天然に産出する繊維状の鉱物であるアスベスト(石綿)による、大気などの環境汚染や人体への健康障害が問題となっている。アスベストは珪酸マグネシウム塩を主な成分とし、耐火・耐薬品・耐摩耗が高く絶縁性にも優れているため、ボイラーやスチーム暖房パイプの被覆、自動車のクラッチ板、石油ストーブのしんなど、建材や工業材料として幅広く利用された。
しかし、アスベストの繊維を吸い込むと肺などに突き刺さり、中皮種やアスベスト肺、肺がんなどの疾患を引き起こす。とくに肺がんの発生率が高く、アスベスト作業者を一般人と比較するとその発生率は数倍に及び、これに喫煙歴などほかの要素が加わるとさらに高くなるという調査結果もある。アスベストによる健康障害は、工場や解体現場で働いていた人だけでなくその家族に及ぶ場合もある。
建物や工作物などの解体時にきちんと処置をしないと、大気中にアスベストが飛び散るおそれがある。国は労働安全衛生法や石綿障害予防規則、大気汚染防止法、廃棄物処理法などの法規制を強化して、アスベスト汚染の拡大を防いでいる。また、アスベストが原因で肺がんなどにかかったが、労災の対象から漏れた人を救済するアスベスト新法もある。