育苗アイデア!冬から始める「夏野菜の徒長を防ぐワザ」とは

  • 2023年3月11日
  • NUKUMORE

夏野菜の苗づくりが、早いところでは1月から始まると思います。苗半作。ガッシリとしたいい苗をつくれば、収穫は約束されたようなもの。苗を徒長させないために、育苗のポイントを押さえていい育苗にのぞみましょう。

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なぜ徒長する?徒長するとどうなる?

健全な苗\ガッシリ/ YD21_p72_map_1_1677218728 徒長した苗\ヒョロ~ン/ YD21_p72_map_2_1677218753

温度、水、光の管理が大事、徒長するとトラブル必至

育苗中に苗の世話が適切なら、ガッシリした印象の苗を育てることができます。縦に伸びる伸長生長と、横に太る肥大生長のバランスがとれている、健全な苗です。
このような苗を目指して育苗をしていても、ヒョロヒョロと背ばかりが伸びた苗になることがあります。先の写真の通り、健全な苗と違って胚軸が細く弱々しい印象です。
肥大生長より伸長生長が勝って生長することを“徒長”といいます。

徒長の原因は、おもに5つです。この中で、温度、水、光の管理の失敗で徒長させてしまうケースが多く、注意したいところです。伸びてしまった胚軸は、元には戻りません。

徒長した苗にはトラブルが多くなります。体の組織が軟弱なために害虫の食害を受けやすく、病原菌も侵入しやすくなります。株元がぐらついて簡単に倒れてポッキリと折れることもあります。
また、定植後の生長も悪くて、花や実がつきにくく、収穫量が落ちてしまいます。これは大変です。

徒長苗になる原因いろいろ

1 温度が高すぎ
発芽適温、生育適温を守って育苗すること。若干低めの温度設定で育てた方が、生長はゆっくりですが、根の張りもよく強健な苗が育ちます。

2 水のやりすぎ
水を吸収しすぎて過剰に伸長します。とくに夜間や、日中でも雨や曇りの日に、土が湿っていると徒長しやすくなります。

3 肥料が効いた
肥料が効いて、葉や茎の生長に勢いがついて徒長することがあります。発芽には肥料は不要。生育初期から肥料を多く与えないようにしましょう。

4 光が足りない
日照が不足すると、光合成を行うための光が欲しくて伸長生長が促進されます。日当たりのいい場所で育苗することが基本中の基本です。

5 間引きが遅れた
苗が混み合った状態が続くと、光を求めて競争して簡単に徒長します。間引きを適宜行い、その後も鉢ずらしをして距離をあけて育苗しましょう。

たった一晩の“うっかり加温”で痛恨の徒長苗!

編集部の育苗の様子です。発芽育苗器を利用して、神田四葉キュウリの発芽を促しています。温度は25度に設定しました。 YD21_p73_map_1_1677218901 YD21_p73_map_2_1677218909 5日後の朝にいくつかのポットで発芽を確認しましたが、そのまま放置したのが失敗の原因。
翌日の夕方、育苗器の中を見てガッカリ。写真の通り、すべての苗を徒長させてしまいました。 YD21_p73_map_3_1677218923

徒長させないため育苗ワザ

光、温度、水を管理して健全な苗を育てる

夏野菜の育苗は、育苗期間が長いナス、ピーマンから始まり、トマト、スイカ、キュウリといった順にタネをまいていきます。徒長を防ぐためにポイントを押さえておきましょう。

まず、土から。市販の野菜づくりの土でも構いませんが、肥料に敏感な野菜もあるので、タネまき用の培土を利用すると安心です。

次に育苗場所。午前中から日が当たる場所を選びます。室内の場合も、日がよくさし込む窓辺で育苗します。薄暗い場所では徒長しやすくなります。

発芽温度や生育温度は、電気のヒーター類を利用するか、自然の日だまり育苗で確保します。中間地では、3月スタートなら日だまり育苗でほぼ問題なく育苗可能です。温度計をチェックして30度以上になっていたら、衣装ケースや育苗棚に風を通します。

