
お笑いコンビ・バッドボーイズのボケ担当でおなじみの清人さん。コロナ禍、そして父親の大病をきっかけに、地元・福岡の海沿いの町で過ごした幼少期のこと、家族のことをテーマにした漫画「おばあちゃんこ」を描き始めた。かなり特殊な家庭環境にあり、さらに身体に障碍を抱えながら、幼い清人さんを育てる哲子ばあちゃんがこの物語の主人公。
連載第3回の今回のテーマは「家事」。目の不自由な哲子ばあちゃんは、幼いきよっぴのために悪戦苦闘しながら料理をするけれど、やっぱり時々失敗も……。作者のおおみぞきよとさんに、おばあちゃんの料理にまつわる思い出を聞いてみた。
■感謝はしていても、混入物にはテンションが下がる
――清人さんのためにご飯を作る過程で、おばあちゃんは手をヤケドしたりケガしたりしてしまう。それを目の当たりにするのは、子ども心にしんどいですね。
小学校に上がる前から、手伝いはしていたんです。でも、横にいることしかできないんです。油がはねて「危ない!」ってばあちゃんに言っても間に合わないですもんね……。結局、ばあちゃんが目で識別できないものを僕がする、目代わりですよね。塩も醬油もソースも、匂ったり舐めたりすればばあちゃんもわかるでしょうけど、そんなのしてたら時間がかかってしょうがないですから、多少は役に立てたのかもしれないけど……、でもそんなに力になれないですよね。
――それでも、おばあちゃんがいろんな困難を抱えながら家事をするって神業ですよね。
すごいですよ。だから途中から「目が見えないのって、嘘じゃないかな」と思ったこともありましたね。ちょっと道理が合わないっていうか。
――おじさん3兄弟は手伝わなかったんですか。
そうなんですよ。よくないんですよ、息子たちは。そういう環境で僕も育ったから、補助だけで調理まではやらなかったんだと思います。当時は補助しかしてないことに、何の疑問も持っていなかったですもん。
――そんなおばあちゃんに感謝はすごくありつつ、やっぱり盛り付けや見た目が今一つってことに不満があったんですね。
いや、家で食べる分には悲しいとか思わなかったです。ただ、遠足とかになると明るみに出ちゃうんですよ。周りにバレちゃう。遠足の醍醐味って友達と誘い合って一緒にお弁当を食べることだと思うんですけど、僕は断ってました。お弁当を見られたくないから、木陰に入って一人寂しく食べてました。
――そんなにひどかったんですか?
コンディションのいい時も、もちろんありましたよ。でも、おかずとご飯を入れるところが逆になってたり、混入物があったりして……。小学校高学年になったら、僕も朝5時に起きて盛り付けを手伝ったり、こっそりプチトマトを添えたりして。でもね、フルではやらないんです、家事をするということにばあちゃんのプライドを感じてもいたから。ばあちゃんを傷つけたくない、子どもながらにそんな気遣いもしていましたね。
――優しいきよっぴでも、混入物はゴメンだと(笑)。
もちろん「しょうがない」と思ってました。でもどうしてもテンションが下がってしまう……特に入れ歯は、ね(笑)。
料理も掃除も洗濯も、ケガしてでもやり通す哲子ばあちゃんはとてつもない偉人ですよね。すごくて笑えてちょっと切ない、そんなばあちゃんときよっぴの暮らしを次回もお楽しみに。
■おおみぞきよと
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