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バッテリーで変わる電気の使い方~再エネ拡大から暮らしの変化まで~
― 第24回エコ×エネ・カフェ(後編)

  • 2017年3月8日
  • 緑のgoo編集部

全体セッション

ワールドカフェ後は、全体セッションで、講師への質問や感想を交わしあいました。

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参加者: 金属資源としてのリチウムは有限だと思うのですが、普及すると値段が下がるというのは本当でしょうか?

矢部さん: リチウム自体はたくさんあるけれど、リチウムはいろいろな化学反応を起こすので、純粋なリチウムを抽出して使おうとするとお金がかかるんですよね。でも、リチウムが不足して安くならない、という事態には当面ならないと思います。

森さん: いわゆる希少金属ではないということですか?

矢部さん: もちろん、鉄やアルミなどに比べれば埋蔵量はずっと少ないです。リチウム以外にも貴重な資源が使われているので、リチウムイオン電池は貴重で、リサイクルされています。そういった金属のリサイクルはこれからもっと盛んになると思います。例えば、電気自動車に搭載されている電池で容量が減ってパワーが落ちたものを大量に集めて、そんなにパワーを出す必要がない離島の電力系統で使用したという事例もあります。電気自動車に何年か乗ったあと、そこからバッテリーを取り出して住宅用に使うことも可能です。

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参加者: 今、リチウムイオン電池が便利ということで普及していますが、それに代わるような次世代型の蓄電池というのはあるのでしょうか?

参加者: それに関連して、「キャパシタ」についても知りたいです。
     ※「キャパシタ」とは - 緑のgoo

矢部さん: 新しい電池として、いろいろな名前が上がっています。例えば空気電池などが研究されていますし、大型ではナトリウム硫黄電池やレドックスフロー電池なども安くなっていくと思います。リチウムイオン電池も発明されたのは割と昔ですが、ある時点で一気に広がってきました。ですから、5~10年経てば今知られていない電池を安価で手にすることができるかもしれないですし、それに期待したいと思います。

電池は電気を化学物質に変換して蓄えるものであるのに対して、キャパシタは電気をそのままプラスとマイナスの状態で貯めることができます。ものすごく早く充電と放電ができるのが特徴です。ただ、広い面積の電極がないと大量には蓄電できません。エネルギーは、一度化学物質に変えるとエネルギー密度がすごく上がりますが、電気のままだと小さくなります。馬力が欲しい、つまりkWが欲しいようなときには、キャパシタを使ってkWを稼ぐという用途が良いと思います。

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参加者: リチウムイオン電池は使っていくうちに容量が減ってきますが、容量を戻すことは可能なのでしょうか。

矢部さん:  電池の中の物質は劣化していくので、蓄電容量を回復させるのはちょっと難しいかなと思います。そういう意味では、現在のようにリユースするのが正しいですね。住宅に置くような蓄電池は、10年、20年と使えることを目標にしています。このように、電池の寿命を重視して作られている電池もあります。

森さん: 「電池のリサイクル」とよく言われますが、リユースに近いという感覚ですね。

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参加者: 再生可能エネルギーがあまり家庭に普及しなかった場合、蓄電池はどのようなシーンで役立つのでしょうか?

矢部さん: 火力や水力、原子力など発電方式にはいろいろありますが、安いけれど、コンスタントに発電し続ける必要があるベース電源と、出力調整が得意な電源があります。たとえば、これまで揚水発電所は、ベース電源をコンスタントに使っていくための調整用の電源として用いられてきました。
しかし、揚水発電所を建設できる場所は少なくなっているので、その代わりに蓄電池を使うということもあります。ただし、太陽光発電は既にすごく増えているので、やはり太陽光と蓄電池を組み合わせて使うのが良いと思います。

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参加者: 高校時代、放送部で使う機材に乾電池を使っていました。乾電池よりも使い回しできるバッテリーを買いたかったけれど、値段が高くて買えませんでした。個人のレベルでは高価なものを手に入れるのが難しいので、トータルなパフォーマンスではそちらがよくても、バッテリーを選ぶことができないケースが多いと思いました。これから蓄電池を普及させるためには、経済性のことも含めて電池の様々な性質を世の中の人たちに知ってもらうという課題があると思いました。

