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【漫画】現役パティシエが描く青春ラブコメが話題!「お菓子作り」と「執筆」の二刀流。原作者に聞く両立のコツ、作品誕生秘話

  • 2022年4月17日
  • Walkerplus

「もう誰も信じない!」信じた相手から何度も裏切られ、家族さえも信じなくなってしまった高校生・新庄真。唯一の励みは、趣味で投稿するWeb小説に感想をくれる「ポメ子」の存在だった。そんなある日、隣の席のヤンキー女子・篠塚あんりが真を見ながらソワソワしていて…?

Web小説を通して関わり合う男女2人の不思議な関係性が、SNSを中心に話題の作品「にゃん太とポメ子」。本作は、小説投稿サイト「小説家になろう」にて人気を集めた小説が原作となっている。

原作小説を執筆したのは、ペンネーム「野良うさぎ」で活動する男性。じつは彼の正体は、東京・神楽坂に店を構える有名パティスリー「アトリエコータ」のオーナーパティシエ・吉岡浩太さん!テレビ出演多数の人気パティシエである吉岡さんが、なぜ本作を書こうと思ったのか。吉岡さん本人に「にゃん太とポメ子」誕生の裏話を伺った。

■リゼロ、弱キャラ友崎くん…。人気パティシエが小説を書くまで
――パティシエである吉岡さんが、なぜ小説を書こうと思ったのか。きっかけを教えてください。

「2014年ごろ『Re:ゼロから始める異世界生活』を読んだとき、を読んだとき、続きがどうしても気になり、調べたらWeb版があるとわかりました。そこから小説投稿サイト『小説家になろう』という存在を知って、なろうの小説を読み漁りました」

――『リゼロ』がきっかけだったんですね!

「はい。その時は単行本一冊の分量も知らずに、ただ数十万文字、数百万文字も読める、ということに感激していたのを憶えています。海外に行っても、自分のお店を出してからも小説を読み続けるということは止めませんでした」

――そこから自分でも小説を書いてみるように?

「きっかけは『弱キャラ友崎くん』という作品を読んだことです。ちょうどその頃、大きな判断ミスをして鎌倉の店舗を閉めることになってしまい、一人で落ち込んでいて。でも『弱キャラ友崎くん』を読み終わると心が落ち着いていました。そこで、ふと今までの人生を振り返って、落ち込んでいる時や悲しい時でも、小説を読むと心が軽くなったことを思い出しました。それで、こんな気持ちにさせてくれた小説を書いてみたいと漠然と思いました」

――仕事で落ち込んでいた時に、小説が救ってくれたのですね!

「そうです。その後、『小説家になろう』に掲載されている小説をだいたい読み尽くしてしまったんですね。どれも面白かったのですが、もっと別の小説も読みたい、自分が求めている小説、心がドスンと重く痛くなるような小説を読みたいという気持ちが強くなっていきました。探したのですがなかなか『これ』というのが見つからない。だったら自分で書けばいい。自然と小説を投稿していました」


■パティシエと小説家の二刀流。両立のコツは?
――本業が忙しい中、小説はいつ書いているのでしょうか?

「仕事がある日は、朝一時間、休憩時間の三十分、夜に一時間書いています。休みの日は2時間〜5時間ほどです。定期的に作品を公開している期間以外は全く書きません。休むのも大事だと思っていますので」

――パティシエと小説執筆とは別のモチベーションがあると思います。まずはパティシエとしてのモチベーションを教えてください。

「パティシエという仕事は、お客様へ笑顔を与えられる仕事でとても励みになりますね。うちの店はカウンターデザートというお客様の目の前でデザートを作っていますので、お客様の様子もよく見えます。喜んでもらうことがパティシエとしてのモチベーションですね」

――小説執筆のモチベーションは?

「小説執筆のモチベーションは、面白いと思える作品を書くことですね。自分で書いて面白いと思える作品が出来上がるとテンションがあがります。読者の反応が良いとさらにモチベーションがあがります。結構シンプルですね」

――なるほど。小説執筆というのは、吉岡さんにとってどのような位置づけなのでしょうか?

「小説執筆は自分の生活の一部であり、安らぎでもあります。仕事をしている時、プライベートでジムへ行く時、温泉へ行く時、そういった時に小説のことは一切頭に無いです」

「逆に執筆のためにタブレットと向かい合っている時は、仕事のことも私生活のことも忘れて、小説しか頭にありません。物語の世界に没頭します。この切り替えが自分のストレスを軽減してくれていると思いますね」

■「お菓子作り」と「執筆」の相乗効果
――お菓子作りと小説執筆の相乗効果はありますか?

