東京2020オリンピック・パラリンピックを支えたパートナー企業の“知られざる裏側”を紹介するWEB動画『THE BACKGROUND』に、印刷大手の凸版印刷が登場。情報コミュニケーション事業本部 情報メディア事業部 クリエイティブ本部 GAC部 係長の中村仁美氏が出演し、大会サポートにおいて印象に残ったエピソードを振り返った。
■凸版印刷が誇る印刷技術を結集させて大会をサポート！
東京2020オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーである凸版印刷は、同社が誇る印刷技術を結集させ、大会を支えてきた。「アスリートや、ボランティアといった多くの関係者が使うICカード(アクレディテーションカード)、また、東京2020の観戦チケットなどを当社の偽造防止技術を用いて制作しました」と中村氏。ほかにも同社は、メダリストと入賞者に渡す表彰状や、大会を彩る公式アートポスターなどを手掛けてきたという。
表彰状のデザインは、オリンピックとパラリンピックの2種類があり、それぞれ金・銀・銅・入賞で8種類(4種類ずつ)を制作した。これは、岐阜県の美濃和紙の職人たちが手すきですいた和紙に特殊な箔を施したもの。
中村氏は、「今回使用した和紙は機械による生産ではないので時間がかかるのですが、大勢の職人にご協力いただき、ほぼ1年かけ、時間と手間をかけて作りました。やわらかい和紙に、熱い金型で金や銀のフィルムを圧着させてキラキラの部分を残すという“箔押し”は、箔をあまりうまく定着させることができないため、最初はなかなかきれいに乗らなくて大変だったんですけれども。やはりメダリストに『きれいな表彰状をお届けしたい』という想いがあり、現場の方々に何度も何度も相談して、テストを繰り返し、やっとあの形に仕上げました」と、表彰状制作時に苦労した点を振り返った。
■オリンピックはスポーツの祭典であると同時に「文化の祭典」
また、中村氏自身が印象に残っている印刷物として、公式アートポスターを挙げる。「そもそもオリンピックは、スポーツの祭典であると同時に文化の祭典でもあるんです。そんななか、20世紀の最初の頃から、大会を盛り上げるものとして作られてきていたのがアートポスター。今回は、19人のさまざまなアーティストが制作するというプロジェクトで行われ、印刷を当社が担当させていただきました」と、同プロジェクトの詳細を説明。アーティストの野老朝雄氏やデザインユニットのGOO CHOKI PARをはじめ、グラフィックデザイナーや漫画家が手掛けていたこと、また、彼らの手により、多種多様な原稿が入稿されたことなどを教えてくれた。
しかし、アートポスターの印刷にもさまざまな苦労があったそうだ。中村氏は「データで入稿された原稿は印刷しやすいのですが、例えば画用紙に描かれた原画や漫画の原稿はサイズ感も質感もさまざまなので、まずはそれらに適したスキャナーを選んで、丁寧にスキャンをしていくという作業から入ります。そして、スキャンしたデータは、本物と同じように色を合わせて印刷し、原稿と見比べて、近しいかどうか確かめなくてはいけません。例えば、美術家の森千裕さんの作品は、背景に鮮やかなイエローを用いているのですが、これは印刷だとなかなか再現できない色。どうやって再現するかというところで、当社のプリンティングディレクターという職種のメンバーと打ち合わせをしてテストを繰り返しました。最終的には森さんに満足していただけるような仕上がりにすることができ、制作メンバー一同ホッとしました」と、印象に残ったエピソードを語った。
■より多くの方に、印刷技術でグラフィックを楽しんでほしい
さらに中村氏は、力を注いできたスポーツ振興の取り組みについても説明。「当社にはパラリンピック競技に取り組むスポーツ専従社員が2名おりまして、そのことから特に、パラリンピックの認知や普及活動に力を入れてきました。また、視覚的に障害のある方でもピクトグラムが楽しめるようにと、印刷部分が膨らむ立体印刷でピクトグラムを印刷していました。これは特に依頼されたものではないのですが、より多くの方に印刷技術でグラフィックを楽しんでいただけたら良いなと思い、作って寄贈させていただきました」
そして最後に、「当社は1964年の東京大会でもアートポスターを刷らせていただきましたが、50年を経た今回も、アーティストの方々に寄り添う形で作品作りに貢献できたことや、公式アートポスターだけでなく、チケットなどでも作品の価値を上げられたことは、会社としてすごく誇りになる機会でした。ありがとうございました」と、同社にとっての東京2020大会を総括しつつ、東京2020オリンピック・パラリンピックのオフィシャルパートナーを務められたことに対し、感謝の言葉を口にしていた。
映像提供：NewsPicks Studios
素材提供：凸版印刷
