サイト内
ウェブ

妊娠中に新型コロナにかかったら――。現役助産師が描いた「コロナ禍での出産」漫画が反響呼ぶ

  • 2021年11月20日
  • Walkerplus

人生の一大事である妊娠・出産。ただでさえ不安や心配の多い妊娠中に、新型コロナにかかってしまったら――。現役の助産師が描いたコロナ禍での妊娠を記した漫画が大きな反響を集めている。

作者のおたんこ助産師(@otanko_mw)さんは、助産師として働くかたわら、自身やフォロワーからの体験談を漫画としてブログやInstagramで発表。10代での妊娠を取り上げた「16歳の母」や、日本ではまだ少数派である無痛分娩についての漫画など、助産師ならではの視点からさまざまなテーマを取り上げて注目されている。

今年8月から掲載がはじまった「妊婦の私がコロナになった」では、臨月を迎えたある日、新型コロナウイルス陽性と判定された女性が出産を迎えるまでを描いている。新型コロナの受診・治療と並行しての胎児のケアなど、これまでになかった状況での妊娠についてやわらかなタッチで分かりやすく記している。作品のコメント欄には、作品同様コロナ禍での出産を迎えた人からの共感の声も多く寄せられた。

■「こんな考え方も」出産や育児、寄り添いたい悩みに向けて発信
妊娠、出産、育児など、幅広い題材で漫画を描く作者のおたんこ助産師さん。今回は漫画を描き始めたきっかけや作品を通して伝えたいことを訊いた。

――出産・育児を題材に漫画を描き始めたきっかけはなんだったのでしょうか。

「私は普段病院で助産師として働いていますが、仕事の中でお母さんたちや思春期の子供たちの悩みを聞ける時間や、手を差し伸べる範囲にはどうしても限界があります。『もっと早く気づいてあげられていたら』と悔しい思いをすることもあり、できれば、そうした人たちが深く悩む前に、毎日の生活の中で寄り添いたいと感じていました。そこで、元々絵を描くのが好きだったこともあり、妊娠・出産・育児のよくある悩みや思春期の性教育などのテーマを漫画という形で分かりやすく発信しようと思ったのがキッカケです」

――おたんこ助産師さんが助産師の仕事を選んだのはどういった経緯があったのですか?

「私は母が産婦人科で働いており、学校終わりや休みの日には、母の職場によく遊びに行っていました。そこで見た生まれたての赤ちゃんは、『生きたい!』というエネルギーに満ち溢れていて、子供ながらに胸が熱くなったのを覚えています。赤ちゃんという存在に魅了されて、助産師になりたいと決意しました。

赤ちゃんに魅了されて助産師を目指しましたが、助産師になってからは、赤ちゃんと同じくらい私を魅了する存在がありました。“頑張るお母さん”たちの姿です。仕事の中では、『ありがとう』と感謝されることも多いのですが、お母さんと赤ちゃん、そして家族の頑張りに、逆にこっちが元気をもらっているくらいです!こちらこそありがとうございます!」

――繊細なテーマを扱う上で、特に意識している点があれば教えてください。
 
「描いている漫画は、自分が助産師として働いている中で起こった体験談やフォロワーさんから頂いた体験談などの事実をもとにして描いています。『こんなことがあるんだ、ということを知ってほしい』という思いで描いていますが、注意喚起や啓発のためにリアルに描くことと、不安を煽りすぎないように描くことのバランスが一番難しいと感じている部分です」

――生命にかかわる事柄だけに、作品には時に賛否の分かれるコメントが寄せられることもあるかと思います。これまでに特に反響が大きかった、作者として印象に残った作品はありますか?

「思春期の学生さんの妊娠や人工妊娠中絶、出産の体験談を描いた『16歳の母』、『もうひとりの16歳の母』は、思春期の学生さん達や学校の先生、お母さんお父さん達からとても反響が大きかった作品です。現在の日本の学校教育では、カリキュラムで性教育の重要な部分は話してはいけないという縛りがあり、先生たちも性教育の必要性は感じていながらも、伝えられないというもどかしい思いをしておられます。家庭でも『反抗期も重なりどう伝えたらいいか分からない』という声を多くいただき、漫画にしました。

読んだ思春期の子供達からは『自分が信じていた避妊法だと思っていた方法には、間違っているものが多かった』『自分のことも相手のことも大切にするのが本当の愛情だと気づいた』などの感想が寄せられています。保護者や学校の先生たちからも『家庭や学校で漫画を資料として活用したい』という声が多く寄せられており、この漫画が性教育普及のキッカケになれれば嬉しいです」

――作品を通して、読者に伝わってほしいと思っていることがあれば教えてください。

「最近は、ネットですぐに検索できる社会になり、多くの人が安心も得ている一方で、大多数の意見というものに『自分や子供もこうしないといけないのだろうか?自分は間違っているのだろうか』と不安や焦りを抱える人も多いです。今はコロナ禍ということもあり、受診控えや周りの人たちとの交流が少なくなる中でネットの情報を信じるしかない方も多いのではないでしょうか。ですが、ネットというのは誤った情報があったり、多数派の意見が多く書かれたり、本当に自分の価値観と合っているものかはわからないなどの問題もあります。

立場が違えば、正解や不正解は形が変わります。例えば『母乳がいい』という意見はもちろん正解ですが、もしお母さんが精神的に辛くて、余裕がなく子供を可愛いと思えない時には、母乳を休憩して休息を優先することが、その親子には正解だったりもするのです。私は、その親子が納得して自分たちに合うものを選んでいけたら、きっと何だって正解なのだと思います。おたんこ助産師のマンガを読むなかで、『私はこれでいいんだ』『こんな考え方もあるんだ』という気づきを得て、お母さんやお父さんにホッとしてもらえたらな、というのが私の一番の願いです」

取材協力:おたんこ助産師(@otanko_mw)

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright (c) 2024 KADOKAWA. All Rights Reserved.