豊かな自然を蘇らせた「アファンの森」とは
世界中で自然保護の仕事をしてきたC.W.ニコルが、長野県にある荒れ果てた里山を、多くの生き物が生息できる森へと甦らせた森です。
ニコルはいつも言っていました。
「日本は、北に流氷、南にさんご礁がある世界でも稀な国だ。高い山脈、複雑な海岸線があり、そこに住む生物の多様性は本当に素晴らしい」
しかし、その貴重な自然環境は高度経済成長期以降、経済発展と言う名の開発工事により失われていきました。
▲C.W.ニコル
そのことを憂いたニコルは36年前から長野県の黒姫山麓で、地元の人が「幽霊森」と呼ぶほど荒廃していた里山とその周辺の人工林を私財で購入し、自ら手入れを始めたのです。繁茂した笹藪を狩り、病気の木を間伐。そして、もともとその地に生えていた木を植林していきました。
自然は、人間の汗と愛情に応えてくれます。今では、植物が550種以上、鳥が90種以上、そのうち絶滅危惧種が60種生息する、多様性豊かな森に再生されています。
▲森の手入れをしているニコル
健康的な自然環境は、温暖化などの地球の変化による影響を最小限に抑える能力を持っていると言われています。最近では、森が人間の心身に良い影響を与えることも医学的に注目されています。
しかし、この国の自然の多様性は、未来の可能性であることを認識している人は残念ながら多くはありません。
日本のみどりの現状
日本の国土における森林面積(森林率)は約67%です。これはフィンランドやスウェーデンに次ぐ第3位です。森林の構成は、43%がスギ、ヒノキなどの人工林。54%が二次林といわれる里山などですが、そのうち生物のDNAの銀行といえる太古からの森・原生林はたった2%しか残っていません。
人工林はいわば建築材としての「木の畑」。野生動物はエサが少なく、生きていくことが難しい環境です。また、本来豊かであった里山も高度成長期以降、放置されて荒廃し、ここでも多くの生物が棲む場所を失っていきました。日本の絶滅危惧種の55%はこの里地里山に依存している動植物だといわれています。
▲森の構成図