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【漫画】10年モノの夢の値段は3万円。奇妙な読後感がクセになる!

  • 2021年6月29日
  • Walkerplus

ミヤギトオル(@mitume333)さんがTwitterやブログで配信している掌編漫画「物語断片集」。日常の中に非日常が入り混じり、ハッピーでもなくバッドでもないエンドで、読んだ後は奇妙な後味で考えさせられる作品ばかりだ。今回はミヤギさんにインタビューし、漫画への思いなどを聞いてみた。

■ハッピーかバッドか、不思議な読後感が読者を魅了する
美術大学を卒業後、喫茶店でアルバイトをしながらイラストやアニメーションなどの制作活動をしていたミヤギさん。なかなか思うようにいかず、一度はテレビ局に就職したものの、2015年頃からSNSで4コマ漫画の投稿を開始。思いのほか反響があり、ウェブマガジンや雑誌などで漫画を執筆するようになり、現在はフリーランスで漫画やアニメ、イラスト制作の仕事をしている。

「日常の中の非日常を描いた“奇妙な味”と呼ばれるジャンルの短編小説やSF小説が好きで、4コマ漫画を描き始めました。フリやオチがある一般的な作品ではなく、不思議な読後感が残る4コマ漫画を目指して制作しています。漫画の終わり方は、余韻を残すためにハッピーかバッドか、明確にしないようにしています」とミヤギさん。

例えば、読者から「身近で心に刺さりました」「強烈な既視感を覚える」などとコメントがあった、漫画家になる夢を質屋に入れる青年の話「夢を買い取る店」。質屋の老人が10年モノの“漫画家志望”の夢を見て「いいのか?あと少しで芽が出るかもしれんぞ?」と言うと、「いいんです…就職するんで」と青年。その表情はどこか虚ろで、諦めのオーラが漂っている。

スーツを買うという青年に老人が渡した金額は3万円。青年は自分に言い聞かせるように「これでよかったんだ…これで」と言う。もう少し頑張っていたら漫画家として芽が出ていたかもしれない、でももしかしたら、就職してもっと自分に合った仕事に出会えるかもしれない。何が正しいのか、3万円の夢が高いのか安いのか、誰にも分からない。夢に値段なんてナンセンスだと、考える人も少なくないかもしれない。夢を追い続けるのも諦めるのも、未来を変えられるのは自分だけ。この青年は諦めたかもしれないが、行動を起こしたこの時、きっと人生が動き始めたに違いない。

■短編でも捉え方や考え方は千差万別
月や星など“空”がテーマの作品が多いのも、ミヤギさんの特徴。“空”がテーマの漫画は読者からも好評で、不気味な満月を見て見ぬふりする人たちの話「満月」には「星新一のショートショートみたいで好きです」や、春の星座を刺繍する仕立て屋の話「春の星座」には「素敵なお話ですね」などと、コメントも多く寄せられている。

ミヤギさんは「天文などをモチーフにしていた作家の稲垣足穂(いながきたるほ)さんや、その影響を受けて漫画や絵本を描かれているイラストレーターのたむらしげるさんの作品が好きだからです」と話す。

今後の目標を尋ねると、「4コマの中になるべく大きな物語の広がりを表現したいと思っています。いつも悩みながら試行錯誤していますが、何度も読みたくなるような作品を描き続けたいです。最近気になっているエッセイ漫画にも挑戦してみたい。いつか本として出版することを目標に頑張ります!」と語ってくれた。

生きていく中でふとした瞬間に感じるようなことを、ちょっとだけ現実と離れた世界観とストーリーで展開する作品の数々。共感できるだけではなく、俯瞰視点で人生を見つめ直すきっかけになるかもしれない。

取材・文=重藤歩美(関西ウォーカー編集部)

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