アファンの森づくり
「再生のはじまり」
~荒廃した森と放置された人工林~
ニコルが森の再生を始めた1986年当時の日本の森は樹齢400年以上もあるナラ、ブナ、トチなどの大木が大量に伐り倒され、スギやカラマツなどの人工林に変わっていました。
▲荒廃した森
人間の都合の良いようにつくりかえられてしまった森は、野生動物を育み、水をきれいにし、土をつくるという森本来の力を失っていきました。しかも、その人工林にされた森が、またもや経済的な理由で放置され、荒れ果てています。
間伐をされないまま木々が密集している暗い山林や保水力を失った土地の木は弱く、台風や豪雨によりあっけなく倒れ、大水で流されてしまうなど、災害の温床にもなっています。
▲放置された人工林
~幽霊森に手を入れる~
ニコルが土地を購入した長野県の黒姫山麓は、雪が多く寒さの厳しい土地でした。それゆえ農業には向かず、わずかに薪炭林として利用されていたものの、その後は時代の波により放置されていました。
約40年以上も荒れ放題になっていたその土地を、地元の人々は「幽霊森」と呼んでいました。
▲森の手入れ前
この棄てられていた土地を再び命の溢れる森へ甦らせたい。
ニコルは行動を起こしました。
まず、地元の森に詳しいかつて林業家であった男を雇い、真っ暗で藪になっていた森の間伐を行ないました。そして、木々へ充分な陽の光が当たり、養分が一本一本行き渡るようにしました。丈夫でまっすぐな木が育つようにするためです。
同時に小鳥たちが好んで巣を作る茂みだけを残して、地面を覆う笹や藪をはらいます。風通しを良くし、地面にまで日光が届くようにすれば、そこにはさまざまな花や若木が育ちます。木々に絡みついて枯らしてしまうツル植物も丹念に切り払いました。
ただし、ヤマブドウやアケビ、サルナシなど、クマや鳥たちの好きな実がなるものは残すようにしました。そして、森の名はニコルの故郷、英国ウエールズの炭鉱跡地に人々の努力で緑を取り戻した土地の名をいただき、「アファンの森」としました。
▲手入れ後
「森は蘇る!」
~生命の輪の復活~
森には多くの生き物たちが帰ってきました。賑やかなさえずりを聴かせてくれる鳥たちは93種類以上、昆虫は1000種以上。
そして、ツキノワグマの親子が大好物のハチミツを食べに来たり、フクロウが子育てをするようになりました。さまざまな植物、菌類、そして昆虫や両生類たち、すべての生き物がバランスを保ちつつ「命の輪」で結ばれている、森のもつ本来の力をアファンの森が語ってくれています。
▲フクロウ
~帰ってきた森の住人~
今では長野県で絶滅の恐れのある種、60種が確認されています。
アファンの森は、この地域の様々な野生生物が棲める森に再生することを目指すとともに、本来里山にいたもう一つの大事な生き物である「人間の子どもたち」を再び森へ招き、自然と共生する心を育む活動を行っています。
そして、ここから「アファンの森」の心の種を飛ばして、「森は甦る」ことを多くの人々へ伝えたいと思っています。
未来の日本がC.W.ニコルが目指した「森と人が寄り添って生きる」世の中であるよう心から願っています。
▲アファンの森に棲息する動植物
次回は、そのアファンの森をつくったC.W.ニコルと、森の妖精・キコルが案内する「森のデジタル案内(仮名称)」企画をご紹介します。