サイト内
ウェブ

【試し読み】「退屈な日常を破壊する都市伝説」CIAの闇が深すぎる/灯野リュウ(ミルクティー飲みたい)

  • 2022年3月29日
  • Walkerplus

2021年12月より、動画サービス「niconico」にて、ニコニコチャンネル「ミルクティーの裏側の世界」を配信中の都市伝説系YouTuber・ミルクティー飲みたい氏(灯野リュウ)。ここでは、彼が上梓した書籍「退屈な日常を破壊する都市伝説」の一部を紹介するので、ぜひチェックしよう。
※記事内容は「退屈な日常を破壊する都市伝説」から抜粋、再編集したものです。

■CIAの闇が深すぎる
スパイ映画みたいな場面に出くわしたことがある。

秋寒のある日。明け方の電車に乗った。企業の多くでリモートワークが推奨されていた時期で、同じ車両にほとんど人はいなかった。

電車が動きだし、何気なく前方をチラッと見たら、おそらく同車両で自分以外の唯一の乗客である海外の方が腕を組んで、席の仕切り板にもたれかかり寝ていた……。

スパイは世界中でリアルに存在している

電車で向かいに座っているその人は、頭には見たことのない英語のロゴの黒いキャップを深々とかぶっている。なんとなく見ていない素振りで、視界の隅で観察していた。

すると彼は寝ているようで、微妙に動きながら、少しずつ体勢を変えている。すると、いつのまにか、さっきまでなかったカードのようなものを左手に持っている。そのカードがなんなのか僕は一目でわかった……。アメリカン・エキスプレスだ。世界中で信頼されているクレジットカード会社でお馴染みの、アメリカン・エキスプレスだ。何度レコードショップのアルバイトでアメックスを切ったことか、間違えるはずがない。

この男は一体何をするつもりなんだ?小田急線に車内販売でもあると思ってるのか?

「あっ」とつい言いそうになった。その男は再び腕を組む動作の流れで、カードを席と仕切り板の間に挟むように落としたのである。おそらくわざと。そしてまた何事もなかったように寝る姿勢になった。深々とかぶったキャップの奥で、前方に座る僕の挙動もしっかり確認しているような気がした。

僕は目的地で電車を降りた。脳内ではまだあの男の行動の意味を理解しようと、どんどん妄想は膨らんでいく。例えば男はスパイで、別の男と取引をしたい。だがマークされているから相手と直接会うわけにはいかない。だから、◯月◯日◯時◯◯分◯◯線◯◯行き◯両目◯番目のドアから入って、左手前の席に例のブツを隠した。といった具合で取引が行われた瞬間だったのではないか……妄想は止まらない。あれがなんだったのかは、今でも謎だ。

長々と書いているが、スパイが世界中で何食わぬ顔をして暮らしているのは確かで、宇宙人やツチノコの類ではない。スパイというと異国の話のようだが、日本で馴染みがある言葉でいえば忍者だろう。忍者というと屋根の上から手裏剣を投げてくる人を想像するかもしれないが、主な仕事は情報収集や敵の内部に潜り込む隠密行動だ。

アメリカのCIA(中央情報局)も任務として扱っているのは情報だ。忍者のように外国に潜伏し、一般人のフリをして、重要な情報を持っている人に近づいて友だちになったり、情報を集めたり、メディアや世論をコントロールしたりするのが仕事である。

CIAに入ったら自分の身元を偽って生きなければならない

CIAとよく間違われるFBI(アメリカ連邦捜査局)は、アメリカ国内の大きな事件を警察などと協力して捜査する。いうなれば、警察の上位機関のエリート集団のようなものがFBIということになる。

もう一つ似たような組織があり、それがNSA(アメリカ国家安全保障局)。NSAはコンピュータのハッキングなどを得意とする集団で、アメリカ国防総省やアメリカ軍がNSAの上位にいることになる。

こんな話を聞いてワクワクしているあなたに、おすすめしたいのがCIAの求人だ。CIAは意外にも公式Twitterなどを使って、一枚の外の風景の写真から時間帯を当てるクイズなどを出し、そこからCIAの求人サイトに誘導したりしているので、優秀な人なら入れるかもしれない。

CIAに入るには知能や技能、健康以外にも必要なことがある。それは一年間に及ぶ面接を乗り越えることだ。一年といったら『情熱大陸』の密着よりも長いだろう。もちろん徹底的な身辺調査、身元調査が行われる。例えば家族であったり、幼稚園時代からの友人であったり、過去にさかのぼりその人たちとの関係を調べられてしまう。

