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コーヒーで旅する日本/東海編|名駅オフィス街を拠点に、ワーゲンバスでどこへでも!「MAGNI'S COFFEE TRUCK(マグニーズコーヒートラック)」

  • 2023年4月19日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第18回は、名古屋・名駅にある「MAGNI'S COFFEE TRUCK(マグニーズコーヒートラック)」。会社員時代にドイツに赴任した経験からドイツのカフェ文化に親しんでいた藤澤圭一さんは、古いものと新しいものがミックスされた旧市街マグニの在り方に発想を得た移動式カフェで自家焙煎コーヒーを販売している。屋外のため持ち込める材料や道具に制限があり、さらに天気や気温の影響を受けやすい環境は、コーヒーマンとしては難易度が上がるところ。それでも、「人と関わることが好きなので、店舗よりもお客様との距離が近くなる営業形態を選びました」と話す藤澤さんは、コーヒーを通じてお客とコミュニケーションを取り、一緒に過ごすひと時を作り出すことを何よりも大切にしている。

Profile|藤澤圭一(ふじさわ・けいいち)
1981(昭和56)年、愛知県清須市生まれ。学生時代に「いずれはカフェをやりたい」と志す。会社員として働きながら資金を貯めて準備を進め、2014年に手鍋で焙煎するセミナーに参加。それ以降も、手回しロースターや半熱風式焙煎機を入手して独学で勉強し、焙煎の技術を磨いた。準備が整ったところで会社を辞めて、2016年に「MAGNI'S COFFEE TRUCK」を開業。あえて店舗を構えず、移動できるキッチンカーでコーヒー店を営む。

■ワーゲンバス×サードウェーブコーヒー
平日はオフィスワーカーが行き交い、週末はショッピングやお出かけを楽しむ人々でにぎわう名古屋駅界隈。なかでも名駅3丁目エリアは気取らない居酒屋やおしゃれなバルが集まる名古屋屈指の繁華街だ。「MAGNI'S COFFEE TRUCK」は、そんな都心のど真ん中に平日のみ出現する移動式カフェとして親しまれている。

お客を迎えるのは、店主の藤澤圭一さん。「開業から7年間、火曜日から金曜日はずっとここで営業してきました。おかげさまで、朝の通勤時やランチを食べた帰りに、この辺りで働いている方が習慣的に利用してくださいます。さらに、開業当時はちょうどインスタグラムが盛り上がり始めたタイミングで、開業してすぐに『インスタグラムを見ました』という県外の方や旅行者がたくさん立ち寄ってくださるようになりました。今では青空の下に休憩中の会社員の方や旅行者の方が集まる、ゆるい社交場のような空間になっています」

確かに、1967年製造のワーゲンバスを改造したキッチンカーはビジュアルインパクトがあり、カフェ好きの心を打ち抜くには十分。白一色にカラーリングされた車体、古材を使ったカウンター、チョークアートが施されたメニューボードなど、どこを見ても「かわいい」しかない。

バックドアを開けると、車両後部がカウンター席に一変。テーブルには店名ロゴがプリントされ、たくさんのビートルやワーゲンバスのミニカーが飾られている。ここにコーヒーやメニューを置き、写真撮影するのも気分が上がる。

「店のコンセプトは“新旧の融合”です。会社員時代にドイツに4年間赴任していたことがあり、ドイツ北部の都市ブラウンシュヴァイクの旧市街マグニの在り方がいいな、と思って店名にしました。マグニは11世紀から続く古い都市。その中に近代的でアーティスティックな建物が自然と溶け合っている雰囲気が好きで、カフェのコンセプトにしました」と藤澤さん。コンセプトの“旧”に当たる部分はハード面。ドイツに縁があったことから、キッチンカーはドイツ車である中古のワーゲンバスに決定。さらに、古材をあしらったレトロな雰囲気の移動カフェにカスタマイズした。一方、コンセプトの“新”に当たる部分はソフト面。コーヒー豆の個性を浅めの焙煎度合いで表現するサードウェーブコーヒーを主軸に据えた。

コーヒー豆のラインナップは4つ。深煎りのブラジル、中煎りのマグニーズブレンドは定番で、ほかに浅煎り1種類と季節のブレンドが1種類ずつある。「浅煎りは1、2週間でコロコロと変えて、楽しみながらやっています。季節のブレンドは、春は中煎りのサクラブレンド、夏は浅めのものを多く使ったヒマワリブレンド、秋冬はちょっと深めの味をその年でいろいろ作っています」

取材時はまだサクラブレンドのシーズンだったのでオーダーしたところ、深煎り嗜好の筆者としてはなんのストレスもなくぐびぐびと飲める軽さと、コーヒーらしい華やかさを感じさせる、ウキウキした気分になれる味わいだった。桜が持つ木としての力強さと花としての華やかさの二面性をイメージし、香りの華やかさをケニア産の豆で、しっかりと根を張る土台を2種類のブラジル産の豆で表現しているそうだ。
■必ず毎回同じ味を出さなくてもいい
豆は、自宅に設置した焙煎機でこまめに焙煎している。「同じ国でも産地や農場によって全然キャラクターが変わる。さらに同じ豆でも浅煎りなのか深煎りなのかでまた顔が変わってくる。そういうところが焙煎のおもしろさですね。生豆はすべてスペシャルティコーヒーを選んでいます。品質のいい豆を使って浅煎りにすると、その豆の個性がより出やすい。だから、その個性をなるべく潰さないような焙煎を心がけています」