森さん: 値段をどうするかは、矢部さんの重要な研究テーマでもありますよね。

矢部さん: 全体を最適にするには、太陽光や風力発電を蓄電池と組み合わせることによって、CO2の削減をできるだけ安く達成するのが良いと思っています。そのためには電池も安くする必要があるし、必要な電池の量を少なくする工夫も重要な訳ですね。今後も電池の研究開発に税金をある程度投入したり、制度面の工夫で電池の導入を増やし、価格を安くしていくことが必要だと思っています。前半でもお話ししましたが、カリフォルニアでは、州政府が中心になって、太陽光発電と電池の導入を増やしていくことを目指しています。
また、個人ではバッテリーを買えなくても、集団でバッテリーを購入してそれをシェアリングする、電気自動車もシェアリングならば使えるという考えもあります。今の若い人はなかなか自動車を買わないので、レンタルで「ちょい乗り」するときに電気自動車を使う。そうした消費のあり方によって電池の導入が加速され、量産効果で価格が下がっていけばいいなと思います。

森さん: 最近シェアが流行っていますので、「シェアリング・バッテリー」という新しいビジネスモデルを立ち上げるようなこともできるかもしれませんね。

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最後に、ゲスト講師の矢部さんから感想がありました。

矢部さん: 「スマホが普及した影響か、昔に比べて蓄電池が身近に感じられていることがわかりました。そのような中、いろいろな方のご意見を伺い、私の研究を皆さんの身近な出来事と結びつけて考えることができて嬉しくなりました。いろいろな年齢の方、立場の方もいる中で、“値段を安くしたい”、“全体的に社会を良くしていくためにはどうしたらいいか”といった発想で考えるということが体験できました。どうもありがとうございました」

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緑のgooプロデューサー佐藤:「発電や電気の消費から、車と組み合わせると安くなると言ったところまで、いろいろな側面からバッテリーに対する理解が深まったのかなと思います。エコ×エネ・カフェのレポートはJ-POWERや緑のgoo のTwitterなどでも発信しますので、皆さんが感じたこと、気付いたこともぜひシェアしてください」

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エコ×エネ・カフェ主催 J-POWERの藤木さん:「今回は、生活に身近な“バッテリー”について、いろいろ知ることができたと思いますが、いかがでしたか。次回は6月頃に開催できたらと思っています。このところ技術系のテーマを扱ってきましたが、アメリカの大統領が変わったこともあり、エネルギーや環境の政策にも関心がある方も多いのかなと感じています。関心のあるテーマについてもご意見をお寄せいただけたらと思います。どうぞまたお越しください」

エコ×エネ・カフェを終えて

今回、お母さんとともにエコ×エネ・カフェに参加した高校生の大石さんは、小学5年生の時にエコ×エネ・体験ツアーで御母衣ダムを訪れ、小川に小さな水車を入れて“発電”する体験を通じてエネルギーに関心を持つようになったそうです。「日本が将来どのようなエネルギーを使っていくかによって、バッテリーの立ち位置も変わってくると思います。エネルギーの未来についても、いろいろな人から話を聞いてみたくなりました」と語ってくれました。

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今回、エコ×エネ・カフェに初めて参加した大学生の栗田さんは、「工学部で学んでいるので電池については詳しい方かなと思っていましたが、参加者の方にも詳しい方がたくさんいらしてもっともっと勉強したいと思いました。今日の話を聞いて、新しい技術の可能性を感じました」と語ってくれました。

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同じく初参加の大学生、沓掛さんは「電池については、今までは消費者の視点しかありませんでしたが、“蓄電池を広めるために安くすればみんなが買ってくれて売れるようになる、だから安くする”という企業側からの視点があることにも気付きました。大学で環境倫理(環境問題解決の動機付けをいかに行うか)を学びましたが、いろいろなものを広める際にお金が大きなイニシアチブになるという点では共通するものがあると感じました。今まで電池というと”日常生活で役に立つ便利な道具”というイメージでしたが、再生可能エネルギーとの組み合わせなど、大きな単位での使い方についても知れて勉強になりました」と感想を聞かせてくれました。

ゲストからのメッセージ

最後に、ゲストの矢部さんからメッセージがありました。

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「環境に良い電気を選びたいというような声がありましたが、電池があることで選択肢が増えるという観点から関心を持っていただけたことが嬉しかったです。私は電池の経済評価を研究している立場ですが、電池が安く普及したら多くのメリットがあることを発信していきたいです。それによって各メーカーの企業努力が進めば良いなと考えています。電気を貯めることができるというのは、昔から電気技術者にとっての夢の技術でした。これが今後うまく広がっていけばいいなと思っています」

次回のエコ×エネ・カフェは、6月頃に開催予定です。どうぞお楽しみに。

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