かと思えば、一年ほどかけて、心理テストによって内面的な部分も徹底的に調べられる。精神的に不安定な人は迎え入れられない。それを経て初めて、CIAに入ることが許される。

入ったら自慢したいと思うだろう。しかし仮にあなたがCIAに入れたとしても、間違っても家族や友だちなどに自慢してはいけない。現実には、CIAとはまったく関係のない会社の社員として、自分の身元を偽って生きていかなくてはならないのだ。

アメリカにはCIAの局員のための特別な訓練をする秘密の施設がある。そこでは基礎体力作りから始まり、クルマや船などの高速運転、格闘技、捕虜になったときや拷問されたときのシミュレーション、クルマに爆弾が仕掛けられていたときにそれを察知する訓練、飛行機から飛び降りる訓練など、多岐にわたる訓練をするそうだ。

さらには嘘のつき方、説得の技術、尾行するだけではなく、尾行されたときの対処方法なども身につける。要はどれだけ普通の人になりすますことができるかが大切なので、現実には映画に出てくるような美人スパイはほとんどいないそうだ。美人というのは、美人というだけで目立ってしまうので、CIAには採用されづらいという。

諜報史上に残るCIAの大失態、チャップマン基地自爆テロ事件

CIAの過去のさまざまなミッションの中でも、特にこれはやばいと個人的に思っているものについて紹介したい。

アメリカの対テロ戦争における最大の敵といえば、アメリカ同時多発テロの実行犯とされるイスラム系の過激派組織アルカイダであり、アメリカはなんとしてもそのリーダーであるウサマ・ビン・ラディンやその幹部たちを捕まえたいと思っていた。

彼らがどこに潜伏しているかわからないという状況の中、ヨルダンの諜報機関にいる、元医者の優秀な男をスパイとしてアルカイダに送り込み、敵の情報を得る作戦を実行することになった。数カ月間に及ぶパキスタンでの諜報活動の中で、スパイはとうとうアルカイダのナンバーにあたる、アイマン・ザワヒリという男と接触するまでになった。

しばらく経ってスパイの彼から、ビン・ラディンやザワヒリに関する重要な情報が入ったので今からそれを持って帰る、という連絡が入った。アフガニスタンのホースト州に置かれたCIAのチャップマン基地の仲間たちは、英雄を出迎えるような体勢で待っていた。

彼が乗った赤いカローラが到着した。仲間でも一応セキュリティチェックがあるのだが、彼はポケットからなかなか手を出そうとしない。仲間が早くポケットから手を出せよと言った瞬間、ポケットの中のボタンがポチっと押され、爆弾が爆発した。

実は、その男は初めからアルカイダの二重スパイだったのだ。普通ならば絶対に入ることができないCIAの基地のど真ん中まで行き、そこで自爆テロを起こすのが目的だった。
いう。

そこにいたCIA局員七人を含む、数名が即死した。後からわかったことだが、CIAのほうから、赤いカローラが来たら、そのまま通していいという話になっていたようだ。これがアメリカの諜報史上に残るCIAの大失態といわれる、チャップマン基地自爆テロ事件である。

CIAが登場する映画の中でもっとも成功したといわれているのが、アカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ』である。滅多にないことだが、この映画はCIAの本部を撮影場所に使っていいと許可された映画である。CIAを持ち上げてくれたり、機嫌をとってくれたりするような映画に対しては、CIAのほうからバックアップしてくれたり、情報を教えてくれたりというように、持ちつ持たれつの協力関係になっているらしい。

その逆もある。CIAがポンコツに描かれる映画に関しては、怒ることもあるらしい。僕も大好きなマット・デイモン主演のあの映画もそうだったようだ。

近年、世界中の市街地には監視カメラ網が張り巡らされている。しかしいくらレンズが増えても人間の目でしか見抜けないものもある。僕の趣味は深夜徘徊だ。もう十年ぐらい深夜に外をうろうろしている。だが人生で一度も職務質問をされたことがないのだ。まるで危険そうには見えないらしい。それはそれで少し切ないものだ。

なお、ミルクティー飲みたい氏のニコニコチャンネル「ミルクティーの裏側の世界」は月1回、生配信(月額550円)。チャンネル会員になると、会員限定パートを含む生放送全編を見ることができる。次回は4月21日(木)19:00〜を予定。

※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.