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「衣食住から考えるSDGsアクション〜大人と子どもが作る未来〜」第33回 エコ×エネカフェ(前編)

  • 2020年3月6日
  • 緑のgoo編集部

本当に必要な教育とは何か

僕がこういった考えに至った経験は、SDGsができた2015年より前、2012年に遡ります。

JICA(国際協力機構)の短期の任務でブータンに行った時のことです。当時僕は、都立の進学校で教員をしていました。
生徒たちは勉強にも学校行事にもすごく一生懸命なのですが、授業の時間になるとぐったりしたり居眠りする生徒もいて、僕たち教員は「生徒たちを授業で寝させない」といういことが目標になってました。

ところがブータンの子どもたちは全然違う。ギラギラ目を輝かせて授業を受けてるんです。そんなに面白い授業でもないのにどうしてだろうと100人以上の子どもたちに聞いたら、「国を豊かにするため」「海外の教育を受けて教育関係で自国に貢献したい」ってみんなが答えるんです。

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日本の子どもたちにこの質問をすると、多くの生徒はなりたい職業を答えます。でも「何のために勉強するのか」を答える人は少ない。ここからすべてが変わりました。何故学ぶのか、その意味を語れる子になっていないと意味がない。大学受験のためではく、誰かの幸せのため、社会課題の解決のために学ぶと語れる子を育む必要があるのではないか。そんな風に考えるようになったんです。

それでは、これからの子どもたちは、本当に必要なことを学校で学んでいるんでしょうか。

アメリカのThe Future of Work2019という動画を見てください。AIを駆使した現在進行形の仕事やサービスが紹介されています。無人ドライブ、ドローン宅配、AI手術…。残念ながら、日本では、これらのテクノロジーは世界からは出遅れています。この予測不可能時代に、今のような講義式の授業の学校ばかりでいいのか?時代の流れはすごい速さで変わっていて、そういうことを意識していくことが必要なんですね。だからこそ今、時流を読み解いて、予想不可能時代を生き抜く力を育むために、プロジェクトをベースにした教育を実施する日本で初めてとなる学校を新渡戸文化学園でつくろうとしています。

カリフォルニア州にはHigh Tech Highという学校があります。これを世界に広げようとしている創設者のテッドさんとディスカッションして教えてもらったのは、知識を完璧に覚えて、単純作業ずっと続けて、指示にちゃんと従う。そういうことを学校で教えているかもしれないけれど、それはAIに取って代われるんじゃないかってことでした。こういうスキルは工業型大量生産の時代には必要だったかもしれないし日本はこれで成功してきたかもしれない。でも、時代のフェーズが変わってきている今、この方法を続けているのは違うんじゃないかって思ったんです。

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Design for other 90%というイベントがあります。90%というのは、途上国の人たちという意味です。いままでは10%の先進国の人たちがより快適でよりいいものを手にするために製品やサービスがつくられてきました。でも、そういうのはもう頭打ちですよね。じゃあそれを途上国に暮らす世界の90%の人たちのために使おうという考えなんです。この写真にあるのは、浄水できるストローです。途上国では水を運ぶ労働に駆り出されて学校に行けていない子どもたちがたくさんいますが、こういう製品があることでそういう子たちが救われるんですね。

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建築家のドナルド・メイス氏が提唱したDesign for Allというコンセプトがあります。そこで掲げているのは、デザインとは
 ①すべての地球市民のために
 ②これから生まれる命のために
 ③今の地球をバトンしてくれた先代のために
 ④地球生態系に生きる全ての命のために
という捉え方で、for Allはこの4つ全てを満たしているかという定義です。
いま僕がいろいろな企業や団体と連携して進めているプロジェクト60も、この4つの視点を共有して進めているものなんです。

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オーストラリア森林火災でCO2排出がかなりありました。気候変動に対して対策した場合、しない場合の未来予想が国立環境研究所によって作られていますが、こういったシミューレーションの影響も受け、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は気温上昇を+1.5以下にと訴え始めています。2020年1月に開催されたダボス会議では、グローバル企業が考えるリスクのトップ5がすべて気候に関わるものでした。それくらい危機的状況が高まっているんです。

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生態ピラミッドで、人間はどこに位置するでしょうか?
数万年前、人間が原人と言われたり、ホモ・サピエンスと言われた時代は、多分一次か二次消費者で、肉食獣はその上にいました。ところが今は、人間がピラミッドの上にたつ特殊な存在になっています。 そんないろいろな視点を積み重ねてみていくにあたって、 SDGsという、すべてが網羅された視点を持つ目標ができた。それを教育に使っていこうと考えました。

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第33回エコ×エネ・カフェの前編はゲストの山藤さんから「衣食住から考えるSDGsアクション〜大人と子どもが作る未来〜」をテーマに先生が教育改革にSDGsを取り入れるに至った背景について紹介しました。

後編では先生が実際に展開している授業を体験し、全員参加のワークショップ&ワールドカフェで深めた様子をレポートしていきます。どうぞご期待ください。

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