世界最大のエネルギー・化学企業の一つ「アラムコ・アジア・ジャパン」は、このたび、沖縄県内でサンゴの養殖活動をする2団体に助成金を提供することを決定。6月22日、名護市の万国津梁館にて、「サンゴ養殖移植助成事業始動報告会」を開催した。
アラムコ・アジア・ジャパンは、2010年から、日本政府の支援の下、うるま市にある沖縄石油基地で原油貯蔵を開始。主に東アジア向けの中継・備蓄基地として利用され、緊急時には日本向けに優先的に供給されることになっている。
そのアラムコ・アジア・ジャパンは、近年、沖縄県近海のサンゴ礁が危機的状況に瀕していることを受けて、2011年に「アラムコ沖縄サンゴ礁保全基金」を設立、沖縄県内でサンゴの保全活動をする団体に対して助成事業を行っている。
今回助成対象となったのは、一般財団法人沖縄観光コンベンションビューロー(ブセナ海中公園)とザ・テラスホテルズ株式会社が共同で進めるサンゴ養殖事業と、久米島漁業協同組合が行なっているサンゴ養殖事業の2つ。
沖縄観光コンベンションビューロー(ブセナ海中公園)とザ・テラスホテルズは、2021年2月からブセナ岬周辺エリアにて、シコロサンゴとエダコモンサンゴの2種類のサンゴの種苗の中間育成、植え付けを実施。昨年は50本を植え付け、24%の12本が成長を続けている。
2022年は、遺伝的多様性があり、それゆえに環境変化での生存率が上がる「有性生殖」を活用した養殖にチャレンジする。6月中旬頃に行われると見られるサンゴの産卵時に卵を収集し、それを設置作業の効率化を目指したコンクリートで作られたミニ型のテトラポッドに着床させ、それを海底に設置していく手法を取る。
一方、久米島漁業協同組合は2018年から有性生殖法により種苗生産された種苗を使って、サンゴの養殖をスタート。2018年の500本からスタートし、2019年には660本、2020年と2021年には各600本の養殖を行なっている。2022年5月には、サンゴの養殖を開始して3年6カ月にして初めて、生殖したサンゴの初の産卵に成功した。
また、養殖活動だけでなく、サンゴ礁や海洋環境についての普及啓蒙活動を並行して実施。島内の小中高校のほか、修学旅行等で沖縄を訪れた県外の学校にも行なっている。
アラムコ・アジア・ジャパン株式会社の代表取締役社長、オマール・アル・アムーディ氏は「2011年から昨年までは、サンゴ保全の教育、啓蒙活動に焦点を当てて基金を助成してきました。今年からは第2期として、保全活動を実際に行なっている団体を助成していきます。今回は大きな成果が出ると感じた2団体に決定しました。来年の冬にどんな成果が出たかを聞くのが楽しみです」とコメント。
また、沖縄到着後、ブセナ海中公園のグラスボートに乗り、ブセナ岬周辺の海底を鑑賞したアムーディ氏は「沖縄石油基地での事業スタート以来、沖縄は私にとって特別な場所。沖縄の海は素晴らしい一方で、大きなダメージを受けています。国内外からの観光客が訪れる観光地としての沖縄は、その自然の美しさがポイントだと思います。私たちの活動が、沖縄の魅力を引き上げるために、自然を守る一助になれば幸いです」と心のこもったメッセージを寄せた。
2つの団体は、サンゴの養殖を進めながら、将来的にはともに“観光”での活用を考えている。活動と同時に今後の展開が楽しみだ。