絶滅の危機にひんする野生動植物の種を守ることは、国際社会にとって喫緊の課題だ。このため、1973年に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(ワシントン条約)が採択され、1975年に発効した。日本は当時、同条約の規制対象である象牙やべっ甲などの主要輸入国であり、早期の対応が求められた。同条約には1980年に批准したが、さらなる国内対策の強化が求められたため、1992 年6月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が公布され、1993年4月に施行された。
種の保存法は、1987年に制定された「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡規制等に関する法律」と、1972年制定の「特殊鳥類の譲渡等の規制に関する法律」の2法が廃止・統合されてできた。主に、外国産の国際希少野生動植物種と、国内に生息・生育する国内希少野生動植物種の保護について定めている。国際希少野生動植物種は、パンダなどワシントン条約付属書1の掲載種と、マナヅルなど二国間渡り鳥等保護条約・協定の通報種が対象で、2013年6月現在で689種が指定されている。販売や頒布を目的とする陳列や、売買などの譲渡しが原則として禁止される。
国内希少野生動植物種は、レッドデータブックやレッドリストで絶滅危惧1類・2類とされたもののうち、人為的な影響で生息や生育状況に支障を来しているものの中から指定される。2013年6月現在で、イリオモテヤマネコやミヤコタナゴ、ヤンバルテナガコガネなど89種が指定されている。国内希少野生動植物種に指定されると、販売・頒布目的も陳列や譲渡しに加えて、捕獲・採取や殺傷・損傷も原則として禁止される。
国内希少野生動植物種のうち、生息や生育環境の保全を図る必要があるものに関しては、生息地等保護区の指定が行われる。生息地等保護区には管理地区と監視地区とがあり、開発行為などが禁じられる。また、国内希少野生動植物種のうち、個体の繁殖促進や生息地の整備など事業を進める必要があるものは保護増殖事業の対象となる。哺乳類ではツシマヤマネコやアマミノクロウサギ、鳥類ではトキやアホウドリ、植物ではホシツルランなどについて、保護増殖事業計画が策定されている。
2013年6月の法改正により罰則が強化され、希少野生動植物種の違法取引に対する罰金が大幅に引き上げられた。個人だけでなく法人も罰する両罰規定で、法人の場合は最高で1億円の罰金が科される。同改正ではこのほかにも、広告規制の強化や、生物多様性の目的への追加などが行われた。また、同月からアフリカマナティーなどが国際希少野生動植物種に追加された。一方、国内希少野生動植物種に指定されていたオオタカは、個体数の増加に伴い指定解除が予定されている。