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片岡愛之助×今井翼「GOEMON」、見どころを徹底解説!

  • 2021年10月15日
  • Walkerplus

10月5日、人気公演『GOEMON 石川五右衛門』の舞台が、大阪松竹座で7年ぶりに幕を開けた。天下の大盗賊として知られる石川五右衛門が、実はスペイン人宣教師の血をひく男だったという奇想天外な設定で繰り広げられる物語だ。

2011年に徳島県の大塚国際美術館のシスティーナ・ホールで初演されてから、13年、14年、16年と再演を重ね、今年で10年。昨年はコロナ禍のため中止となり、10月にトークショー形式の中、役者たちが素顔に羽織袴姿で名場面を演じる『GOEMON抄(SHOW)』を特別上演した。

フラメンコを踊り、ド派手な立廻りで大暴れする五右衛門に片岡愛之助。幼い五右衛門にフラメンコを教えた父・カルデロン神父を演じるのは今井翼。3回目の『GOEMON』出演となる今井、霧隠才蔵との二役は松竹座で初お目見えだ。

今回は大阪で久しぶりのひと月興行となる歌舞伎公演。開幕前に東京・大阪のリモート会見が行われ、「お客様の安全を第一に、スタッフ共々細心の注意を払いながらお芝居ができるよう、しっかり身の引き締めて勤める思いでございます」と語っていた愛之助。会見のコメントを盛り込みつつ、舞台写真と共に『GOEMON』の見どころをお届けする。

【あらすじ】
豊臣秀吉(中村鴈治郎)による天下統一がなされたころ。キリスト教布教のため日本を訪れていたイスパニアの神父・カルデロン(今井翼)は、明智光秀の家臣の娘・石田局(いしだのつぼね/上村吉弥)と運命的な出会いを果たす。

2人は息子・友市に恵まれ親子3人で幸せに暮らしていたが、秀吉の切支丹禁止令のためカルデロンは国外追放に。その後、石田局も命を落とし、友市は天涯孤独の身となる。時は流れ、友市は天下の大盗賊・石川五右衛門(片岡愛之助)となっていた…。

【コロナ禍での演出】
『GOEMON』の見どころは、ケレン味あふれる演出とフラメンコの融合。これまでの公演では1階から2階席へハシゴを掛けて上ったり、客席を走り回ったり、客席との一体感が演出の大きなポイントだった。が、「今回は困りました。コロナ禍で客席の一体感はダメ、これまでの宙乗りもできない。大幅に変えないといけないのでいろいろ悩みました」と作・演出の水口一夫。「今回は人の心や情を強く打ち出すお芝居で、友情、親子の情、夫婦の愛に注意しながら新しい上方歌舞伎を作るつもりで『GOEMON』を作り上げていきたいと思います」
 
カルデロンの苦悩や幼い友市と両親の別れはたっぷりと見せつつ、物語は回り舞台を効果的に使ってスピーディに展開する。映像ならナレーションの部分を”口上”という形で時間経過を伝えたり、時代背景を解説するなど初めて観る人にもとてもわかりやすい。

【迫力のフラメンコシーン】
「僕はもともとフラメンコをやっていまして、2014年の『GOEMON』に初めて出演させていただくことになったのも、フラメンコのご縁からです。大阪松竹座に観に行かせていただき、奇想天外な物語でありながら歌舞伎のおもしろさ、魅力をとても感じた作品でした。なおかつ、愛之助さんの大ファンになり、終演後に楽屋にお邪魔してお話をさせていただきましたら、『一緒にやろう』とおっしゃってくださって」と、出演のきっかけを話す今井。

 フラメンコ舞踊・振付・演出の佐藤浩希が率いる舞踏団のダンスをはじめ、カルデロンは幻想の中で成長した友市とフラメンコを踊り、五右衛門は出雲の阿国(中村壱太郎)にフラメンコを教えて踊る。物語に巧みに盛り込まれたフラメンコ舞踊は違和感なく、その迫力の足音を劇場に響かせる。阿国とその一座の”ややこ踊り”も華やかで美しい。

【赤毛の五右衛門、大活躍】
「フラメンコは毎回毎回パワーアップしています。佐藤先生に仕込まれるんですが、そのたびにレベルを上げた振付をしてくださるので。翼くんは余裕な感じですけれども、僕らはついていくのが必死。そのたびに課題を与えられて、それに食らいついていくという感じです」と愛之助。

