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(Boulder)vol.9 アメリカの環境政策はどこへ…

  • 2008年10月30日

アメリカ大統領選における選挙活動と環境政策

マイルハイ・スタジアム
マイルハイ・スタジアムでオバマ候補のスピーチが
 アメリカ合衆国大統領選挙に向け、コロラド州は自由世界の次なるリーダーたちの決戦の場となった。今年8月、コロラドの州都デンバーが民主党大会の開催地として賑わったことは記憶に新しい。その後選挙キャンペーン期間が終盤を迎えるなか、両大統領・副大統領候補は度々同州を訪れていた。伝統的に共和党色(赤)が強いコロラドにおいて、かつてボールダーだけは唯一民主党(青)寄りの郡であり、その様子はさながら真っ赤な海に浮いた青い孤島のようであった。しかし8年に渡る共和党ブッシュ政権が終わりを迎える今、州内の民主・共和両党の支持率は互角になりつつある。
 次のこの国のリーダーには「地球温暖化問題」や「エネルギー問題」と戦うための明確なプランを国民に提示することが間違いなく求められるだろう。地球規模で進む温暖化、外国の石油に危険なほど依存する異常な社会構造、これらは次期大統領にとって最も重要な課題になるはずだ。


資金投入か税控除か、両者の環境政策

共和党マケイン候補と民主党オバマ候補
共和党マケイン候補と民主党オバマ候補
民主党大会における「スマート・グリッド」の説明ブース
民主党大会における「スマート・グリッド」の説明ブース
 民主党オバマ&バイデン候補と共和党マケイン&ペイリン候補はどちらも「キャップアンドトレード(Cap & Trade)」と呼ばれる温室効果ガス排出量取引制度を支持している。この方式は、具体的な削減目標を達成するために排出量に上限(キャップ)を定め、この上限をもとに各企業などに平等な排出枠を配分し、実際の排出量との差分を取引(トレード)するものである。仮にある企業が温室効果ガスの排出量を上限より低く抑えることができれば、余剰分の排出枠を他社に販売する事で利益を得られる仕組みだ。割り当てられる排出枠を年々縮小させ、排出量取引市場を刺激しながら社会全体の排出量を減らしていくことが狙いだ。また両候補共通して、私企業同士の排出量余剰枠売買から吸い上げる税金を代替エネルギー開発資金に充てる政策だ。2人の主な違いは、オバマ&バイデン候補が代替エネルギー開発への直接投資を打ち出しているのに対し、マケイン&ペイリン候補は税控除に留めている点だろう。
 オバマ&バイデン候補は2025年までに温室効果ガス排出を1990年当時の排出量の80%まで減らすことを目標に掲げ、エネルギー技術開発分野に対して向こう10年間に渡り$150 billion(約15兆円)を投資することを約束している。低炭素社会、非石油燃料社会を実現するために、2020年までに燃料供給者に対して、製造販売する全ての燃料製品を改良、再開発し、それらの燃料製品から排出される二酸化炭素を今より10%削減することを要求している。また2050年までに国内消費電力の25%をソーラーや風力、そして地熱発電などのクリーンなエネルギー源から引き出す事を目指している。その他、エネルギー分配の確実性と能率を向上させる「スマートグリッド(Smart Grid)」と呼ばれる電力供給網強化システムに対する開発投資案を含んでいることも注目されている。今までの電力供給システムは一方的かつ無駄の多い仕組みであったが、供給網のコンピュータ化を進めることで供給時に生じる電力浪費を削減しようという新しい試みである。

 共和党マケイン&ペイリン候補もまた「キャップアンドトレード」を支持しており、オバマ&バイデン計画と比べると目標値は高く設定されている反面、長期的な計画になっている。2050年までに1990年当時の排出量の60%まで温室効果ガス排出を減らすことを掲げる。しかし、オバマ&バイデン計画と違うのは、このキャップアンドトレードを導入する産業分野を予め電力業界、輸送燃料業界、貿易業、工業に特定している点だ。これらの産業はアメリカが排出する温室効果ガス全体の90%を占めている。
マイルハイ・スタジアム
「クリーン・コール・テクノロジー」Images provided by treehugger.com
 風力、水力、ソーラーなど代替エネルギー開発の奨励にマケイン&ペイリン計画では、資金投入ではなく税控除を提案している。また、「クリーン・コール・テクノロジー(Clean Coal Technology)」と呼ばれる地球環境へ対応した石炭利用技術の開発へ年間$2 billion(約2000億円)を投資する計画を立てている。クリーン・コールとは、不純物や鉱物を取り除いた状態の石炭であり、通常のものよりもクリーンかつ効果的に燃焼するとされる。ひとたびこの新技術が実用化・商業化すれば、例えば中国のように石炭を大量に消費する国家へも環境負荷の少ない方法を伝授することができ、またそうなれば国際的なグリーン市場でのアメリカの役割は多いに増すことになる。マケイン&ペイリン計画ではその他、二酸化炭素を排出しない原子力を“ゼロ排出”エネルギー資源として注目し、2030年までに45の新たな原子力発電所を建設することを打ち出している。


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