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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第84回 アムールトラの生息するロシア沿海地方ビキン川流域のために

  • 2011年1月13日

特集/世界のトラを守る アムールトラの生息するロシア沿海地方ビキン川流域のために 国際環境NGO FoE Japan タイガの森フォーラム運営委員 野口 栄一郎

 世界のトラ6亜種(ベンガル、アムール、アモイ、インドシナ、マレー、スマトラ)の中で最も北にすみ、最も大きいトラがアムールトラです(写真)。現在500頭前後といわれる野生のアムールトラの大部分が日本海と中国の間に広がるロシア極東の地方から沿海地方とハバロフスク地方に生息しています(沿海地方の紋章には咆哮するアムールトラが、ハバロフスク地方の紋章には向かい合ったツキノワグマとアムールトラが描かれています)。トラがこれらの地方で暮らせるのは、彼らの獲物の豊富なウスリータイガとよばれる森が残っているからです。

旧ソ連〜ロシアにおけるトラの保護

世界のトラ6亜種の中で最大のアムールトラ
世界のトラ6亜種の中で最大のアムールトラ
 ロシア語ではアムールトラを「アムールスキー・ティーグル」といいます。アムール川の流れる地方のトラという意味です。ソ連時代の1948年にはトラの殺傷や許可のない捕獲を罰する法律ができ、今日に至るまで保護獣となっています(ロシア政府の作成する絶滅危惧種リストにもアムールトラは記載されています)。またソ連の政府は20世紀初頭から原則的に人間の立ち入りを禁止する厳正自然保護区を創設し、これがアムールトラのすむウスリータイガの一部を保全する働きをしました。

 一方で20世紀半ばからは、対日輸出用木材を調達するためのタイガの開発が拡大し、収奪的な伐採も進みました。とくにウスリータイガを代表する朝鮮五葉松は多くの生き物たちの食糧になる実をつけるマツですが、日本で紅松とよばれて木材に良い値がついたため伐採が激化し、20世紀後半の50年間で50%減少して1990年には政府がこのマツの伐採を禁止する措置を取っています。
 ソ連の崩壊した1990年代にはアムールトラの骨や毛皮を目的とした密猟が横行するようになり、1995年頃にはアムールトラは250頭前後にまで減少したといわれました。そこで外国政府の支援を受けたロシア政府がレンジャー活動や密猟の取り締まりに力を入れ、近年では500頭前後での推移となっています。


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