五右衛門は赤毛のかつらに、豪華で分厚い綿入れの衣裳、そしてフラメンコシューズという出で立ち。何10キロもの衣裳を身に付け、フラメンコを踊り、大立廻りに宙乗りまで。前回は「筋肉付きますよね」と笑っていたが、今回は初演から10年目となり「けっこう体の方もキツくなってきましたけど、それに伴ってトレーニングもして勤めます」と、5度目の再演を心から喜んでいる。

【アクション満載!】
花道での立廻りをはじめ、ハシゴを組んで、担いだ畳の上で、ふすまを使って…次々と繰り出されるアクロバティックなアクション。コロナ禍のため、客席上空を飛ぶ宙乗りは舞台上で。宙吊りのつづらの中から五右衛門が飛び出す、大古典の大技“つづら抜け”に観客は拍手喝采だ。すべて「お客様に喜んでいただくために、どんどん入れようと」(愛之助)

歌舞伎ならではの見どころを詰め込み、一気に見せる楽しさ満載の演出が『GOEMON』の真骨頂。囃子方も演奏に効果音に大奮闘。コロナ禍の制限に全力で挑む全員の気迫とそのエネルギーが、舞台から客席へと押し寄せる。

【歌舞伎通もニヤリ】
舞台がせり上がり、南禅寺の楼門の上で発する石川五右衛門の名ゼリフ「絶景かな、絶景かな」。歌舞伎『楼門五三桐(さんもんごさんのきり)』の名シーンは、もちろん『GOEMON』に取り込まれている。ほかにも有名な歌舞伎の名セリフが巧みに散りばめられ、歌舞伎通には楽しさが増す。

「この五右衛門は、初めて歌舞伎をご覧になられる方にもわかりやすく、普段から歌舞伎をご覧になられているお客様にも、実はいろんなお芝居のパロディがちょこちょこ入っていますので、『あ、あれはあの芝居のパロディなんだ』と見つけていただけると幸いです」(愛之助)

ただ、「絶景かな、絶景かな」と決まったところで、通常なら「松嶋屋!」と掛かるはずの大向こうの声が、ない。声掛けの禁止によって、大向こうの声がいかに歌舞伎の楽しさと一体かを思い知らされる。名セリフのたびに心の中で声を掛け、いつも以上の拍手を送る。

【今井翼、二役で出演】
「2回目の出演の際には、愛之助さんから『今度はカルデロンだけでなく、歌舞伎の芝居もやってみないか』と、僕にとってあり得ないほどのお話をいただき、身の引き締まる思いの中、『是非やらせていただきたいです』とお応えしました」(今井)

16年の新橋演舞場に続き、今回2度目の霧隠才蔵役で松竹座に初登場。白塗りに七五調のセリフ、りりしい歌舞伎姿からオーラを発し、再会した幼なじみの五右衛門の危機を救う。

「前回初めて歌舞伎のお芝居をやらせていただきましたが、毎日怖くて。フラメンコは僕自身がライフワークとしてやってきていることですが、つねに鍛錬されて日本の伝統芸能を守られている方々の世界に僕を入れてくださるわけですから、とにかく歌舞伎のお芝居、型、そういうことに向かって行く部分では必死です。でも、大好きな愛之助さんや吉弥さんと一緒に舞台ができている。日本人としての喜びはものすごくあります」

【メッセージ】
「今回はより歌舞伎味あふれる感じになりました。楽しみにしていただきたいと思います。今、こういう世の中で舞台を開けさせていただくことが大丈夫か、しっかり話し合い、感染対策も徹底し、安心安全で上演させていただくということになりました。私も安心して勤めさせていただきます。どうぞ安心して観に来てくださいませ」(愛之助)

「とにかく僕は皆さんについていくことで必死です。こういう状況下で、舞台に立てるありがた味や生きていられることなど、いろいろな貴いものを感じることができる時代だと思っています。僕のような者が歌舞伎に出演できることも当たり前ではありませんし、なおかつ表現者というのは、お客様の前で表現できることが生かされる時間だと思っておりますので、いろいろな対策をきちんと取り、思い切ってやらせていただきます」(今井)

STAGE
十月花形歌舞伎『GOEMON 石川五右衛門』

日時:~10/27(水)まで 昼の部11:00、夜の部16:15
会場:大阪松竹座
作・演出:水口一夫
出演:片岡愛之助、今井翼、中村壱太郎、中村種之助、上村吉弥、中村鴈治郎
料金:一等席(1、2階)1万4000円 二等席(3階)5000円
問:会場 電話:06・6214・2211
歌舞伎公式HP「歌舞伎美人(かぶきびと)」:https://www.kabuki-bito.jp


取材・文=高橋晴代

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