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コーヒーで旅する日本/関西編|Made in Japanの器具を通じて、日本のコーヒーカルチャーを京都から世界へ広げる。「Kurasu」

  • 2023年1月31日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

関西編の第50回は、京都市内に3店、海外にも3店を展開する「Kurasu」。金融業界から転身したオーナー・大槻洋三さんが、2013年にオーストラリアで日本の家庭用品のオンラインストアを始め、2年後に日本製コーヒー器具専門店にリニューアル。2016年、京都に初の実店舗をオープンして以降は、焙煎所も開設し、ロースターとしての顔も加わった。器具の販売に端を発し、抽出や焙煎まで、日本のコーヒーカルチャーを世界に発信する「Kurasu」のユニークな店作りを、ヘッドロースターの良原さんにうかがった。

Profile|良原皓介(よしはら・こうすけ)
1991(平成3)年、京都府生まれ。大学卒業後、会社員を経て、京都の小川珈琲に入社。バリスタとして経験を積む中で、「Kurasu」の主催する抽出の競技会で優勝したのがきっかけで、2018年に「Kurasu」に入社、一から焙煎の技術を磨き、現在、ヘッドロースターとして「Kurasu」のコーヒーの品質管理を担う。

■Made in Japanの器具を通じて、日本のコーヒー文化を世界に発信
日本語の“暮らす”を店名に掲げる「Kurasu」がスタートしたのは、2013年、オーストラリアから。仕事の関係で当地に移住した、オーナー・大槻さんが、“日本製のプロダクトがいかに海外で愛されているか”を知ったことが原点にある。それまでも度々、海外で生活し、得られた体験をきっかけに、日本の家庭用品を扱うオンラインストアを立ち上げたことで、大槻さんは改めて、日本の職人の仕事やデザイン、そのストーリー性が、世界中で認められていることを実感したという。

その中で、売上の半分以上を占めたのが、コーヒー器具だった。自身も、両親がジャズ喫茶を営んでいたことから、コーヒーは身近に親しんでいたもの。次第に、日本のコーヒーカルチャーに関心を深め、器具のデザインや抽出の細やかさといったユニークな魅力を伝えるべく、コーヒー器具専門店にシフト。サードウェーブの影響で、日本のコーヒー人気が高まっていたこともあり、毎月数百点のアイテムを25カ国以上に届けるまでになった。同時に、日本各地の個性的なロースターと、“Kurasu パートナー”として提携し、定期的に豆を届けるサブスクリプションサービスもスタートした。増え続けるファンの声に応えて、2016年、地元の京都に初の実店舗をオープン。国内外から多くのお客が集まる、京都の新たなスペシャルティコーヒースタンドとして、瞬く間に注目の存在となった。

また、並行して、2017年頃から自家焙煎をはじめ、2018年に伏見に焙煎所を開設し、2021年に西陣に移転。ヘッドロースターの良原さんは、先輩の誘いで会社員からコーヒーの世界へ進み、京都の小川珈琲でバリスタを務めていた時から「Kurasu」との縁があったという。「小川珈琲時代に勤めた京都駅地下街の店が、Kurasuのスタンドと近く、スタッフの行き来もありました。そのつながりでKurasu主催のブリューワーズトーナメントに参加して、優勝したことが、今に至る転機になりました。オーナーの大槻さんと一緒に、一からロースターを作り上げる感覚で、仕事を任せてもらい、継続的に取り組める環境がKurasuの強み」と、新天地での仕事に手応えを感じている。

■ロースターの仕事は、常に同じ焙煎環境を作る準備にあり
とはいえ、良原さんが本格的に焙煎に取り組んだのは、この時から。ロースターとなってからの4年間で最も腐心したのは、常に安定した焙煎を行うための環境作りだという。「焙煎する時に、毎回同じ条件の環境というはありえないこと。そんな中でも、同じ豆を10回焼いて、同じ焼き方ができることが理想なので、いかにブレをなくすかが大事です。そこで、気候風土は変えられないから、まず自分のコンディションを一定にしようと、焙煎する日は決まった行動を取る、いわばルーティンを作るようにしました。逆に、それを決めずに焙煎するのは難しい。だから、常に同じ環境を作る準備が焙煎士の仕事だと思っています。自分の場合は、焙煎中に調整することは一切なくて、焙煎が始まったら何もしません。むしろ、それより前の段階、どういう準備をして取り組むかがポイントなんです」

