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大雨災害につながる線状降水帯 命を守るために知っておくべきこと

  • 2023年6月29日
  • tenki.jp

ここ数年、毎年のように発生する大雨災害のひとつである、線状降水帯について解説します。線状降水帯の定義やメカニズム、線状降水帯が発生した際にどのような危険があるのか、線状降水帯発生時どのような行動をとればよいのかまで、線状降水帯から身を守る方法を学ぶことができます。

いつどこで発生してもおかしくはない線状降水帯について、自分や周りの大切な命を守るためにも、日ごろから知識を深め、備えをしておきましょう。

線状降水帯とは

線状降水帯とは、大雨災害をもたらす気象現象のことをいいます。同じ場所に雨雲が次々と発生・通過したり、停滞したりしている状態のことで、雨雲レーダーなどでは線状に伸びた降水域が同じ場所に停滞しているように見えます。
線状降水帯が発生すると、同じ場所に猛烈な雨が集中的に長く降ることから、大雨災害が発生しやすくなります。

線状降水帯の定義やメカニズムについては、この記事の最後に記載していますので、興味のある方はぜひご確認ください。


線状降水帯が発生しやすい地域

過去の事例をみると、線状降水帯は西日本から九州にかけての地域で多く発生しています。これらの地域は、積乱雲の元となる暖かく湿った空気が入り込みやすく、その後積乱雲が次々と列を連なる「バックビルディング型」になりやすい、という地形の特徴があるためです。

ただし、直近だと2023年6月に静岡県、愛知県、三重県で線状降水帯が発生した事例や、2022年8月には新潟県や山形県で特別警報が発表されるような線状降水帯が発生した事例があります。どの地域でも線状降水帯が発生する可能性はありますので、まだ線状降水帯が発生したことのない地域にお住まいの方も油断は禁物です。

線状降水帯の災害事例

線状降水帯による災害事例はいくつかありますが、今回は、線状降水帯がより注目されるきっかけとなった「平成29年7月九州北部豪雨」と、昨年発生した台風に伴った線状降水帯で災害が発生した「令和4年台風第15号による大雨」の2つの線状降水帯発生事例を振り返ります。

■平成29年7月九州北部豪雨
2017年7月5日から6日にかけて、活発化した梅雨前線の影響で、九州北部を中心に局地的に非常に激しい雨が降りました。梅雨前線に向かう下層の暖湿気流と、上空の寒気の流れ込みによって、大気の状態が非常に不安定になり、積乱雲が発達して線状降水帯を形成し、継続して同じ場所に強い雨を降らせたことが原因でした。
2日間の総降水量が、福岡県朝倉市朝倉で586.0ミリ、大分県日田市日田で402.5ミリを観測するなど、福岡県や大分県で記録的な大雨となりました。この大雨により、5日17時51分に福岡県、19時55分に大分県に大雨特別警報が発表されました。また、土砂災害や堤防の決壊などによる浸水害が発生し、死者37名、行方不明者4名の人的被害や家屋の倒壊など、多数の甚大な被害が発生しました。
同年の新語・流行語大賞に「線状降水帯」がノミネートされました。この頃から本格的に線状降水帯が注目され始めたと思われます。

■令和4年台風第15号による大雨
2022年9月23日に発生した台風15号「タラス」は、台風としてはあまり発達することはなく、暴風域を伴わなかったものの、23日夕方から24日明け方にかけて、静岡県など東海地方で猛烈な雨や非常に激しい雨が降り、線状降水帯が発生するなど記録的な大雨となりました。
24日午前6時までの24時間降水量の日最大値は、静岡市で416.5ミリ、静岡市鍵穴で405.0ミリ、藤枝市の高根山で403.0ミリ、森町三倉で360.5ミリと、いずれも観測史上1位の値を更新しました。静岡市の9月の降水量の平年値は280.6ミリですので、この雨で9月1ヶ月分にあたる降水量の約1.5倍の雨が降ったことになります。
線状降水帯は、梅雨前線に伴って梅雨時期に発生・注目されることが多いですが、台風接近時も線状降水帯が発生することがよくわかる事例です。

線状降水帯から身を守るためには

線状降水帯から身を守るためには、普段からの大雨への備えに加え、線状降水帯発生時には大雨に関する情報を適切に収集し、状況を把握することが大切になります。

気象庁は、心構えを一段と高めてもらうことを目的に「顕著な大雨に関する気象情報」として線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけを2022年6月から行っています。大雨が予想される際に発表される気象情報に、線状降水帯発生の可能性について「〇〇地方」といった表現で、対象になる地域区分を記述して言及しています。
気象庁から発表される情報は毎年見直し・更新がされていて、「顕著な大雨に関する気象情報」も、2023年5月からは、実際に発生が確認される前である予測の段階で発表するようになりました。これにより、これまでよりも最大で30分早く情報が発表されることになりました。

気象庁が発表する「顕著な大雨に関する気象情報」は気象庁のHPから確認することができます。
また、テレビやラジオ、tenki.jpなどの各気象会社が運営する天気予報サイトやアプリでも、情報を発信しています。中には、気象予報士が、今後の線状降水帯の発生の見通しや今とるべき方法を解説している記事もありますので、常に最新の情報を確認するようにしてください。

線状降水帯が発生したらとるべき行動

線状降水帯が発生している場合は、すでに土砂災害や洪水による災害発生の危険度が、急激に高まっている状態です。
自治体からの避難に関する情報を確認のうえ、早めの安全確保を心がけましょう。すでに避難することが危険な場合は、家の中の、崖や川から離れたできるだけ高い所で身を守るようにしてください。ただし、土石流が想定される箇所においては、危険な区域の外へ退避する、もしくは堅牢な建物の高層階に避難してください。
土砂災害は、雨が弱まったり止んだりした後でも発生する場合があります。土砂災害の前兆は、斜面のひび割れ、異様な音・におい、湧き水が止まる、濁った水が噴き出すなどです。このような前兆を見つけた時には、すぐに斜面から離れてください。
河川の増水・氾濫も大雨のピークが過ぎた後に発生する場合があります。雨が弱まっても川には絶対に近づかないでください。

詳しくは、以下のページをご確認ください
・大雨が発生したときは
https://tenki.jp/bousai/knowledge/532ba20.html
・大雨で避難するときは
https://tenki.jp/bousai/knowledge/541fc60.html

普段からの線状降水帯への備え

実際に線状降水帯や大雨災害が発生してからでは、できることが限られてしまいます。普段から備えておくことが大切です。

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