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カンパチは1日に塩ラーメン17杯分食べる⁉釣りガールのイラスト魚図鑑が大人気

  • 2021年12月16日
  • Walkerplus

コロナ禍でも“密を避けられるレジャー”として注目を集めているのが「釣り」。筆者の周りでも最近始めたという知人も多く、SNSで見る機会もグッと増加している。そんななか、かわいいイラストと分かりやすさから、釣り好きはもちろん魚好きからも注目を集めているのが、高本采実(あやみ)さんが描く「4コマ水産学」だ。

高本さんは2018年に近畿大学農学部水産学科を卒業。釣りガールとして釣り番組のリポーターや釣具販売店のイメージガールを務めるほか、アパレルなどの撮影モデルとしても活躍。さらには二級小型船舶操縦士・特定操縦免許や潜水士の資格も持っているほか、一般社団法人日本スポーツフィッシング協会(JSA)幹事兼政策も担当し、テレビやイベント、講演で、海や魚、釣りについてのレクチャーも行うスーパーウーマン。

SNSで連載中の「4コマ水産学」は、人気が人気を呼び、現在書籍化も予定されている。今回は「4コマ水産学」の誕生&制作秘話や、4コマに込められた思いなどを高本さんに聞いた。

■釣りをする、しないに関係なく海や魚のことを知ってもらえたら
「小さいころから家族旅行やお出かけでよく、海などの自然に触れていました。特に小学5年生の時に白浜へ遊びに行って泳いだのを機に、『海っていいな〜』と感じ、海の色・波の音が大好きになったのを覚えています」と高本さんは振り返る。

近畿大学へは、ただ海が好きという理由で進学を決めたという。「最初は魚のことが好きとか興味があるとか、特別そのようなことはなかったんです。大学で魚のことを勉強するのと並行して、釣りも趣味となり楽しんでいくなかで、気がついたら魚のことを好きになっていました。生態などを知れば知るほど、分からないことも増えたり、逆にこんな習性があるからこうやって釣れるのかと分かったり、釣りと共に魚のこともより好きになっていきました」

「魚の知識と釣りの実体験が重なり、『なるほど!だから○○な時は釣れて△△な時は釣れにくいんだ』『釣った魚を観察して、確かにここは○○になっている』などと、納得いくことが増えました。このおもしろい感覚をもっとたくさんの人と共有できたら楽しいなと思っていたんです」と高本さん。コロナ禍で自宅時間が増えたことで、ずっと抱いていた思いを形にしたらおもしろそうとひらめいたことが、「4コマ水産学」をSNSに投稿し始めるきっかけになった。

高本さんが釣ったこともあり、かつちょうどその時期にハイシーズンを迎えるハマチの「4コマ水産学」を描いてSNSに投稿してみたところ好評を得た。

「魚の生態も知りながら釣りをすることで、釣りがもっと楽しいものになれば幸いです。また、釣りをしたことがない、あるいはしない人でも、魚や海のことに興味を持ったり、身近な存在に感じていただけたりしたらうれしいな、子どもたちの将来の夢へのきっかけにも繋がればいいなという気持ちを込めて制作しています」

■専門知識をできるだけ分かりやすく伝える
分かりやすい、おもしろい、勉強になるというコメントが多く見受けられる「4コマ水産学」。高本さんは、専門分野に携わらないと知らなかった言葉とは何かを意識し、専門用語や一般的には聞き慣れない言葉を、いかに語弊のないようにかみ砕いて伝えられるか気を付けながら描いているそうだ。「私も経験があるのですが、魚の生態などに興味はあっても、専門用語が多いと読む気になれなかったり、見ても理解しづらかったりするので。『知りたいけど中身が難しい』を可能な限りなくすことを心掛けています」

近畿大学ではサメの研究やクロマグロのプロジェクトに取り組んでいたため、ほかの魚種についての知識は日々論文や本を読み勉強中。「4コマ水産学」では、毎回テーマとなる魚の論文を読み、それを元に情報をまとめて記載している。「イラストを見て、実際にその魚がかわいく見えたというお声も励みになります。また、小さいサイズ(の魚)はリリースしましょうという内容は一切イラスト内に記載していなかったのに、読んだ人から自発的に『小さいサイズは即リリース』などのコメントが付いたのも、とてもうれしかったですね。生態を知り、未来の魚や釣りのことを考えてくれたということなので」

