環境に対する問題意識が高まり、各国でさまざまな規制や対策が実施されていることを受けて、環境に関する物品やサービスの貿易についての議論が国際社会で盛んに行われるようになった。WTO(世界貿易機関)は、1995年の設立以来、貿易と環境委員会でこの問題について話し合い、貿易自由化交渉であるドーハ・ラウンドで、貿易の観点から環境問題についての議論を深めた。その論点のひとつが、環境関連の物品とサービスについての関税である環境物品関税と、非関税障壁の削減と撤廃だ。
外務省の説明によると、環境物品の貿易自由化により消費者がそれらの物品をより安く購入でき、環境や人間に対するよい影響を及ぼし、開発途上国の環境技術が促進されるといった効果が得られるという。環境物品関税を削減するには、何が環境に関する物品やサービスであるかを特定する必要がある。WTOの中で日本、米国、カナダなどで構成する「環境物品フレンズ」は、各国が環境物品と考える品目のリストを提出し、これらのリストに基づく議論が行われてきた。
そして、2011年11月に米国・ホノルルで開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)の首脳会議で、首脳宣言の「ホノルル宣言~継ぎ目のない地域経済を目指して~」が合意された。首脳宣言は、前年に日本で開催されたAPECにおける合意である、「横浜ビジョン」や「成長戦略」の実現に向けて目指すべき事項を再確認したものだ。その柱のひとつがグリーン成長の促進であり、環境物品関税について、APECとして環境物品リストの作成に取り組むこととなった。
APECは、翌2012年9月にロシア・ウラジオストクで行われた首脳会議で、環境物品リストを首脳宣言の附属書として公表した。それによると、各国及び地域は2015年末までに環境物品関税の実行税率を5%以下に削減するとしている。これを受けて、WTO加盟の14カ国及び地域が、2014年7月に環境関連物品の自由化交渉の開始を発表した。このように、環境物品関税に関する議論は、WTOやAPECなど貿易と経済に関するさまざまな国際交渉の場で進められており、各国の環境政策に与える影響は大きい。TPP(環太平洋戦略経済連携協定)をはじめとする自由貿易協定とも深く関係している。