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“悩み事”は思考力や判断力を低下させる?悩みを紙に書きだす「エンプティ・チェア」法で早期解決を

  • 2020年9月27日
  • Walkerplus

悩みが生じると、そのことばかり考えて頭がいっぱいになる。そんなときはいったん紙に書き出し、頭の中から追い出しましょう。この記事では、その書き出した悩みに、あなた自身が相談に乗る「エンプティ・チェア」法を紹介します。

※本稿は、星渉『神メンタル 「心が強い人」の人生は思い通り』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

頭の中で悩み事が渦巻いたり、感情をコントロールできなかったりするのは、大きな苦しみです。また、他者とのコミュニケーションが苦手というのも、とくにビジネスの世界では致命的な欠点となります。一見、別々のものに感じられるこれらの問題だが、突き詰めると、すべてがメタ認知能力と関係している。『神メンタル「心が強い人」の人生は思い通り』の著者・星渉氏は、メタ認知能力は簡単な方法で鍛えることができると言います。

悩み事があるとき、やっかいなのは、頭が悩み事に支配されてしまうことです。いつまでもクヨクヨと悩んでいるうちに、悩み事が頭を埋め尽くし、思考力や判断力が低下してしまう。そんな経験のある人は多いのではないでしょうか?

私のところへ相談に来る方も、経営者やコンサルタントという、普段は他人の相談に乗り、悩みや問題を解決する立場の人が多いのですが、そんな“問題解決のプロ”でさえ、自分自身の悩みに対する答えは、なかなか出せないのです。

なぜ、「自分の問題」となると、いつまでも悩んでしまうのでしょうか?

それは「頭の中で考えようとしているから」です。

私たちの脳には、「1つの問題を何度も何度も頭の中でリピートするという癖」があります。そのために、1つ悩みができると、一日中その1つの悩みを頭の中でリピートさせ、まるで何十個も何百個も悩みがあるように感じるようになってしまうのです。悩み事が頭から離れず、ストレスを感じると、脳内でのセロトニンの分泌が減り、悩みから不安を生み出してしまうことにもなります。

頭の中で考えていては、悩み事からなかなか解放されません。裏を返せば、いつまでも悩み続けないためには、「頭の中で考えるな」ということになります。

それでは、悩み事があるとき、どこで考えればいいのでしょうか?

頭の“中”がダメなのであれば、頭の“外”で考えるしかありません。

■紙に書き出すことが悩みを解決する第一歩
頭の外で考えるとはいささか抽象的な表現ですが、具体的には「紙に書く」ということです。

今、あなたに悩み事があるのであれば、1枚の紙に、悩み事をすべて書き出してみましょう。そうやって書き出してみると実感するのですが、悩んでいることは、実際はとても少ないことがわかります。

悩み事の数自体は少ないのに、なぜ、悩み続けているかといえば、前にも述べたように、頭の中で悩みがリピートしているからです。このことを理解すれば、あなたの気持ちはかなり楽になります。

紙に悩み事を書き出すだけでも悩みは軽減しますが、悩みを解消するためには次のステップに進みます。書きだした悩み事に対して「どうしたらいいのか?」という方策を、紙と相談するようにして書き出すのです。

すなわち、相談をするあなたと、その相談にアドバイスを与えるあなたの会話を紙に書き出すということであり、具体的には以下のような形となります。

【相談をするあなた】
「転職をしたいと思っているんだけど、なかなか決断ができないんだよね」

【アドバイスを与えるあなた】
 「なんで転職したいと思っているの?」

【相談をするあなた】
 「今の仕事にやりがいを感じられなくて。しかも、仕事が終わる時間も遅いし……」

【アドバイスを与えるあなた】
 「転職をするとしたら、どんな仕事がいいとか、決まっているの?」

【相談をするあなた】
 「まだ、とくに決まっていないけれど、やっていて楽しくて、夜も遅くない仕事がいいかな」

【アドバイスを与えるあなた】
 「そこまでイメージができていて、なんで決断できないのかな?」

【相談をするあなた】
 「決断できていないんじゃなくて、具体的にはどこの会社がそうなのかまで探していないのかもしれない」

【アドバイスを与えるあなた】
 「いきなり決断するのではなく、まずは候補となる会社をいくつか探してみたら?」

【相談をするあなた】
 「たしかに。転職してもいいと思える具体的な会社を探してみるよ」

【アドバイスを与えるあなた】
 「いつまでにいくつ候補を見つける?」

【相談をするあなた】
 「2週間後までに3社、候補を見つけてみるね」

このように紙面上で会話を行うことで、状況を客観的に捉えて、自分自身に対してアドバイスをすることができます。これが頭の中だけだと主観的になり、自分のできない理由や感情が優先されてしまい、なかなか解決策や今の問題点を見つけることができないのです。

