Vol.12 [特集COP21] Climate Justice Now! パリ合意で気候と人々の生活は守られるのか？

気候変動による被害の現状～フィリピン

　FoE Japanは、2013年11月にフィリピンを襲ったスーパー台風ハイアンに注目し、現地の人々がどのように台風被害を克服したのか、もしくはしていないのか、今どのような支援が必要とされているのかを調べるため、ハイアンによる被害が最も大きかったレイテ島タクロバン市周辺の村で聞き取り調査を行いました。

台風ハイアンによって壊れたまま放置されている教会。台風の後、避難所にもなっていた。（Manaybanay村）

　台風による被害は、特に住宅と生計手段にあらわれていました。台風による住宅被害はフィリピン全体で半壊約60万戸、全壊50万戸。（＊1） 政府は公営住宅の建設を急いでいますが、一番被害の大きかったタクロバン市では、建設予定の1万3千戸の公営住宅のうち、2015年9月時点で300戸未満しか完成していません。（＊2）

台風で自宅を失った人達の為に公営住宅が建設されている

　強風の影響によるココヤシへの被害が大きく、収入が大幅に低下してしまったため、代替の生計手段や副業を始めることを余儀なくされた農民も多く見受けられました。政府による生計手段回復への支援はままならず、住宅再建も進んでいないため、いまだに救援物資として配給されたブルーシートを壁にした住宅に住む人もいます。

　課題の一つは、支援のニーズがしっかりと把握されていないことや、支援内容とニーズが必ずしもマッチしていないということにあるようです。例えば、緊急住宅支援として政府は家屋が全壊した家庭に3万ペソ、半壊に1万ペソを支給していますが、支給時期が遅れたこともあって、必ずしも住宅再建に利用されず、住民らが食糧や生計手段回復のために使用したケースが多く見受けられました。また、タクロバン市沿岸で高潮対策の堤防建設計画が進められる一方、現地住民・NGOからは、インフラよりもまず被災者の生活回復支援を求める声があがっています。公正な支援の配分などを政府に求める住民・NGOに対し、政府や軍による嫌がらせなどの人権侵害も発生しています。

　フィリピンでは2013年11月のスーパー台風に限らず、毎年巨大台風に襲われるため、回復する間もなく更なる被害に見舞われている状態です。海水温の上昇により、台風の威力は増しています。気候変動による被害はすでに深刻です。

市民の力こそ世界を変える！

　FoEの各国メンバーはこれまで、気候変動の損失と被害を特に受けやすい途上国への支援などを訴えてきました。まだまだ課題ばかりですが、少なくとも「損失と被害」が最終的に合意文書に盛り込まれたのは市民社会の力と努力の成果と言えます。

　また、COP21開催中のパリの街は、テロの影響で非常事態宣言が出されていましたが、2000人を越えるFoEメンバーとサポーターが集まり、国際交渉が行われている会議場内や市内で多くのクリエイティブなアクションを行いました。さらに、世界中の都市でパリ会議での実効性のある合意を求めて市民がデモ行進を行いました。日本でも東京と京都でアースパレードが行われ、東京のパレードには約1000人が集まりました。
　FoE Japanも運営メンバーとしてアースパレードに関わり、太陽光で充電したバッテリーで化石燃料恐竜のバルーンを膨らまし、パレードを盛り上げました。

（小野寺ゆうり、深草亜悠美）

アースパレード東京では、化石燃料恐竜も一緒にパレードしました　(c)Hiroshi Okamoto

（『Green Earth』vol.57 Winter 2016より抜粋）