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誕生のきっかけは“フランス帰りのお客さん”!神戸銘菓「ゴーフル」ヒットの理由と95年の歴史に迫る

  • 2022年6月23日
  • Walkerplus

香ばしい薄い生地に、舌触りのいいクリームをサンドした神戸銘菓「ゴーフル」。小さな頃から親しんできたという方も多いのではないだろうか。筆者もその1人で、盆や正月には必ずと言っていいほど親戚からゴーフルが贈られ、子供の頃から大好きだった。兄弟でストロベリー味の争奪戦をした思い出もある特別なおやつで、今もあの缶を見るだけで懐かしい気持ちになる。そんなゴーフルが、なんと今年で95周年だという。

記念すべきアニバーサリーイヤーを迎えたということで、今回はゴーフルを製造販売する神戸風月堂 広報担当の松本さんに取材を実施。改めて知りたい商品誕生のきっかけやその歴史と共に、ロングセラーを誇るゴーフルの人気の秘密に迫った。

■喫茶店のサンドイッチ式アイスクリームが話題に
1897(明治30)年に創業した神戸風月堂。東京で洋菓子作りの修行を積んだ吉川市三氏が開業し、当時はシュークリームやカステラ、マロングラッセ、栗饅頭、最中など、和洋菓子を幅広く取り扱っていたという。

1918(大正7)年には、神戸の地サイダーや、ウエハースでアイスを挟む「サンドイッチ式アイスクリーム」を取り扱い、夏季限定で喫茶店をスタートさせた。当時、本格的な喫茶店は珍しい存在だったという。「日本の実業家であり、川崎造船所(現在の川崎重工業)の社長だった松方幸次郎さんが馬車で訪れ、アイスクリームを楽しんだという逸話も残っています」と松本さん。神戸のハイカラな人々の間で話題になったのが想像できそうだ。

■フランス土産がきっかけに!しかし発売当初は苦戦?
1926(大正15)年頃、フランス帰りのお客さんにより持ち込まれたお菓子によって転機が訪れる。そのお菓子を「日本でも作ってみては?」と勧められたことから、職人が日本人の嗜好に合うようにと試作研究を繰り返し、誕生したのが「ゴーフル」だった。

湿度の高い日本でも軽やかに食べられるようにと、生地はサクッと薄く焼き上げられた。神戸の昔ながらの手土産「大瓦せんべい」と同じく、2枚の鉄板で生地を挟み、裏と表を返しながら火に当て焼き上げる「挟み焼き製法」で、当時は1枚ずつ手焼きしていたというから驚きだ。ちなみに、この挟み焼きは全自動化された今も変わらず受け継がれている。

約1年の開発期間を経て1927(昭和2)年に正式に商品を発売するも、当時は職人による手作業だったため、1日約800枚という少量しか生産できなかったそう。さらに、これまでにない新しいお菓子であったため、神戸の街に浸透するのに時間がかかったという。

■戦争を乗り越え、看板商品としての道へ
ゴーフルは当時のお菓子としては高価であったことから、贈答品として少しずつ親しまれるようになった。しかしその頃、第二次世界大戦が始まる。

統制経済により材料調達がままならず、全商品製造停止という厳しい状況に陥った神戸風月堂。1945(昭和20)年に終戦を迎えると、翌年には店を建て直し、再びお菓子作りを始めた。2代目・吉川進氏は再興のため、代表商品を1つに絞り、それを全力で売り出すことに。

「2代目が入店してすぐの頃、当時新製品だったゴーフルの口当たりと香りの良さに衝撃を受けたそうです。その時胸に刻まれた『これは従来のお菓子とは一線を画し、必ずお客様から深く愛される新しいお菓子となる!』という思いは戦後も変わらず、ゴーフルが選ばれました」

そうしてゴーフルは、戦後に神戸風月堂の看板商品として再出発を遂げた。

■神戸土産の代表としての地位を確立
今も「外さないギフトとして重宝する」と声が寄せられるほど、販売当初から贈答用として親しまれてきたゴーフル。戦後は積極的な広告活動もあり、順調に売上を伸ばしていた。なかでも大阪髙島屋の「東西うまいもの会」など、百貨店出店は商品の存在を広く知ってもらう大きなきっかけになったという。

「当時、代々のれんを掲げる老舗は独自性を守るため、百貨店への出店はほぼありませんでした。そのなかで関西を中心とした各百貨店と取引を結び、数々の催事に出店しました。そして少しずつ『ゴーフルの神戸風月堂』として知っていただけるようになり、1953(昭和28)年には、商品名『ゴーフル』を商標登録しました」

この一連の流れを経て業界内でも注目を浴び、神戸土産として定着し始めたのだった。続けて、「包装紙の存在も神戸土産として愛される大きな理由になったと思います」と、松本さんは語る。