■イスに座り、もう一人の自分にアドバイスを与える
この「紙面上の会話」は、容易に客観的になれるという意味において非常に有効ですが、これ以外にも、悩みが驚くほど早く解決する「頭の外で考える方法」があります。それは「エンプティ・チェア(空のイス)」という方法です。

エンプティ・チェアは次のようにして行います。

・紙にあなたの悩みを書き出します。
・イスを2脚用意し、隣り合うように並べ、片方に座ります。
・もう片方のイスには、悩みを書き出した紙を置きます。
・紙を置いたイスには悩んでいる自分が座っているとイメージして、アドバイスをします。

「紙面上の会話」と似たやり方ですが、それが相談をするあなたと相談にアドバイスを与えるあなたの会話なのに対し、「エンプティ・チェア」では、あなたはアドバイスをする側に徹します。そのことによって、自分の頭の中ではいっこうに考えがまとまらなかったことでも、客観的な判断による解決策を見つけやすくなるのです。

「紙面上の会話」と「エンプティ・チェア」が似ているのは当然であり、両者ともいわゆる「メタ認知」の力を使っています。「メタ認知」とは、認知心理学の用語で「自分自身の認知活動を第三者の客観的視点から理解し、コントロールする力」というものです。つまり、「自分を客観的に観察する力」であり、イメージとしては、自分を、“より高いところ”から観察するようなものです。

このメタ認知能力が優れていると、自分の感情のコントロールも上手になります。自分自身を客観的に観察することで、今起きていることを冷静に捉えることができ、冷静な状態でいられるようになるのです。

アメリカの大リーグで活躍してきたイチロー選手は、インタビューの際に「自分の斜め上にはもう1人の自分がいて、その目でしっかりと地に足がついているかを見ている」と、メタ認知能力の高さをうかがわせる発言をしています。

自分自身を客観的に観察する力である「メタ認知能力」は、まさに“達人の感情コントロール方法”ともいえるでしょう。

自分を客観視するということは、欠点や弱みも含めた自分のありのままを知るということです。場合によっては、そのことによって自信を失うかもしれないと考える人がいるかもしれません。

しかし、その心配は杞憂です。メタ認知能力のある人は、総じて自信を持っています。自信とは、自分を知ることによって得られるものです。言い換えるなら、自信を持つためには、メタ認知能力が不可欠なのです。

■メタ認知能力はビジネスのための重要なスキル
それでは、メタ認知能力を鍛えるためには、どうすればいいのでしょうか?

それには大きく分けて2つの方法があります。

1つ目は、イチロー選手のように「自分自身を上空から客観視すること」を習慣づけたり、先ほどの「紙面上の会話」や「エンプティ・チェア」を行ったりするなど、日常でメタ認知を意識し、活用するという方法です。これを繰り返すことで、メタ認知を行う癖がつきます。

2つ目は、メタ認知能力を高めるためのトレーニングをすることです。「自分自身を上空から客観視する」といっても、なかなかイメージできない人もいることでしょう。しかし、「自分を客観的に見る」簡単な方法があります。

それは、「鏡に映る自分を見る」ことです。鏡に映る自分は、自分であって自分ではありません。“もう1人の自分”と捉えましょう。

鏡の中の自分に対して話しかけると、あなたの脳は「鏡の中の自分は、自分だけど自分ではない」と認識します。これを繰り返すことで、自分自身を客観的に観察するという感覚を身につけることができるのです。鏡の中の自分に、「今日もいい表情をしているね!」「今日もよく頑張った!」「無理してない?」などと話しかけることで、あなたのメタ認知能力は鍛えられます。

メタ認知能力を向上させると、悩み事からは解放され、感情もコントロールできるようになります。そして、もう1つ、メタ認知能力が重要な点は、メタ認知能力を持っているとコミュニケーションを良好に保てるということです。

他者とのコミュニケーションがうまくいかない人の典型は、会話において、相手の考えや周囲の状況を無視して、自分の主張を押し出す人です。たとえば、雑談の際、話題にするのは自分が興味を持っていることであり、相手がその話題に興味を示さないとしても、お構いなしで話を進めます。当然、相手は辟易するのですが、本人は相手が迷惑がっていることにすら気づきません。

なぜ、このような事態に陥るかというと、それは本人がメタ認知能力を持っていないからです。自分がいま、どのような状況にあるかがわからないため、自分勝手な行動に終始するのです。

職場の上司や同僚、取引先の相手などを思い出してみてください。いつもどこか浮いていたり、周囲から鬱陶しく思われたりしている人がいませんか?

思い当たる人がいるとしたら、その人はメタ認知能力が劣っているはずです。メタ認知能力は、ビジネスを円滑に進めるための、重要なスキルでもあるのです。

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