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「バイオミメティクス」 詳細解説

読み:
ばいおみめてぃくす
英名:
Biomimetics

私たち人間が用いている技術の中には、自然とそこに生きる動植物から発想を得て考え出され、発展させてきたものが少なくない。このように、自然や生物がもつ構造や機能から着想を得て、それを人工的に再現したり発展させたりして工学、材料科学、医学などの分野に応用する研究や技術をバイオミメティクスという。日本語に訳すと「生物模倣技術」となり、バイオミミクリーと呼ばれることもある。人間は古代から、自然を模倣して自分たちの可能性と活動領域をひろげてきた。鳥を模した飛行機しかり、魚の浮力や推進力を参考にした船舶しかり。

このような自然の模倣が学問や研究として確立したのは、20世紀に入ってからだ。とくに1970年代以降は分子生物学の発展ともあいまって、化学や材料工学、シルクや化学繊維などの分野でめざましい成果を上げた。また、鳥類の飛翔や羽の構造は、移動に関する技術開発に大きな影響を与えている。その恩恵を受けた代表例が、新幹線などの車両開発だ。高速で走る新幹線に関しては、車輪や動力から発生する騒音だけでなく、車体やパンタグラフなどが空気とぶつかる際に発生する騒音をいかに低減するかが長年の課題だった。

その開発において技術者が参考にしたのが、フクロウの翼の構造だ。闇夜でも音を立てずに飛翔して獲物をとらえるフクロウの風切羽はほかの鳥よりも発達しており、空気抵抗を減らして音を消す機能をもつためだ。この技術は日本のベンチャー企業が開発した小型風車の静音技術にも応用された。一方、一部の新幹線では空気抵抗や騒音を少なくするため、先頭車両の形状がカワセミやカモノハシのくちばしに似せて設計された。

このほかにも、チョウやタマムシの羽根から着想を得た発色技術、ハスの葉やカモの体表を参考にした撥水加工、ガの複眼を模した液晶用の反射フィルム、昆虫のとがった口に似たドリルなど、バイオミメティクスの実例は枚挙にいとまがない。また、自身の体液と空気から糸を紡ぎだすクモや、微生物がもつエネルギー生産機能を解明することで、資源とエネルギーの有効活用や環境分野に応用しようという研究もある。創薬など医療分野での研究開発も活発だ。

このように、バイオミメティクスは科学技術の発展に欠かせないもので、国内外で多くの研究が行われ、産業界からも注目されている。2012年には、バイオミメティクスの国際標準化を目指す技術委員会のTC266が、ISO(国際標準化機構)で動き出した。

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