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コーヒーで旅する日本/九州編|生産者と顔を合わせ、まるで家族のように。「COFFEE UNIDOS」だからこその繋がり方をこれからも

  • 2023年1月9日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第59回は、福岡県糸島市にある「COFFEE UNIDOS」。実家の倉庫に焙煎機を据え、ロースターとして活動を始めた田中裕之さんが営むロースタリーだ。毎年、産地に足を運び、農園から直接生豆を仕入れるダイレクトトレードを11年前から続け、もちろん現在もそのスタイルを一貫している。「COFFEE UNIDOS」を開いたのは2016(平成28)年。それまでは「Tana Cafe + Coffee Roaster」の屋号で前原中央でカフェを営んでいたが、より焙煎に注力するために現在は「COFFEE UNIDOS」の一店に。屋号に込めた繋がり・団結・協力といった意味が、なにを表しているのか。糸島を代表するロースタリー「COFFEE UNIDOS」の魅力を探る。

Profile|田中裕之(たなか・ひろゆき)
1980(昭和55)年、福岡県糸島市生まれ。大学時代に通っていた喫茶店でコーヒーを淹れる姿を目にし、純粋に「かっこいい」というところからコーヒーの道へ。その後、シアトル系のコーヒーチェーンで働き、業界の知人も増え、ますますコーヒーに魅了される。27歳の時、焙煎機を購入し、「Tana Cafe + Coffee Roaster」を立ち上げる。実家のガレージで焙煎する日々を経て、前原中央にカフェを開業。2016(平成28)年、糸島市・浦志に焙煎所を兼ねた豆売りメインの「COFFEE UNIDOS」をオープン。2021(令和3)年12月末に11年半営んだ「Tana Cafe + Coffee Roaster」の幕を下ろし、「COFFEE UNIDOS」のみに。より焙煎に特化したスタイルで店を営む。

■生産者との繋がりに感謝を
「COFFEE UNIDOS」というと、コーヒー好きたちから「田中さんが選んだ豆は個性的で、おいしい」といった言葉をよく耳にする。実際「COFFEE UNIDOS」には、圧倒的な個性を放つ豆がスポットで並び、ゆえに“オリジナリティが光るロースタリー”というイメージがあった。ただ、オーナー兼ロースターの田中裕之さんには、個性を主張したいという意識が特別強いわけではない。むしろ、シンプルに自分が“おいしい”と思える豆を選び、その豆に合う焙煎を続けてきただけだ。

同店のことを語る上で外せないのは、2013(平成25)年から続ける農園からの生豆の直接買い付け。田中さんは毎年産地に足を運び、農園から直で生豆を仕入れるのをモットーの一つとしており、コロナ禍で渡航できなかった2年を除き、9年間それを続けてきた。さらにニカラグアとエルサルバドルの決まった農園から仕入れるのが田中さんの買い付けのスタイルだ。その理由を田中さんはこう話す。

「コーヒーとともに生きていく以上、どんな場所で、どんな人たちが、どのような方法でコーヒー豆を栽培しているのかを見てみたい。そんな純粋な興味から9年前に初めてニカラグアとエルサルバドルに行きました。その時に出会った農園主さんと、今もお付き合いさせていただいています。もちろんほかにも農園はありますが、偶然の出会いを経て、そして僕自身が素直においしい、クオリティが高いと感じたコーヒーを栽培されている農園主さんから、その翌年も生豆を仕入れるのは僕にとっては自然な流れ。結果、年を重ねるごとに農園の方々はこちらが求めている味わいを常に考えてくれ、僕から栽培品種や生産処理といった具体的な要望を伝えられるまでの関係性を築くことができるようになりました。さらに、そうやってお付き合いさせていただいている農園は、どこもCOE(カップ・オブ・エクセレンス)入賞の常連ということもあり、本当に毎年品質の良い生豆を届けてくれる。それは僕にとって、とても幸運なことだと常に感謝しています」

■生の声を聞き、産地の現状を自分のこととして
「農園の方々はただのビジネスパートナーではない」と続ける田中さん。この9年で確固たる信頼関係を築き、実際、コロナ禍においては現地に足を運ばずとも求める生豆を仕入れることもできた。ただ、それでも田中さんは毎年必ず、産地を訪れ、農園主と直接顔を合わせるというコミュニケーションを大切にしている。そんなエピソードを聞いて思うのが、田中さんにとってコーヒー豆の作り手たちは友人や身内のような存在なのだということ。

「やはり一年に一度でも直接顔を合わせるのと合わせないのでは、最終的にお客さまにお届けするコーヒーの味わいにも差が出てくると思っています。すごく抽象的な表現ですが結局、“人対人”で原料を仕入れさせていただいているわけで、歩み寄る、お互いに気持ちを汲むということが大事になってくる。そう考えると、微妙なニュアンスやこちらの思いを伝えるのにメールだけのやり取りでは足りないと僕は思っていて。それに産地でも、より魅力的な原料を作り出すために、常に変化が起きています。僕らロースターにとっても産地の情報のアップデートは必須。そういった意味でもこれからも毎年産地には必ず足を運び続けたい」と田中さん話す。

現在、「COFFEE UNIDOS」はニカラグアの4農園、エルサルバドルの2農園の計6農園から生豆を仕入れている。毎年、収穫初期に産地を訪れ、その年のコーヒーの味わいをチェックする田中さん。コーヒーは農作物であるため、毎年まったく同じ原料というわけにはいかないが、「COFFEE UNIDOS」で出したい味わいを指標に同クオリティの豆を手に入れるのは田中さんの一つの使命。中には、樹齢100年超の大樹に実ったコーヒーチェリーだけを厳選したシングルオリジンがあったり、どの豆も裏側にストーリーが流れるものばかりだ。もちろん味わいも豆によってガラリと変わり、焙煎度合いもやや浅煎りから深煎りまで幅広い。ただ深めに焙煎した豆でも、生豆由来の個性が主張し、飲む度に驚きがあるのが「COFFEE UNIDOS」のコーヒーの大きな魅力になっている。

■新たな繋がりを求めて
2023(令和5)年は新たにコロンビアに行くことが決まっており、「新たな農園のコーヒーを扱えることにワクワクしている」と話す田中さん。「ニカラグアとエルサルバドルの農園主さんと築いてきた関係はこれからも大切にしていきますが、チャンスがあればほかの国にも足を運びたいという願望はもちろんあります。ただ、品質が良くておいしい原料を仕入れるだけではなく、コーヒー豆の作り手さんたちと確かな人間関係を築いていくというのは、これからも変わることはないと思っています」

英語でUNITEDを意味する屋号の「UNIDOS」。繋がり・団結・協力といった意味が、まさに田中さんとコーヒー豆の作り手たちとの関わり方をストレートに表している。

■田中さんレコメンドのコーヒーショップは「くつろぎ珈琲」
「福岡県福津市にある『くつろぎ珈琲』。若木台店と宮司店の2店舗があり、ロースターの小田さんが営まれています。少し前にPROBATの焙煎機を導入されましたが、それまでは250グラムのDISCOVERYを使われていたと思います。相当な回数焙煎されているのは素直にすごいことで、それだけに焙煎についても確かな技術を持たれています」(田中さん)

【COFFEE UNIDOSのコーヒーデータ】
●焙煎機/ビューラー社 RM-20
●抽出/ハンドドリップ(CAFEC フラワードリッパー)、エスプレッソマシン(La Marzocco Linea mini)
●焙煎度合い/中煎り〜深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/150グラム1275円〜、250グラム1650円〜、500グラム2800円〜、1キロ4600円〜




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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