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「デッカイ猫のオカンだ!」巨大猫の抱擁に癒やされるも、猫にも喪失が…心の穴を埋め合う少年と猫の短編に感涙【作者に訊く】

  • 2024年3月30日
  • Walkerplus

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ポンコツお嬢様と陰キャ世話係」(単行本第1巻は2024年1月9日発売)を連載中の漫画家の野愛におし(@nioshi_noai)さんがのオリジナル作品「猫神オカンはお世話したい」もそうした漫画の1つだ。

同作は、小さなころから決して涙を流すことのなかった少年「ノボル」が、母の墓参りの日、人の何倍もの巨体の猫に追いかけられる場面からはじまる。自分の死を覚悟し、涙が出かかるノボルだったが、猫は彼を捕まえると、親愛の表現である毛づくろいでお世話。その様子に「デッカイ猫のオカンだ!」と感激するとともに、亡き母の面影を垣間見て感極まるノボル。だが、猫のその優しさにも理由があって……、という物語。人と猫、種は違えどお互いの喪失を癒やす光景に胸が突き動かされる短編だ。そんな同作の制作背景を、作者の野愛におしさんに取材した。


――X上では「母を亡くした少年と、子を亡くした母猫」として投稿された同作ですが、制作のきっかけを教えてください。

【野愛におし】X上で作品の方向性や内容を少しキャプションで出した方が読みやすいかもという考えがありましたので、タイトルを「母を亡くした少年と、子を亡くした母猫」と直球のものにしてありましたが、正式なタイトルは「猫神オカンはお世話したい」という作品名で、もともとはジャンプ+様の連載争奪ランキングエントリー作品として執筆しておりました。

1位が連載権獲得という企画で、残念ながら2位という結果になり、連載には至りませんでしたが、誰もが共感できるテーマを元に、主人公に自分の感情を乗せる練習で執筆することで、より主人公に人間味が出るようになったり、どういったテンポ感が自分の作品として一番合ってるかなどを再確認できたので、得たものは大きいと思っております。

――とびかかる際の威圧感や、その後の優しげな表情と、猫のオカンの表現が魅力的です。猫のキャラクターを描かれることの多い野愛さんですが、このオカンではどんなところを意識されましたか?

【野愛におし】可能な限りリアルに表現し、さもキャラクターが実在するかのようにしたかったので、猫のパーツ一つひとつにこだわり、怖く見えるパーツはしっかり怖くフワフワな毛は弾力や触ったときのつぶれ具合等の表現がよりリアルに伝わるよう意識しました。

シルエットがただの猫では印象が弱かったので、実際の猫にはあまり見ない額の模様や耳の毛部分に人魂のようなデザインを施しました。雰囲気だけでメスだと判断がつくよう、表情にも柔らかさを入れたり、優しい視線を送るために、目を細めるシーンを多く使いました。

――X上で「当時のいろんな挑戦が含まれている作品」と野愛さんがコメントされていましたが、具体的には本作でどんなことにチャレンジされたのでしょうか?

【野愛におし】作品自体は2022年のものになるのですが、漫画の描き方を模索中だったころに、一度王道のストーリーで、王道の技術をもっと自分のものにするために、学んだことすべてを詰め込んだ作品となりました。たとえばですが、開始2ページ目で見開きになるページの作りや読んだ方の気持ちを揺さぶれるよう、コマのつなぎ方で時間経過をみせたり、ページめくった際に前ページとの温度差でハッとするようなそんな作りをしています。

一番思い切りが必要だった部分が、セリフのないコマで顔だけで感情を表現するというコマで、そもそもセリフのないコマを作ることが当時まだ抵抗があったのですが、やってみたら意外と一回でしっくり来たので、これ以降はけっこうな頻度で自作品に取り入れています。

――ノボルと「猫のオカン」との触れ合いが、人も動物も孤独を感じて、そしてお互いに孤独を分かち合える、というメッセージを感じました。本作で描こうとしたことやこめた思いについて教えてください。

【野愛におし】お互い触れ合ううちに、少しずつ家族を失ったことを実感するとともに少しずつ現実を受け入れて前を向いていく、そんな話を考えておりました。ときに過去に振り回されて、自分の意見や価値観を押し付けてしまうような展開などを経て「親離れ」と「子離れ」が同時にできたらいいなと思っておりました。

個人的にお気に入りの話ではありますが、今読み返してみると改善点が多くみられるので、いつか一から描き直して、もっと心に強く残るような、そんな作品に生まれ変わらせたいと思っております。

取材協力:野愛におし(@nioshi_noai)

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