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夜逃げの途中でDV加害者に見つかってしまったら? 現場で働く「夜逃げ屋日記」著者に聞いたリアルな実体験

  • 2024年4月6日
  • レタスクラブニュース


「夜逃げ屋」という職業があることをご存知ですか? 夜逃げ屋とは、DVや毒親、ストーカーなどから被害者を逃すことを目的に引越しを行う業者のこと。漫画家の宮野シンイチさんは、ひょんなきっかけから夜逃げ屋で働くことに。実際に現場に行ってみると、そこにはさまざまな複雑な事情を抱えた人がいて……。

万が一に備えて警察の立ち会いの元で作業を進めることもあれば、キレた加害者に暴力を振るわれることも珍しくない作業。そんな「夜逃げ屋」のリアルな現場の様子を描いた実話コミックエッセイ『夜逃げ屋日記』。X(旧Twitter)にて公開されるや大きな反響を呼び、現在2巻まで単行本も発売されています。

今回は、作者の宮野シンイチさんに印象に残っているエピソードについてお話を聞きました。


母親と夜逃げした中学生が心を開いたある出来事






――最も印象に残っているエピソードを教えてください。

宮野シンイチさん:全部印象的ではあるのですが、一つだけあげるならば、1巻のトモキくんの話ですね。トモキくんは父親のDVから逃れるために、お母さんと2人で夜逃げすることになった14歳の中学生です。安全に配慮して、学校を早退後に帰宅せずそのまま移転先へと向かいました。だから自分の持ち物を選別して持っていく余裕もなかったんです。







――持ち出せる物や時間が限られる中で、トモキくんの大事な戦車のプラモデルをできるだけ丁寧に梱包して持ち出そうとする宮野さんの姿や、戦車の話題をきっかけにトモキくんが心を開いていく様子が、読んでいてもホッとするエピソードでした。

宮野シンイチさん:移転先に着いた後も元気がなかったトモキくんでしたが、偶然にも戦車好きという僕と共通の趣味があって盛り上がりました。あの時の笑顔は印象的でしたし、あそこまでガッツリ依頼者と話をしたのは初めてでした。ちなみに彼は今も元気です。


普通の引っ越し屋じゃない!トラブルにも対応する「夜逃げ屋」


――「普通の引越し」と「夜逃げ」の違いを教えてください。

宮野シンイチさん:夜逃げ屋に依頼に来るのは複雑な事情を抱えた人がほとんどです。中でも圧倒的に多いのはDVと虐待です。それだけで全体の7〜8割を占めます。老若男女問わずです。

引越しの作業自体はそんなに変わらないのですが、作業中に加害者が帰ってきた場合、ほぼ確実にトラブルになります。そうなった場合、当たり前ですが普通の業者だと作業を中断して帰ることがほとんどなので、残された依頼者さんは大変なことになりますよね。
ただ、夜逃げ屋はそうなった場合でも加害者と依頼者の間に立って対応します。







――夜逃げの依頼者と加害者との間に入ることもあるのですね。実際に夜逃げの途中で加害者に見つかってしまった時はどう対応するのでしょうか?

宮野シンイチさん:作業をしている最中にふら〜っと帰ってきて、「何してんの?」からトラブルになったことはあります。ただ、その対応は、基本的に社長や経験のあるスタッフが引き受けてくれます。
僕ですか? 僕はその間に一生懸命荷物を運びます。この時の僕は早いです。怖いので。


夜逃げ後の「アフターケア」も大事な仕事






――無事に夜逃げが成功した後、依頼者はどのようなアフターケアを受けられるのでしょうか?

宮野シンイチさん:夜逃げをした後は、基本的に今までの人間関係は一切断ち切ることになるので、自分の今の辛さを相談できる人がなかなかいません。ですから、社長自らが親身になって話を聞くようにしています。精神的に不安定になっている方には、より専門的なカウンセラーさんを付けてケアをすることもあります。
また、知らない土地で一から生活を始めなくてはならないので、社長が依頼者の職探しを手伝うこともありますよ。

***

依頼者と加害者の間に入ってトラブル対応をしたり、引越し後の精神的サポートや職探しのお手伝いまで引き受けてくれる夜逃げ屋。作中でも、社長自らが加害者からの暴力に身体を張って立ち向かう壮絶な様子がが描写されています。藁にもすがる思いで依頼してきた人にとって、彼らは心身共に寄り添ってくれる、頼もしい存在なのです。

取材・文=宇都宮薫

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