■誰も見ないところまで精巧に描くイラスト
これまででもっとも反響のあったエピソードはクエ、ブリ、カンパチ。この3種は水温や摂餌(せつじ=エサを食べること)に関する内容となっているが、ブリとカンパチについては、身近なラーメンの例えを入れ、食事量を人間に換算すると一般的には無理すぎるラーメンの量(17杯分)を食べていることになるという衝撃のオチが。

「自分で気に入っているエピソード、というよりイラストはアオリイカやスズキ・ヒラスズキ。アオリイカは透明感・立体感の表現や色味にこだわりました。スズキ・ヒラスズキは黒系という同系色のなかでいかにカッコよさが表現できるか、またウロコ模様がカッコいい魚でもあるので、誰もそこまで見ていないのにウロコ1枚1枚かなり細かいところまで描きました(笑)」と、内容だけでなくイラストにも並々ならぬ気合いの入れようだ。「例えの工夫などの説明がうまく伝わり多くの反響をいただけるのは、やりがいを感じますし、皆さんと知識を共有できることがうれしいです」

ちなみに初期の作品は解説が標準語で描かれていたが、どのように4コマに情報を落とし込むかストーリーを考えていくなかで、高本さんが魚の説明をするのではなく、魚自身が自ら生態などを人間に教えるというスタンスに変形。すると自然に関西弁を話す魚たちになっていたという。「振り返り比較すると、後者の方が魚に対して親しみを感じられる気もしますし、イラストを描いていてより楽しいと感じています」とも。

■4コマを通して魚や環境への関心につながれば
生き物図鑑などではなく、あえて「水産学」と打ち出している点には、「イラストを通じて魚の生態などを知ったうえで、今後その生き物に対してどう向き合ったり接するかということを考えてもらえたら。海の環境をキレイにする、魚をおいしく食べる、リリースしてあげる、漁業に生かすなど2次的なことにもつながればいいな」という期待が込められている。

最近では「〜もっと知りたい海のこと!〜シリーズ」という新ジャンルもスタート。「SDGsもそうですが、年々さらに重要な課題となっている環境問題や漁業に関する内容を連載していこうと考えています。4コマ水産学魚シリーズを知らない方にも見ていただけたらうれしいです」と高本さん。ヘビーなテーマながら、絵のタッチを変えることでまた違った雰囲気となっていたり、わかりやすい内容で早くも人気を集めている。

■今後はYouTubeなどの動画コンテンツで「4コマ水産学」を発信!
書籍化が予定されている「4コマ水産学」。高本さんは「出版後、全国各地の本屋や釣具店や水族館などで『4コマ水産学』の講演会やイベントができたらいいなと思います。また年明けからYouTubeチャンネルを開設する予定なのですが、動画コンテンツでも『4コマ水産学』が発信できるよう準備中です」と意欲的だ。

「4コマ水産学」については当初、自分でも釣ったことのある魚に限定していたが、ネタが増えるとどうしても釣ったことのない魚も含まれてくる。より正確でリアルな情報を届けるため、まだ釣ったことのない魚は今後もどんどん釣っていきたいという。

「海の環境問題・魚資源量の減少・ゴミのポイ捨てマナーなどさまざまなことが課題となっていますが、私も皆さんもどんな形・熱量であれ、海や釣り、魚が好きだったり身近な存在になっていると思います。ダイビングや潜水士の免許を生かして、実際に海に潜り魚の観察をしたり根掛かりなどで海に残ってしまったルアーの回収清掃活動にも取り組んでいきたいです。また個人的にいま1番取り組みたいのが、海にやさしいルアーの開発ですね」と高本さん。

論文の熟読、初見でも伝わる言い換えができるよう些細な言語の意味まで調べたり、丁寧にこだわったイラストを描いて誕生する「4コマ水産学」。今後も“海が好き”という気持ちがたっぷりと込められた「4コマ水産学」から目が離せない!

取材・文=日高ケータ(エフィール)

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