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「ジュゴン」 詳細解説

読み:
じゅごん
英名:
Dugong

ジュゴンは、海に生きる草食の哺乳類で、海牛目のジュゴン科に属する。体長は2m~3m前後で、体重は最大400kgに達するものもいる。防すい形の体をしており、イルカに似た三日月形の尾びれと、魚のひれのような形をした爪のない前足をもち、ひじの関節は胴体内部に埋もれている。後足は退化している。皮膚は青灰色をしており、体毛はほとんど生えていないが、口のまわりなどに感覚をもつ毛が生えている。歯と2本の牙をもち、「ピヨピヨ」と鳥のような声で鳴く。水中を泳ぎながら、海草のアマモを食べる。

1回の呼吸で数分間潜水することができ、水深30m近くまで潜れるといわれている。その形態や優雅に泳ぐ姿から、古来、「人魚」と呼ばれてきたという説もある。歯のつくりなどが陸上のゾウに似ていることから、ゾウと近い種類であると考えられている。似たような姿をした生物に、同じ海牛目のマナティーがいる。ジュゴンとマナティーは一見そっくりだが、尾びれや口の形状、主食、生息場所などが異なる。また、ジュゴンは1種だが、マナティーは亜種を除き3種が知られている。

ジュゴンは、太平洋の熱帯、亜熱帯の海域に広く分布している。沖縄県の資料によると、世界には2008年の時点で、約8万5000~10万頭のジュゴンが生息していると推測されている。このうち、約7割がオーストラリアなどの海域におり、残りはアフリカ東岸、アラビア海、東南アジアなどにいる。しかし、環境の悪化などにより世界的に数が減っており、IUCNにより希少な保護動物として指定されている。日本にも沖縄近辺に多くの数がいたが、現在では個体数が少ない。このため国内法においてジュゴンは、水産資源保護法に基づく要保護野生水産動植物、種の保存法に基づく国際希少野生動植物種、文化財保護法に基づく天然記念物などに指定されている。

また、さまざまな主体によりジュゴンの保護活動が行われている。IUCNは2010年の会議で「ジュゴン保護勧告」を採択し、同年を「国際ジュゴン年」とした。環境NGOのWWFは、国際的なジュゴンの保護活動を展開しており、WWFジャパンは沖縄でジュゴンの保護に取り組んでいる。沖縄には、ジュゴン保護区をつくることを呼びかけるジュゴン保護キャンペーンセンター(SDCC)もある。また、環境省は2000年から2005年にかけて、沖縄本島周辺海域に生息するジュゴンと藻場の広域調査を行った。一方、ジュゴンの飼育は非常に難しいとされており、国内では三重県の鳥羽水族館が唯一、長期にわたる飼育と研究を行っている。

日本におけるジュゴンの保護をめぐっては、沖縄での基地問題と深く関係する問題が起きている。2003年には、沖縄県名護市辺野古沖に計画されている米軍普天間飛行場代替施設の建設に関して、ジュゴンの棲息地を含む自然環境への配慮を求める訴訟が米国連邦裁判所に提起されたが、2015年2月にサンフランシスコ連邦地裁が原告の訴えを棄却した。

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