日々、細部まで行動を律するアプローチは、実はバリスタの仕事が土台になっている。抽出時の湯温、粉の量、注ぎ方など、一杯のコーヒーを抽出するために、条件を整えることはバリスタなら当たり前のこと。良原さんにとって、焙煎のプロセスもその感覚と同様だ。ただ、焙煎を始めた頃は、機械の扱いも不慣れな部分があって、同じ豆でも焼くたびに違うということが多々あったという。「毎回条件が違うと、失敗してもどこが原因かが分からないんですね。基準がないと、焼き方を試そうにも、変えた部分と結果の違いが結びつかないことがストレスでした。そこで、毎回同じように焼くために、焙煎プロセスの変数を少なくしていく工夫を重ねていって。一定の条件を作る作業は、いつも同じ味を抽出するバリスタの仕事に通じるものがありました」

それゆえ、今でも自身のスタンスをロースターでなく、バリスタ・ブリューワーと位置付けているという良原さん。「焙煎も、抽出のプロセスのなかのいち変数と捉えて、バリスタがおいしいと思って、淹れられる豆をイメージしてます。自分が淹れる時に味わいに納得して、自信をもってお客さんに勧めたいので」との思いを抱いて、日々焙煎に向き合っている。

■充実したコーヒーライフを支える心強いパートナー
近年、ロースターとしても存在感を増しているが、豆の販売だけに止まらず、日本製の多彩なコーヒー器具を通して、楽しみをさらに広げる提案をできるのが、「Kurasu」ならではの特色。「スタッフの自分が訪れても、品揃えの幅広さに感心します(笑)」という、姉妹店の夷川店は、器具のショールーム兼カフェとして2020年にオープン。店内の壁一面に、ドリッパーやポット、ミルなどの器具がずらりと並び、手に取って選べるショップは、今までにありそうでなかったスタイル。しかも、購入を考える際には、実際に抽出の実演を見たり、試用したりできるのも魅力の一つだ。

また、カフェで提供するコーヒーも、実際に購入できる器具を使用して抽出。基本はすべて家庭用の器具ゆえに、抽出レシピは誰もがそのまま再現可能だ。中でも、オリジナルのエアロプレスラテは、“家でも気軽にラテアートを楽しみたい”との声に応えて生まれた人気メニュー。エスプレッソマシンがなくとも、本格的なラテアートが作れるアイデアはまさに目から鱗。お客の希望や好みに応えて、器具の使い方や組合せをコーディネートできるのは、幅広いアイテムを揃える「Kurasu」だからこそ。それゆえ、家庭で使うお客だけでなく、イベント出店者や開業希望者が器具の相談に訪れることも少なくない。

「日本ならではのディテールの追求は、器具もコーヒーも共通する点。日本製器具の良さを広めることから始まり、日本のコーヒーカルチャー全体を海外に発信する中で、今後はロースターとしても、生豆選びから焙煎、抽出まで、自分たちだから表現できるものを目指していきます。グローバルに展開しているからこそ、この店が根ざす土地の特色に目を向け、地域の風土を感じられるような味作りができれば。さらにクオリティを上げて、“Kurasuといえばこの味”と言えるコーヒーを作っていきたいですね」と良原さん。器具に触れ、抽出に親しみ、豆の個性を味わう。そのプロセスの醍醐味をトータルに提案する「Kurasu」は、一人ひとりのコーヒーライフに寄り添う心強いパートナーだ。

■良原さんレコメンドのコーヒーショップは「common.」
次回、紹介するのは京都市上京区の「common.」。
「店主の久米さんはKurasuの元スタッフで、2021年に独立して、奥様と2人でコーヒーショップ兼ヘアサロンというユニークなお店をオープンされました。僕が焙煎に取り組みはじめた時から、何かと励ましてもらった先輩でもあり、コーヒーの抽出技術はもちろん、お人柄がとても素敵で。バリスタとしてのプロ意識の高さ、気配りの行き届いたサービスは、“自分には真似できないな”と、いつも思います」(良原さん)

【Kurasuのコーヒーデータ】
●焙煎機/ギーセン 6キロ(半熱風式)、ローリング 35キロ(熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、エアロプレス、エスプレッソマシン(ラマルゾッコ)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/ あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド3種、シングルオリジン4~5種、100グラム870円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治




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