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「森林環境税」 詳細解説

読み:
しんりんかんきょうぜい
英名:
Forest Environment Tax

日本は、国土の67%を森林が占める緑の国だ。森林は、水を蓄える水源涵養機能だけでなく、大雨時に洪水や土砂災害を防止する機能、二酸化炭素吸収による地球温暖化の緩和機能などを持つ。また、その自然環境の多様さはさまざまな生物の生息地であり、人間のレクレーションや環境教育の場にもなるなど、公益的機能の大きさははかりしれない。しかし、現在、山林の荒廃が深刻化しており、森林環境と、その多様な機能の維持・回復が問題となっている。

このため、地方自治体が森林整備事業を行い、その恩恵を受ける住民に費用負担を幅広く求める目的で、法定外目的税として徴収するのが森林環境税だ。法定外目的税は、地方自治体の課税自主権の強化を目的に、2000年に地方税法の一部が改正されて創設された制度で、森林環境税のほかでは産業廃棄物税が有名だ。法定外目的税は、自治体があらかじめ総務大臣に協議してその同意を得て、条例で定めて導入する。

2003年に全国に先駆けて森林環境税を導入した高知県では、県民税への上乗せで、個人、法人年額500円を徴収する。上乗せ部分の税収を「森林環境保全基金」として積み立て、森林の環境保全事業に充てられる仕組み。課税期間は導入より5年間で、5年が経過した2007年、制度の継続・見直しが検討され、2012年度まで延長された。2006年度は約1億7000万円の税収があり、水源かん養など森林の公益的機能を守るための活動や、県民参加の森づくりの費用に使われている。

一方、その後に森林環境税を導入した地方自治体では、個人負担は高知県と同様に定額であるが、法人税の場合は資本金額などに応じて課税する方式を取る場合が多い。たとえば、2006年から導入された兵庫県の県民緑税では、個人は年額800円、法人については標準税率の均等割額の10%相当額としている。同権では、県民緑税による税収は、他の財源と区別して「県民緑基金」として管理され、その使途は、「災害に強い森づくり」や「防災・環境改善のための都市の緑化」の推進に役立つ事業に限定される。

このように、森林の整備や保全を目的とした地方税を検討または導入している地方自治体は増加傾向にあり、林野庁によると、2008年4月時点で、上記の高知県や兵庫県を含め、岡山県、山口県、奈良県、神奈川県など23自治体がすでに導入しており、2008年度以降も7県が導入予定だ。また、その他多くの都道府県においても導入の検討が進んでいる。さらに、森林環境税条例の制定と同時に、その税収を積み立て、管理するための基金を条例で定めて設置する自治体が多い。森林環境税の導入により、森林の大切さを認識し、森林を守り育てる意識を高める効果が期待できるが、その使い道や税額を具体的に示し、新たな税負担への合意形成をはかっていくことが求められる。

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