東海エリアのユニークな取り組みや話題を徹底取材する「街の仕掛け人に直撃！」が東海ウォーカーで連載中。第5回はオリジナリティあふれるキャンプ施設が続々とオープンしている三重県いなべ市の取り組みに注目。住民の目線に立って進められている同市のアウトドア施策。仕掛け人である三重県いなべ市役所農林商工部商工観光課 兼 企画部政策課 佐藤祐孝さんに、その舞台裏を聞いてみた。
■キャンプ場が災害の備えに！独自のコンセプトが話題
三重県の最北端に位置し、豊かな自然環境を有するいなべ市。名古屋から車で約1時間というアクセスのよさもあり、アウトドアが楽しめる街として人気だ。また2020年からは「SDGs未来都市」(※)として、森林資源を活用した持続可能なまちづくりに取り組んでいる。
そんな同市で、独自のコンセプトを掲げたアウトドア施設が続々登場している。「当市はこれまで子育て支援などの行政サービスで高い評価を受けてきました。今後は観光という視点からも街を元気にしたい。そこで市内の約6割を占める森林を生かしたアウトドア事業に力を入れることになりました」(佐藤さん)
今年7月には、愛犬とキャンプが楽しめる一方で、防災の役割も担う「やまてらす」が開業した。「災害時にペットとの同行避難が難しいという問題があります。そこからヒントを得て、場内に設置したキャンピングトレーラーを、支援車や避難所として稼働できるように整備しました」(佐藤さん)
平常時はレジャー利用、非常時には住民の安全に寄与する施設となっている。
※SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標。達成に向け優れたSDGsの取り組みを提案する地方自治体を国が「SDGs未来都市」として選定。いなべ市は2020年度に「SDGs未来都市」および「自治体SDGsモデル事業」に認定された。
■環境先進国デンマークとのグローバルなプロジェクト
さらに2022年春には、デンマーク発の人気アウトドアブランド、ノルディスクが手掛けるキャンプ場「Nordisk Hygge Circles UGAKEI(ノルディスク ヒュッゲ サークルズ ウガケイ)」がオープン予定だ。「その開設地である宇賀渓は鈴鹿国定公園の中に位置するため、開発には規制があります。加えて地元住民からも、この自然をそのまま守りたいという声が多く寄せられました」(佐藤さん)
元の地形を生かしつつ、樹木を極力残しながら整備を進めたいという希望が、SDGs達成度が高く、環境先進国でもあるデンマークおよびノルディスクの考え方と一致したという。デンマーク大使館とも連携して進める一大プロジェクトで、北欧の世界観をとことん満喫できる施設になりそうだ。
同市のアウトドア施策は、いずれも住民の目線に立って進めているのが特徴。「市外から観光客に来ていただくのももちろん重要ですが、まずは住民に『いなべって、いい街だね』と感じてもらいたい。そんな思いが原動力になっています」と佐藤さん。地元愛にあふれたまちづくりに今後も注目したい。
■今回の仕掛け人はこの人！
1999年員弁町役場(現いなべ市役所)入庁。2013年より同市の総合戦略の策定や行政改革の推進を担当。2021年4月より農林商工部商工観光課を兼務。観光を切り口に地方創生や地域活性化を進める。
■いなべ市のアウトドアへの取り組み
■話題の北欧アウトドア施設が2022年春にオープン予定！
2022年春の開業を目指し、いなべ市、ノルディスク、デンマーク大使館が連携して進める「Nordisk Hygge Circles UGAKEI」。Hygge(ヒュッゲ)をテーマに、フリーサイトや常設テントエリア、宿泊キャビン棟を有する。
■愛犬家にうれしいキャンプ場を災害時には避難所として活用
新しい防災の形として注目される「やまてらす-FUJIWARA OUTDOOR LIVING-」(三重県いなべ市藤原町鼎728-2)。
■市内縦断スタンプラリーなど滞在型の企画が進行中！
いなべ市内のアウトドアに関するスポットを巡り、ノルディスクのキャンプセットなどが当たるスタンプラリーを2021年12月28日(火)まで開催中だ。
詳細はhttps://www.inabe-goaround.jp/を確認しよう。
※新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。
