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「石綿障害予防規則」 詳細解説

読み:
せきめんしょうがいよぼうきそく

アスベスト(石綿)は、非常に細い繊維のような天然鉱物で、不燃性や不溶性、吸音性などの性質に加えて安価なことから、断熱材や建築物の屋根、外壁材、自動車用部品、水道管などさまざまな用途で使われてきた。しかし、その繊維を吸い込むと、じん肺や肺がん、中皮腫(ちゅうひしゅ)などの病気になることがあるため、WHO(世界保険機関)などが1972年に発がん性を指摘し、ヨーロッパでは早くから製造や使用が禁止されていた。日本では、労働安全衛生法(安衛法)や旧「特定化学物質等障害予防規則」(旧特化則)などに基づき、ビルなどの建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていたが、1975年に原則禁止された。

その後も、スレート材やブレーキライニング、ブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などに使われたが、1995年に有害性の高いアモサイト(茶石綿)とクロシドライト(青石綿)を含む製品の製造などが禁止され、2004年にクリソタイル(白石綿)などを含む石綿セメント円筒などの製品の製造が禁止された。一方、1970年代後半から1980年代にかけて輸入されたアスベストの多くが建材として建築物に使用されており、今後同時期に建てられた建築物の解体などの作業が増加することが予想されており、アスベストによるばく露防止対策の徹底が求められていた。そこで、建築物の解体作業などを主な規制対象とする石綿則が2005年2月に公布され、同年7月1日に施行された。

石綿則は、事業者に、アスベストを含む製品の使用状況を把握するとともに、その製品を計画的にアスベストを含まないものに代替するよう努めることを求めている。また、建築物や工作物の解体などの作業を行う場合は、あらかじめアスベストの使用の有無を目視、設計図書などにより調査、記録し、調査の結果、アスベストの使用の有無が明らかにならない時は、分析調査と結果の記録を義務づけている。そして、アスベストが使用されている場合は、事前調査の結果を踏まえて作成した作業計画に従って作業を行わなければならないとしている。

また、アスベストを使用する保温材などの除去作業について、作業届を所轄の労働基準監督署長に提出することや、特定元方事業者による請負人への作業実施の事前通知、注文者の配慮、吹き付けられたアスベストが劣化などで粉じんを発散させ、労働者が暴露するおそれがある時の除去、封じ込め、囲い込みなどを義務づけている。さらに、除去作業場所への労働者以外の者の立ち入りや、アスベスト吹き付け作業への労働者の従事、作業衣などの作業場外への持出しなどを禁止している。また、従事作業者に、アスベストの有害性などに関する特別教育を行うことなども定めている。

2005年に入って、クボタ旧神崎工場の労働者や周辺住民などにアスベストによる健康被害が認められたことなど、アスベスト被害が社会問題化したこともあり、石綿則は2006年に改正された。吹き付けアスベストの封じ込め又は囲い込みの作業を行う場合でも、アスベスト粉じんが発散され、労働者がその粉じんにばく露するおそれがある場合は、アスベストの使用の有無に関する事前調査と作業計画の作成、作業の届出、特別教育などの実施が義務づけられた。また、封じ込めと囲い込みの作業に関する作業基準が定められた。一方、アスベストによる健康被害への補償については、本人やその遺族で、労災補償の対象とならない人の救済を図る「石綿による健康被害の救済に関する法律」が2006年3月27日に施行され、認定申請や各種給付請求の受付が始められている。

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