このために温室効果ガスの排出も実質ゼロにしていくこと、また各国がすでに提出している削減目標を5年ごとに見直して強化していくことも書きこまれました。この方向に対しても、現在の日本のエネルギー政策はまったく不十分です。
 他方、電力自由化による価格競争を見すえて、「価格が安い」とされている石炭火力発電所の新規建設計画がここ5年で非常に増えています。気候ネットワークの運営するサイト「石炭火力発電所ウォッチ」によれば、現在47基、2250万キロワット(原発20基分以上!)の計画があり、仮にこれらがすべて建設されれば、「2030年に石炭26%」とされている量さえも超えてしまいます。
 石炭火力は特にCO2排出係数の高い電源です。高効率のものでも0.7 kg-CO2/kWhで、高効率天然ガス発電(0.37kg-CO2/kWh)の約2倍です。電力業界は、2030年度にCO2の排出係数を0.37kg-CO2/kWhに抑えるという「自主目標」を持っているものの、石炭火力発電所の新増設をする一方で「非化石電源」やクレジット 購入(*1)で相殺しようとしています。「非化石電源」とは再生可能エネルギーと原発のことです。(*2)つまり、電力業界全体として、原発の再稼働を後押しする流れが見えてきています。

*1 J-クレジット制度では、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取組による、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証し、取引ができる。
*2 「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」(2010年制定、2016年改定)にて規定。

図3:火力発電の電源別二酸化炭素排出係数(経済産業省資料より)
図3:火力発電の電源別二酸化炭素排出係数(経済産業省資料より)

 つまり、小売全面自由化で「安さ」ばかりを追求すると、私たち自身が原発再稼働や石炭火力発電を後押しすることにつながってしまうのです。自由化によって本来経営的に不利になるはずの原発も、非化石電源として活用することを目的とした「事業環境整備」という形で国が関与を強め、維持していく方向に動いています 。(*3)
 これらは省エネ・再エネに向かう世界の流れに逆行するばかりか、すでに無視できない気候変動被害があらわれている現状からみても許されるものではありません。だからこそ、持続可能な社会をつくるビジョンを持って再生可能エネルギーを重視する電力会社を後押ししていく必要があります。現在、その方向を目指す電力会社が、全国各地にあらわれてきています。

*3 再処理事業を継続していくための体制づくりが総合資源エネルギー調査会電力・ガス事業分科会の原子力小委員会にて議論され、新たな拠出金制度と新法人の設立を含む法律案を閣議決定(2016年2月)、2016年通常国会にて審議予定。

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