水やりは朝1回与えれば十分。夜間に土が湿っていて温度が高いと、必ず徒長します。気をつけましょう。 温度計は必須
育苗中は温度管理が大事。温度計が欠かせません。スムーズに発芽させるには25~30度、その後の生育には20~25度、夜間は15度くらいを目安にします。 YD21_p74_map_1_1677219021 YD21_p74_map_2_1677219030 箱まきには深い容器は使わないこと
育苗箱にタネをスジまきする際、発泡スチロールの箱を利用すると便利ですが、縁が高いと光が不足して確実に徒長します。 YD21_p74_map_3_1677219047

1 肥料っ気の少ない培土にタネまき

01 育苗に使う培土は、肥料分の少ないものを利用します。市販されている、野菜づくりの土やタネまき用培土が使いやすいです。育苗ポットやセルトレイに培土を詰める前に、水分調整をしておきます。培土に水をかけてかき回して全体を湿らせます。 YD21_p74_map_4_1677219079 02、03 握ると団子になり、つつくと崩れるくらいが、ちょうどい水加減です。 YD21_p74_map_5_1677219093 YD21_p74_map_6_1677219099 01 育苗ポットに土を詰め、床にトントン打ちつけて土を落ち着かせます。 YD21_p74_map_7_1677219142 02 タネを土の上に置き、指で押し込みます。 YD21_p74_map_8_1677219152 03 ネの上に土をかぶせ、その上を手で押さえてしっかりと鎮圧します。 YD21_p74_map_9_1677219162 04 たっぷりと水を与えます。冷たい水ではいけません。土が冷えてしまいます。汲み置いて常温にした水を使います。発芽まではこれが最後の水やりです。 YD21_p74_map_10_1677219172

2 発芽するまで水やりをしない

01 衣装ケースの中で発芽させる例です。 YD21_p75_map_1_1677219195 02 保温、保湿のために不織布をかぶせます。新聞紙、ビニールも利用できます。 YD21_p75_map_2_1677219203 03 フタを閉めて日の当たる場所に置きます。夜間は冷えるので室内に。 YD21_p75_map_3_1677219212 04 発芽したら不織布をはずし、水を与え、適宜間引いて育苗を続けます。 YD21_p75_map_4_1677219222 本葉2~3枚で鉢上げしたら育苗棚に移します。
衣装ケースでは次の野菜の発芽・育苗をスタート。
衣装ケースも育苗棚も、気温が高い日は、風を通して温度を調整します。夜間の冷え込みが厳しいときは、育苗棚に古毛布などを掛けます。 YD21_p75_map_5_1677219248

3 水を与えるのは朝

夜間には土が乾いている状態にする!

水やりは朝1回行います。夜に土が湿っていると徒長しやすくなります。夜間は土が乾いている状態がよいことを覚えておきましょう。
ジョウロではなく、水差しタイプを使い、個々の育苗ポットの乾き具合を見て個別に水やりをするのがベストのやり方です。
また、雨の日は湿度が高いので土が乾きにくくなります。朝、土の様子を観察して、土が湿っていたら水やりは1日パスします。

★夕方には土が乾き気味になる量を与える!

4 定植が近づいたら外気に慣らす

甘やかしていると徒長してしまう!

葉が展開して隣の苗の葉とぶつかるようになったらポットをずらして間隔をあける“鉢ずらし”を行います。くっつけたままだと、徒長してしまいます。
また、定植日の1週間前になったら苗を育苗棚から外に出して並べ、外気に慣らす作業をします。だいぶ気温が上がってきていますから、いつまでも育苗棚の中でヌクヌクさせていると、徒長することもあります。 定植の1週間前から、晴れた日中に苗を育苗棚から出し、外気に慣らします。夕方までには育苗棚に戻します。 YD21_p75_map_6_1677219367 初心者でもうまくいく窓辺で日だまり育苗!

