今回、話題になっているヤングケアラーを題材にした漫画を描いた「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」(水谷緑さん/文藝春秋)を紹介。ヤングケアラーとは、子ども(18歳以下)が家事や家族の介護で忙しく、受けるべき教育や同世代との人間関係を構築できな状態のこと。この漫画は、家族という形を守るために心を閉ざし、再生するまでの少女の物語だ。
■家族のため、自分の心を殺した8歳の主人公
本作の主人公・音田ゆい(8歳/小学3年生)は、母親が統合失調症という心の病を患っていたため、幼いころから買い物や洗濯、食事など家族の世話をひとりで行っていた。
友達と遊ばず、欲しいものも我慢する日々の生活が続き、次第に、ゆいは自分の心を殺して生きることで“自分を守っていた”。病気の母親が穏やかにすごしてくれるなら…と、いつしか心を無にして生きることが当たり前になっていたゆい。だが、自分が我慢すればいいと心を閉ざしてしまった後遺症は、鬱になって現れるのだった…。
■小学生の15人に1人という割合でいるヤングケアラー
現在も認知度が低いヤングケアラー。だが実際のところ小学生の15人に1人という割合でいるのだという。この漫画は、約2年をかけて10人以上の人にオンラインや対面、メールで取材をしたという。
ヤングケアラーとなっている子どもたちは、その環境が“通常運転”となっており、「自分がヤングケアラー」であることに気付かない場合もあるようだ。そんなときはどうすればいいのか?
作者の水谷さんは、「自分がヤングケアラーだと気づかないことが大半なので難しいと思いますが、若い人ならまずは、使っているツール(SNS)で自分と似たような環境・境遇の人、それを支える人(支援団体)を探すとよいと思います。力になりたい、助けたいと思ってる人が見つかるはずです」と語った。
漫画「私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記」は、主人公であるゆいが学生生活、就職、結婚、育児を経験するなかで、幼いときに“心を殺した”自分を再生するまでの物語。なお、この漫画は10代の当事者たちも読めるようにすべてフリガナ(ルビ)つきであり、ヤングケアラーの支援団体なども記載している。
取材協力:水谷緑(@mizutanimidori)