開業するまでの2年間、いろいろな方法を実践しながら焙煎のコツを習得した藤澤さん。「焙煎方法による一番大きな違いは、焙煎できる量ですね。手鍋や手回しのように量が少ないと、どうしても焙煎のばらつきが大きくなってしまいます。そこが難しいけれど、逆に言えばおもしろい点でもある。自分のポリシーというわけではないですが、必ず毎回同じ味をきちんと出そうとはせず、豆の収穫時期や季節で表情が変わるのも、そういう違いを含めておもしろいと思っていて、この違いをそのまま受け入れてやろうと思っています。ただ、そうすると浅い焙煎でちょっと厳しい面がありました。焙煎というのは絶対バラつくものですが、浅煎りの領域でバラつきの範囲が大きいと生焼けが出てきてしまうので。一度に焙煎する量を増やして、半熱風式の焙煎機を導入することで、ようやく浅煎りの領域でも安定して自分が狙いたい豆の個性を出せるようになってきました」

■屋外で抽出する難しさとおもしろさ
抽出の技術は、エスプレッソ、ハンドドリップともに名古屋・御器所の「I-cafe」でレッスンを受けた。車内には小型エスプレッソマシンを設置。スチームもパワフルな本格派だ。

エスプレッソに使うのは、深煎りのブラジル・キャラメラード。カフェラテには、かわいらしいラテアートが施される。ラテアートがやりやすく、見栄えがするように、テイクアウトカップの開口部は広めのタイプを選んだ。完成したカフェラテを早速ひと口いただいてみると、ミルクの甘さの中にコーヒーの香りがふわりと立ち上り、ホッと癒される優しい味わいだった。

ハンドドリップについては「あまり酸味が出すぎず、甘味と酸味と少しの苦味をバランスよく抽出できるところを狙っています」と話すが、実際に屋外で抽出してみると、想定通りにいかない部分もあったという。「ハンドドリップの場合は一投目から蒸らしのタイミングで香りなどを気にしますが、車内という狭い空間で淹れるため、香りがこもりやすい。外気の影響も受けやすい。そのため、数字にとらわれすぎず、体感気温も考慮して調整するようにしています。お湯の温度はちょっと高めの95度くらいをイメージしています」

バゲットサンドもあるので、ちょっとした休憩や小腹が空いた時の利用にもおすすめ。ドイツ在住経験のある藤澤さんらしく、本場さながらのスタイルにこだわったドイツ風バゲットドッグ(700円)を頬張れば、ドイツの屋台気分に浸れるかもしれない。

■呼ばれればどこへでも!出店情報はWEBで発信
「人が好きで、人とコミュニケーションを取って何かを成し遂げたり、解決したり、ということが好きでした。カフェをやりたい理由のひとつに、人とコミュニケーションを取ってくつろぎのひと時を作り出したいという想いがあったので、店舗よりもキッチンカーの方がお客様との距離が近くて自分のやりたいことに近いと思っています」と話す藤澤さん。さらなる出会いを求めて、週末はさまざまなイベントに出店している。

「移動販売のメリットとして、その場所に合わせてビジネスができる点があります。場所にあった色を出せるんです。この名駅3丁目で営業している時はオーダーの9割がコーヒーとカフェオレだけ。でも、週末のイベント出店には、家族連れのお子さんとか、男女も年代も幅広いお客様と接するので、そういうシーンでも皆さんに喜んでもらえるように、コーヒーだけじゃない幅広いラインナップにしました」

現在は東海三県への出店が中心だが、「声がかかれば関東や関西へも遠征したい」と意欲的。週末の出店情報はWEBやインスタグラムで発信している。「周りにとらわれずに好きなことを好きなようにやろう」と移動カフェを始めた藤澤さんの世界は、相棒のワーゲンバスと共に走り回りながら、きっとどこまでも広がっていく。

■藤澤さんレコメンドのコーヒーショップは「SHRUB COFFEE NAGOYA(シュラブコーヒーナゴヤ)」
「名古屋・名駅の『SHRUB COFFEE NAGOYA』は、三重県桑名市にある『SHRUB COFFEE』の2号店です。名古屋の店を任されているのは、オーナーの息子さんである野村優貴さん。自分で産地まで行って豆を買い付けるなどコーヒーに関する知識は相当なものですが、とても気さくで話しやすいです。コーヒー講座やカッピングセミナーなどを積極的に開催していて、コーヒーに関して深く知りたい人はもちろん、あまり知らないけど興味がある人も、きっと楽しく話せると思います」(藤澤さん)


【MAGNI'S COFFEE TRUCKのコーヒーデータ】
●焙煎機/フジローヤル半熱風式1キロ
●抽出/ハンドドリップ(コーノ式)、エスプレッソマシン(ラ・チンバリ ジュニア)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100g800円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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