写真は、編集部で試した室内育苗の様子です。サカタのタネの通販で購入したビギナー向けの苗づくりキットを利用して、トマト、ナス、ピーマンを育苗しました。「かんたん苗づくりキット」というだけあって、タネをまくピートパン、ジフィーポット、培養土、カバー付きのトレーなど、育苗に必要な資材がそろっています。

ビートパンにタネをスジまきしてトレーにおさめ、窓辺に置いて育苗を始めました。発芽後は、ジフィーポットに移植して日だまり育苗を継続。何の問題もなく、いい苗が育ちました。ビギナーにおすすめです。 01 ピートパンにスジまきしておいたピーマンの本葉が出たので、根鉢を崩して苗採りをします。 YD21_p76_map_1_1677219421 02 ジフィーポットに培養土を入れておき、01の苗を移植します。 YD21_p76_map_2_1677219431 03 株元の土を押さえて移植終了。ポットをトレーに並べます。 YD21_p76_map_3_1677219442 04 トレーは底面給水式で、水やりの手間が省けます。ドームカバーをかぶせて窓辺に置いて育苗を続けます。 YD21_p76_map_4_1677219451 【+α】
日照不足をLEDライトで補う、水やりもぬるめの水を使う

大阪府の菜園家、辻伸幸さんが実践している苗づくりのアイデアです。辻さんは自宅の室内縁側に育苗棚を置いて野菜の苗を育てています。ただ、日照が思うほどに得られず、また、夜間には室温がかなり下がることもあり、苗づくりに最適とはいえない環境です。
辻さんは、電気ヒーター式の育苗器とペット用の電熱マットで発芽温度や生育温度を確保し、また、日照を補うためにLEDの植物生育ライトを利用しています。

ライトは育苗棚にクリップで取り付けるタイプで、コンセントの間に“スマートプラグ”をかませて、日の出から日没の間だけ点灯するようにタイマーセットしています。
また、辻さんは水やりの際、ちょっとぬるめの水を与えています。土と根を冷やさないための配慮です。
YD21_p76_map_5_1677219497 こちらは辻さんにならって編集部で組み立てた育苗棚。今シーズンの育苗で利用予定です。 YD21_p76_map_6_1677219502 クリップタイプの植物生育用の簡易ライトが4000円くらいで市販されています。 YD21_p76_map_7_1677219523 スマートプラグのタイマー機能を利用すると、スイッチのオンオフの手間が省けて便利です。

復活ワザ「深植え&胚軸切断で徒長苗を救おう!」

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徒長してもリカバーできる、簡単なのは深植え

徒長はさせないに限りますが、うっかり徒長させてしまったら、まず、タネをまき直すことをおすすめします。
夏野菜は気温が上がっていく時期に育てますから、スタートが少々遅れても栽培中に追いつきます。

また、貴重なタネで、まき直しが効かないような場合には、ここで紹介する①深植え鉢上げと②胚軸切断挿し木を試してみてください。

編集部の実験栽培ではほぼリカバーに成功しています。簡単なのは深植え鉢上げですが、胚軸切断挿し木は、病気や害虫に強くなるメリットもあり、また、このテクニックを覚えれば間引き苗を再利用することもできます。ぜひ試してみてください。

1 深植え鉢上げ

01 徒長してしまった苗は、双葉の位置まで胚軸を埋めてポットに移植します。 YD21_p77_map_2_1677219607 02 移植後はすぐに強い光に当てません。遮光ネットをかけて木漏れ日程度の光で養生します。 YD21_p77_map_3_1677219618

2 胚軸切断挿し木

01 移植先の育苗ポットに水を与え、あらかじめ日に当てて温めておきます。 YD21_p77_map_4_1677219633 02 徒長した苗を胚軸の地際部分で切ります。 YD21_p77_map_5_1677219650 03 切った苗をきれいな水にさして、2~3時間給水させます。ズッキーニ、キュウリ、マクワウリの徒長苗を胚軸切断しました。 YD21_p77_map_6_1677219659 04 育苗ポットの土に棒で穴をあけ、胚軸部分を挿し込み、指で土を押さえます。「【1 深植え鉢上げ】02」のケースに収め、遮光してしばらく養生します。新しい葉が出てきたら根付いた証拠です。 YD21_p77_map_7_1677219669 05 胚軸切断挿し木の苗から育てた神田四葉キュウリです。編集部の屋上菜園で元気に育ちました。 YD21_p77_map_8_1677219677

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