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マウンティングにママ友同士のドロドロ…描写すべてが生々しいと話題の『タワマンに住んで後悔してる』漫画家インタビュー

  • 2023年6月25日
  • レタスクラブニュース


街を一望する「タワーマンション」。
一般的に20階以上の超高層物件のことですが、一時期は「勝ち組」の象徴ともてはやされていたせいか、選ばれた人だけが住めるイメージがあります。

そんなタワマンに住む3組の家族の内情と苦悩を描いた漫画『タワマンに住んで後悔してる』が、低層階と高層階の生活格差、子どもの学力や夫の職業でマウントを取り合う妻同士の関係性を赤裸々に描いていると話題になっています。

それもそのはず、この作品の原作は、いわゆる「タワマン文学」の旗手の一人でもある窓際三等兵さん。それだけに「え、これって実はモデルがいるんじゃない⁉」と思ってしまうほど、都会で働き、暮らし、子育てする男女の心の機微が表現されているんです。

タワマン文学とは、タワーマンションを舞台に、そこに住む人々の生活格差や悲哀を描いた小説のこと。当初はTwitterなどSNSでの投稿が主でしたが、いまや単行本が発売されるほどの人気のジャンルになっています。



そんな話題沸騰の作品、一体どんな物語なのでしょうか。あらすじをご紹介しましょう。



登場人物とあらすじ




物語の主役は、地方から念願の東京転勤が叶い、憧れだったタワマン低層階の部屋を購入した渕上家の専業主婦、舞。初めての東京生活になかなか慣れない舞ですが、息子が野球チームに所属することでママ友との交流を持ち始めます。







舞と同じタワマンの高層階に住むボスママ・恵に邪険に扱われていた恵をなぐさめてくれたのは、中層階に住むキャリア志向で共働きの香織でした。
この出来事をきっかけに、子どもの進学や塾についての話題を共有するうち、仲を深めていく舞と香織。

ある日、舞は恵の主催するホームパーティに招かれました。






タワマンの最上階に住み、ニューヨークに駐在していたエリート商社マンの夫と、英語ペラペラの優秀な息子を持つ恵。舞は恵と自分との境遇の差に、思いをはせてしまうのでした…。

低層階と高層階、子どもの学力、夫の職業など、さまざまな競争意識に駆り立てられていく大人たちを描いたこの漫画を描いたグラハム子さんにお話を伺いました!


漫画家・グラハム子さんインタビュー


── はじめて原作を読んだときの感想をお教えいただけますか?

グラハム子さん
「タワマン」というところよりも、人間ドラマの方が見どころだなと感じました。人間には見える軸と見えない軸があって、職業、年収、学歴、家、持ち物などは見える軸。謙虚さ、傲慢さ、心の豊かさ、安定さなどは見えない軸。そんないくつもの軸が複雑に重なり合うお話だな、と。それらが集まる場所がきっと社会的成功の象徴であるタワマンなのだろうなと思いました。

──低層階に住む主人公の渕上舞、中層階に住む共働きの瀧本香織、最上階に住むボスママの堀恵は、一見順調そうに人生を歩んでいるかに見えて、実は闇を抱えています。それぞれのキャラクターの印象と、どのように描こうとしたかを教えてください。

グラハム子さん
3人とも印象は一緒です。大元をたどれば「自分に自信が持てず他者との比較で生きてしまう」というストレスを抱えていて、そのストレスを自分だけの力では飼い慣らすことができない人達なんだなと。でもそこだけに焦点を当ててしまうとそれぞれの個性が消えてしまいますので、その自信の持てなさを補う手段の違いの部分(家や夫のステータスで補ったり、子どもに勉強させたり、仕事だったり)と、今まで生きてきた環境、そして今置かれている状況をしっかり描こうと思いました。






── 子ども同士が親の職業を話題にしたり、タワマンの居住階について言及したりと、子ども時代を都心で過ごすことのやりづらさも描かれていますね。グラハム子さんご自身も子育て中だと思いますが、そうした環境での育児に対し、思うことはありますか?

グラハム子さん
これは都心やタワマンに限ったことではないと思いますが、人と比較ばかりしていると大変なんじゃないかな、と思います。
競争社会を勝ち抜いた優秀な人ばかりが身近にいる環境だと、どうしても比較してしまうのかもしれませんね。もちろん客観的にわが子の位置を把握することも必要だと思います。ただそこで、上へ上へと行かせようとしすぎると、苦しくなるんじゃないでしょうか。
例えば子育てにしても、将来のわが子とか理想のわが子を想像する前に、まずは今目の前にいる等身大のわが子を見ることが大切だと思います。子どもに「自分は自分以上でなくては許されないんだ」と思わせてはいけないと思います。








── タワマンの居住階や夫の職業が自分の価値であると錯覚してしまうような女性の姿も描かれています。そうした勘違いはどうして起こると思いますか? そして、そういう人物がもし身近にいたら、どう対処すればいいと思いますか?

グラハム子さん
下手に仲良くなるのも攻撃されるのも嫌ですし、程よい距離感を保ちつつ、相手を気分を悪くさせない程度の対応をするのではないでしょうか。
こういった錯覚は自分自身に価値を見出せてないから起こることかもしれないですね。「私には価値がある」ではなくて、「選ばれた私には価値がある」「素敵なお家に住んでいる私には価値がある」になってしまうのかも。私にも数%はこのような思いはありますし、その気持ちはわからなくはないですが…。でもそれが100%だとマズイと思うんです。ましてや他人にアピールするのは「私ってすごいでしょ?認めて!羨ましがって!そうすれば気分良くなれるの!お願い!」って言ってるように聞こえてしまいます。

── グラハム子さんは、ずばり、タワマンに住んでみたいですか? もしよろしければ理由もあわせてお答えください。

グラハム子さん
うーん…私は家庭菜園が好きなので庭が欲しいから、今はそういう思いはないですね。
夫と子どもも庭でゴルフや野球の練習をしていますし。ペットもいますしね。
住民なら使い放題のジムが付いているタワマンもあると聞いたことがありますが、それは羨ましいです。あとは都心だと夫も通勤が楽になるし(今は東京まで1時間以上かけて通っています)、私も出版社行く時に便利かも。子どもが独立して夫婦2人になったら良いかも…って、そんなお金は無いんですけどね(笑)。

── 物語の最後で、舞、香織、恵とその家族はそれぞれの答えを見つけますが、その答えについてどう感じましたか?

グラハム子さん
舞と恵はひとまず置いておいて、心配なのは香織です。第一印象は1番しっかりしていて能力もある感じだったのに…。でもだからこそなのかもしれません。この3家族がこの後どうなるのか私も知りたいです。

 *     *     *

価値観も多様化し、SNSの流行で常に人の目を意識せざるをえないいまの時代。
人もうらやむ場所に住んでしまったがゆえに嫉妬し、劣等感を抱き、自分と家族にとって本当に大切なものが何なのか、見失ってしまったのがこの漫画の登場人物たち。

そんな彼らの虚栄と内情を、違う世界の話と突き放す前に、実際の漫画を読んで「もし私だったらどうするか」と考えてみるのもいいかもしません。それはいま自分が手にしている幸せを見つめなおすことにもつながるはずです。

イラスト=『タワマンに住んで後悔してる』(原作=窓際三等兵、漫画=グラハム子)より
取材・文=山上由利子

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