「いつも損な役回りを押しつけられがち」「いらないと断れずに買い物してしまう」。これがいつものこととなると、発達障害の傾向がありそうです。
ASDの中でも「受動型」と呼ばれるタイプの人は、もしかすると子どもの頃から、親や先生、友だちの言うことに、黙って従うことが多かったかもしれません。
たとえば、友だちに「この消しゴム、かわいいからちょうだい」と言われたとき、本当はあげたくないのに渡してしまう。進学先が自分の希望と違っていても、「親が言うなら…」とあきらめてしまう。
こうしたケースでは、自分の気持ちを表現できず、相手の意見をそのまま受け入れてしまっています。「イヤ」と思ってもそれを伝えられない。いわば“過剰適応”の状態です。
このタイプのASDの人は、言葉で断るのが苦手なだけでなく、表情やしぐさで「NO」を伝えることも難しい傾向があります。「それはちょっと…」と困った顔をすることができないので、相手に「嫌がっている」と気づいてもらえないのです。
たとえば、話しかけられたら返事をし、ニッコリあいさつされれば笑って返す。できないことを頼まれたら、申し訳なさそうな表情で理由を説明して断る。
こうした“自然なやりとり”は、多くの人にとっては当たり前のコミュニケーションかもしれません。でも、ASDの人にとっては、この「NOを伝える」こと自体がとても難しいのです。
何かを頼まれたときの返事が「イエス」しかないあなた。実は選択肢はあと2つあります。それが「ノー」と「保留」です。
気持ちよく「イエス」と言っているのなら、それでいいのですが、場合によっては、「ノー」を言わなくてはならないときもありますよね。「断りたいけれど…」と追い詰められた気持ちになったら、「断ってもいいんだよ」と自分に語りかけてください。
もう1つの「保留」は、いったん考える時間かせぎです。すぐには断れないけれど引き受けるのも気が重いのなら、「来週まで考えさせてください」などと、時間の目安を入れて保留にするのがおすすめです。
相手に「もしかしたら断られるかもしれない」と思わせる効果もあるので、断りやすくなるかもしれません。
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