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大阪生まれの「パインアメ」最も食べているのはやっぱり関西人?1個ずつ手作業で穴を空けていた時代も

  • 2023年8月8日
  • Walkerplus

子供はもちろん大人からも愛されている「パインアメ」は、実は大阪生まれの飴。毎年数々の飴が発売されては消えていく熾烈な飴業界で、70年以上の歴史を誇るロングセラー品だ。さらに、8月8日は「パインアメの日」で、数字の「8」がパインアメを縦に2つ並べているように見えることから、一般社団法人日本記念日協会によって2015年に認定された。

すっかり国民的キャンディーとなっているパインアメだが、「なぜ穴が空いているのか」など、まだまだ気になることが多い。また、大阪発のお菓子であることから、やはり関西で最も食べられているのだろうか。

今回は知られざるパインアメの秘密について、パイン株式会社 開発部広報室の井守真紀さんに話を聞いた。

■戦後の日本でパイナップルの味を気軽に!「パインアメ」誕生秘話
パインアメが生まれたのは1951年。当時の日本は戦争の傷痕がまだ深く、甘いものもあまり流通していなかった。特に多くの人にとって憧れの果物の1つだったのがパイナップルの缶詰で、誰もが食べられるわけではない高級品だったそう。

「『希少なパイナップルのおいしさをみんなが手軽に味わえるように』と初代社長が考案したのが、『パインアメ』なんです」と井守さん。

当時は今よりも粒が大きく、瓶詰めにされて1粒1円で販売されていた。パイナップルの香料もなかったため、リンゴやミカンの香料をミックスすることでパイナップルの風味を再現。形も平べったい飴にパイナップルの繊維の模様を彫り込んだだけで、現在のように穴も空いてはいなかった。

「発売と同時にヒットして大きな反響をいただきましたが、次第に模倣品も出回るようになったんです。そこで、その対策として『うちは商品の品質にこだわろう』と、輪切りのパイナップルの形を再現するために真ん中に穴を空け、差別化を図ることにしました。これは他社には簡単には真似できない、技術的にとても難しいことでした。当初は1個ずつ割り箸で穴を空けていたところ、社員が腱鞘炎になってしまいまして…(笑)。2年くらいかけて、穴を空ける機械を開発しました」

その後、粒を食べやすい大きさに調整したり、パイナップル果汁を加えてより本物の風味に近づけるなど、現在に至るまで少しずつ改良が加えられているという。

■最も食べているのは関西人?「パインアメ」が売れる地域と季節
冒頭でもあった通り、パインアメは大阪生まれの商品だ。やはり、地元である関西地方で最も売れているのだろうか。この疑問に対して、井守さんは「金額ベースで比べると関西と関東の売上は一緒」だと教えてくれた。したがって、関東のほうが人口が多いので、“1人当たり”で考えると関西の人のほうが多く購入していることになる。その理由を井守さんはこう推測する。

「関西地方、特に大阪では“飴ちゃん”をあげる文化が根付いているからではないかと思います。いわゆる“大阪のおばちゃん”が誰かにあげるために飴を持ち歩いていたり、食後に外でみんなと一緒に食べたり、タクシーの運転手さんなんかも、お会計のときに『よかったらどうぞ』とお客様に飴を配っていたりします。本当に小さなひと粒ですが、もらったらうれしいし、あげたほうも喜んでもらえることでうれしい。価格も安いので相手に『お返ししなきゃ』と感じさせることもない、一種のコミュニケーションツールになっているんです」

また、“パイナップル”というイメージから、「売上はやはり夏に高まるのか」と疑問をぶつけると、こちらも意外な答えが返ってきた。

「実は、飴が最も売れるのは春です。行楽シーズンだからですね。春休みやゴールデンウィークがあるので、手軽に持ち運べる飴を外出の際にカバンに入れておくシーンが多くなるんです。そこがピークで、アイスクリームや飲料に手が伸びやすくなる夏は、一時的に売上が下がってしまいます。秋の行楽シーズンや空気が乾燥してくる冬になると売上も回復してきます。コロナ禍の際はおでかけが規制された影響で売上が落ちましたが、外出するようになったと同時にまた回復していったので、『やはりみなさんおでかけ先で食べているんだな』と思いましたね」

■8月8日は「パインアメの日」。2023年は「モルック」に挑戦!
パイン株式会社では、落ち込みがちな夏の売上をカバーするため、そしてファンとのタッチポイントを増やすために、8月8日の「パインアメの日」にイベントを実施している。2017年と2018年は、舞台でパインアメを配っていたという縁からキングコング・西野亮廣とタッグを組んでファンミーティングを開催。また、2019年にはYouTuberのカジサックや大阪出身アーティストのET-KINGらとともに、“黄色いものを身に着けてくる”というドレスコードを設けて観客888人を招き、なんばHatchで「パインアメEXPO 2019」を実施した。

さらに2021年には、株式会社ヘルスビューティー(現・健美薬湯株式会社)とのコラボ商品「パインアメ バブルバス」を投入したお風呂に入浴できるイベント「パインアメの湯沸いてまっせ」を、全国の銭湯や温泉施設で同時開催した。そして2023年の8月8日は、4年ぶりの集客イベント「パインアメ夏祭り2023」が行われる。

「2023年は、会社で取り組んでいるフィンランド発祥の『モルック』という投てき競技にチャレンジするイベントを開催します。当日のお昼にモルック大会を行い、夜はモルック日本代表であるさらば青春の光・森田哲矢さんに来ていただいて、お昼の大会で優勝したチームとエキシビションマッチを行います。そのほか、ステージコンテンツもあります。ちなみに弊社がモルックを始めたのは、フィンランド語のスペル『Mölkky』の『ö』の字がパインアメの形に似ているという理由からで、私が言い出しっぺです(笑)」

今年のイベントもなんばHatchで行われるそうだが、大会参加者を事前に募集したところ、応募者が殺到。なんと募集初日で受付が終了したそうだ。

そんな根強い人気を誇るパインアメだが、井守さんは「背伸びするお菓子ではない」と語る。

「以前、プレーンヨーグルトにパインアメ8粒を溶かして食べるアレンジレシピをSNSで紹介したところ、味覚障害の方が『作って食べてみたら、少し味を感じた』と言ってくださいました。また、妊婦さんにはあの甘酸っぱさがちょうどいいようで、『つわりのときでもパインアメだけは口に入れることができた』といったお話も聞きます。そういったお声をいただくと、とてもうれしくなりますね。これからも常に皆さまの身近にあり、愛着を持っていただけるキャンディーであり続けられるようがんばってまいります」

戦後の厳しい時代から、多くの人の喉と心を潤してきたパインアメ。これからも誰かの心をホッと休め、人と人とをつなぐコミュニケーションツールとして、私たちのそばに居続けてほしい。

取材・文=小賀野哲己(にげば企画)

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