「相乗効果はあります。実際小説を書き始めてから、会社のシステムや労働環境がよくなりました。お菓子に関しては直接的な影響はありませんが、幅広い視野を得ることが出来ました。また、パティシエの経験(コンクールや過去の労働環境、海外の経験)は人生経験として小説に活かせていると思います」

「ですが、お菓子作りやパティシエを小説の題材にすることはないですね。仕事関連の小説を書くと、仕事のことを考えてしまい、あまり書く気が起こりませんので…(笑)」

――パティシエと小説家の“二刀流活動”をする中で、どのような「苦労」「問題」がありましたか?

「『小説家になろう』で定期更新しているときは、基本的に20日間は毎日投稿すると決めています。繁忙期(クリスマス、ホワイトデー)に重なると体力的に非常に厳しいです…。基本的にパティシエと“野良うさぎ”をきっちり分けて考えているので、二刀流ゆえの、という意味では問題はあまり起こりません。」

「ちなみに、小説を書いていること自体隠しているわけではないので、聞かれたら答えます。ただ、お店にいる時はパティシエの吉岡なので、そちらの仕事に集中していますが。あ、お店でサインを書いた時は恥ずかしかったです。これは『問題』かもしれませんね(笑)」


■『にゃん太とポメ子』の主人公は、スタッフの喧嘩から誕生!?
――本作『にゃん太とポメ子』の執筆を始めたきっかけを教えてください。

「実はあれは本能で書いたものです。本作の前の作品が恋愛ジャンルで1位を取れたのですが、いまいち自分の心に響かなかったので、思ったままに書いてみました。学生時代や思春期に心が苦しくなる時ってあるじゃないですか。他人にとっては些細なことでも、自分にとってすごく痛かったり。きっと誰もが感じたことがある経験だと思います。そんな気持ちを共感できるような作品を書こうと思いました」

――過去の経験から、家族さえも信じなくなってしまった主人公。このキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?

「ちょうどこの作品を書く前、うちのスタッフが友達と喧嘩をしたらしく『裏切られた、もう誰も信じない!』と言っていた言葉を聞いて、今作の主人公が生まれました。子供の頃に受けたトラウマっていうものはなかなか忘れられないものです。そんなトラウマを抱えた主人公が、本当に信じられる人を見つけられるか?という思いで書きました」

――本作の主人公はWeb小説を書いています。吉岡さんもWebで小説を投稿されていますが、ご自身の経験を作品に反映させた部分などはありますか?

「これはあまり反映していません。なるべく小説のキャラは自分とは別の人格という位置づけで書いています。とはいっても、自分も共感できる主人公にはしています。自分の過去に起こった出来事ではないですが、自分が感じたことがある気持ちを反映させている部分はあるかも知れません」

――具体的にはどのシーンでしょうか?

「第1話の主人公がクラスメイトから糾弾されるシーンです。あれは自分が小学校の頃、男友達とじゃれ合っていてひょんなことから泣かせてしまって、いきなりクラスメイト全員から糾弾された出来事を元にしています」

「実際、ああいった場面になると何も反論できず、誤解も解けず、何もできないんですよね。次の休み時間にはみんな普通に接してくれましたが、人の怖さを知った瞬間でした」

――主人公は小説の読者“ポメ子”の感想メッセージを励みにしています。吉岡さんもこのようなご経験はありますか?

「あります。感想は非常に励みになります。書くのを止めてしまった作品も、感想が来て再開したこともあります」

――過去の経験から人と関わることをやめてしまった主人公。この境遇に読者から共感の声があがっています。本作にはどのようなメッセージが込められているのでしょうか?

「この作品のテーマは『共感性』と『成長』です。同じような気持ちを経験したことがある人はたくさんいる、ということを知って欲しい。読者同士で共感性を感じて欲しいと思って書きました。人生は長いのでいろんな出会いがあります。その中で自分が本当に信じられる人がきっと現れると思います」

「拗れた人間関係も少しずつ歩みよれば違った世界が見えるかも知れません。誰も、何も信じられなかった男が徐々に成長していく姿を観てほしいです」

――小説がコミカライズされたときの心境を教えてください。

「単純に嬉しかったです!自分が小説を執筆し始めたのは、3年前の39歳の時なので、他の人に比べたら遅いと思います。そんな自分の小説がコミカライズされるなんて、人生いろいろあるんだなとしみじみ思いました。ですがこれでゴール、というよりも、商業の厳しいスタートラインに立ったんだ。という思いが強かったです。新しくお店を出す感覚に近いかもしれません。嬉しいけど、不安もある。そんな感じです」

――最後に、気になる今後の展開について、言える範囲で教えてください!

「コミックス版は遠足に向けての準備に入り、主人公とヒロインがどんどん仲良くなっていきます!お互い素直になれないけど、気になる存在。そしてだんだんと距離が縮まり…?」



取材協力:吉岡浩太 撮影=奥西 淳二

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