「2代目の吉川進の『神戸風月堂が全国へ行き渡ったとき、お菓子を通じて神戸の街を知ってもらいたい』という思いから、図柄で神戸の代表的建造物を描いた赤い包装紙を作りました。グラフィックデザイナーの山田芳信さんが手掛けたデザインは瞬く間に話題となり、1957(昭和32)年の神戸市の包装紙コンクールでトップの市長賞を受賞しました」

贈る側も受け取る側も神戸の存在が近く感じられるキャッチーな包装紙は、話題性も抜群だったはず。

それだけではなく、時代に合わせた商品展開もヒットの理由だろう。昭和50年代の喫茶店ブームを受けて、1977(昭和52)年にはコーヒー味の「コーヒーゴーフル」を販売。その後、顧客のリクエストで小さなサイズの「プティーゴーフル」や、80周年記念でフルーツ風味のゴーフルなどを生み出してきた。ブランドの知名度を広げながらも、常に顧客の心を鷲掴みにする商品企画に力を入れてきたことも、愛され続けてきた理由の1つなのだろう。

■95周年限定商品が登場!缶まで愛されるゴーフル
1970(昭和45)年の日本万国博覧会や1981(昭和56)年の神戸ポートアイランド博覧会の際はオリジナルゴーフルを発売するなど、特別なイベントには限定品が登場するゴーフル。もちろん誕生から95周年を迎えた今年も、食材の産地や品種にこだわり抜いた4つの限定フレーバーが楽しめる「95thアニバーサリーゴーフル」を数量限定で発売。

高価なマダガスカル産のバニラビーンズペーストを配合した「楽園のバニラ」、華やかな香りのペルー産のカカオを使用した「太陽のチョコレート」、厳選した豆と煎り方にまでにこだわった究極の「星空のモカコーヒー」、そしてジューシーな甘酸っぱさと香りが堪能でき、「社内で人気No.1のお味です」と松本さんも太鼓判を押す「おとめなストロベリー」の4種が楽しめる。

ゴーフル誕生当初はバニラとチョコレートの2種だったが、現在ではバラエティ豊かな味わいが楽しめるようになった。95年の間でゴーフルの楽しみ方も変化しているのだろうか?

「変わらず贈答品としてお選びいただくことは多いですが、今では紙箱タイプを普段のおやつとして購入される方もいます。神戸の風景やキャラクターとコラボしたミニゴーフルなどは、気軽なお土産としてもよく使っていただいてます。有名テーマパークや水族館でもオリジナルデザイン缶で販売されているので、ぜひ探してみてください」

コラボといえば「ハローキティ」や「すみっコぐらし」などの人気キャラクターのほか、「機動戦士ガンダム」や「鬼滅の刃」といったアニメ作品の缶も話題となった。思い入れのあるキャラクターの缶は、大切にコレクションしたくなるはず。コラボ缶をお目当てに購入する人も多いという。

また、松本さんのもとには、食べ終わったあとの缶についての話も多く寄せられるという。「『缶の大きさが丁度良いので、小物入れや裁縫箱に活用しています』『祖母の家でゴーフル缶を見つけて、お菓子だ!と喜んで開けたら、写真入れでがっかり…』『昔ゴーフル缶が宝物入れだった』など、缶の活用法に関するエピソードも楽しみながら読ませていただいています」

ちなみに筆者は子供の頃、お土産でもらったキーホルダーをゴーフル缶に入れて大切にしまっていた。食べ終わった後の缶にも思い出が詰まっているなんて、ずっと暮らしに寄り添ってくれていたお菓子だったんだなと、また懐かしくなる。

■さまざまな思い出を作る唯一無二のお菓子
「特に印象的だった反響は?」の質問には、「『おいしくて何十年も食べています』や『神戸風月堂のゴーフルが1番好き』といったメッセージはやっぱりうれしいですね」と、松本さん。

「特に『昔から母の好物。介護施設に入った今も贈ると喜んでくれる』というメッセージは印象に残っています。ほかにも『子供の頃、贈り物でゴーフルが届くとうれしかった』『兄弟で誰がどの味を食べるかじゃんけんをした』といった子供の頃の思い出のお話を寄せられることも多いですね。最近はSNSで『誕生日にゴーフルをおねだりした』『ゴーフルを見ると神戸での初デートを思い出す』『修学旅行で子供が買ってきてくれた』と、皆様それぞれ大切な思い出をお持ちなのだなと楽しく拝見しています」

来る2027年は、ゴーフル誕生から100年。「変えるべきでないところはそのままに、『もっともっと』とゴーフルの可能性を追求し、さまざまなおいしさを神戸の地から発信してまいります。いろんな商品やイベントを企画して、記念すべき100周年へ向けて盛り上げていきたいです。進み続ける神戸風月堂のゴーフルに、今後ともご期待ください」と100周年に向けて意気込む。

素朴なおいしさや話題性はもちろん、95年間も愛され続けているのは、大切な思い出がいつもそばに感じられる唯一無二のお菓子だからかもしれない。95周年の特別なゴーフルを、今こそ大切な人に贈ってみてはいかが?

取材・文=左近智子(glass)

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