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“液体になった愛”を渡して気持ちを伝える⁉狂った愛に溺れる男女が話題に。「愛を飲む」男女の関係は【作者に聞く】

  • 2023年4月20日
  • Walkerplus

愛を自分から抽出して液体化するという技術が発達した世界で、複雑な関係を築く2人を描いた漫画「愛を飲む」。Twitterに投稿されたこの作品が、1.3万以上のいいねを獲得するなど反響を呼んでいる。作者である深津さん(@hukaiyoitaiyo)に、キャラクターや世界観について話を聞いた。


■“愛”を飲みたいだけ。恋愛ではない、悪意を向け合う2人の関係
普段はコミカライズ作品の作画担当などをしているという深津さん。この漫画の世界観を作るにあたり、参考にしたものや着想を得たものを聞くと、「恋愛漫画を自分なりに自分の好きな風に描いてみようと思って描いた作品なので、漠然としていますが、ある意味これまで見てきたたくさんの恋愛漫画が参考というか、着想元になっているのかもしれません」と答えてくれた。

作中では、15歳になると“愛”を入れるために空の瓶が3つ支給される。一見、自分の愛を入れた瓶を渡す少女とそれを受け取る少年のラブストーリーのようだが、この思い自体が受け入れられることはない。しかし、彼女の愛を飲んだ少年はその味を好きになってしまい、少女から自分への愛をすべて飲み干すことになる。結果的に少女から少年への愛はなくなってしまうが、その後も少年はあらゆる手段を使って少女の愛を手に入れようとするという、複雑な関係が展開される。

深津さんはこの2人について、「制作当初、どちらかが悪いというのではなく、どちらも“どこか異常で、どちらもがかわいそう”という2人を描こうと思いました。彼は一見、被害者にも見えるかもしれませんが、最終的にふっきれて自分らしい生き方だと思って彼女を利用しているし、彼女は彼女で明らかによくない恋愛の仕方しかできない性分なので、彼を利用しつつ、明らかな悪意を向けられていることは不快に思っている。お互いが恋愛感情を持たず、でも限りなくお互いの恋愛感情に近いところに干渉し合って上手く折り合いを付けている、という距離感とそれぞれの『うわ…』となるような性質が彼らの魅力なのかなと思っています」と話す。

また、見どころについては、「キャラクターの表情を描くのがとても好きなので、ぐにゃぐにゃと泣いたり笑ったり呆れたりと歪む2人の表情を見ていただけたらうれしいです」とのこと。

Twitterでの反響は、意外なものだったという。「この作品を描くにあたってちょっと危惧していたのが、2人を被害者と加害者の形式で見られることでしたが、意外とそんな感想はほとんどなく、むしろ『どっちも気持ち悪くていいですね!』とおっしゃっていただくこともあって『そうなんですよ!』と安心してうれしい気持ちになりました」

同じくTwitterに投稿された「金魚鉢少女」は、相思相愛だった金魚を失った男性と、金魚塚に眠る金魚が体に宿る“金魚鉢”にされてしまった少女を描いている。「金魚を題材にしたのは、少しだけファンタジーなお話にするうえで、多くの方が子供のころに比較的気軽に触れてきた生き物で、その身近さと美しさが現実と創作の狭間にピッタリだなあと思っていたためです。ちなみに、私も子供のころに金魚を飼っていました。最終的にめちゃくちゃ大きくなって長生きしてくれました」

深津さんが作品内で特に気に入っているのは、最後の2ページ。「絵面と噛み合わせられないぐちゃぐちゃな感情が、描いていて一番楽しかったです」

■ドラマチックではないけど心に残るセリフを書きたい
この2作でも見られるように、深津さんの作品は美しいなかにゾクッとするようなホラーテイストが含まれているのが魅力だが、これは深津さんが一番好きなジャンルだという。「表に出ている作品だとなかなかないジャンルなので、元々、こういうキャラやこういうお話が好きだけど見つからないから描こう!という感情から始めた活動でした。地産地消精神がいつの間にかたくさんの方の目に留まるようになっていってとてもありがたく思っています」

セリフのテンポ感などは、子供のころに大好きだったお笑いの漫才やコント、ギャグ漫画などに影響を受けているそう。「元々ジャンルとしてはコメディモノが大好きで、シリアスなお話を作っていても隙あらばギャグ要素を入れたくなっちゃいます。今では、読者の方にもそういう作風を“私らしい”と言っていただけるようになってうれしく思います」

漫画を描く際には、可能な限りセリフがドラマチックになりすぎないように心がけているという。「セリフの力強さは読者さんの心をつかむのかもしれませんが、私はスッと頭に入ってどこかで見たことがあるけど、なぜか忘れられないまま隅っこに引っかかり続ける、というものづくりをしたいなと密かに思っています」

深津さんの漫画はTwitterを中心に、pixivにも作品をまとめたものを投稿中。不思議な世界観を持つ作品を何度も読み込んで、複雑に絡み合う登場人物の関係に触れてみて。

取材・文=上田芽依

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