更年期の影響を受けるのは女性だけではありません。男性にも更年期があり、心身に影響を及ぼすことがあります。男性更年期の症状や対処法を見ていきましょう。
男性の更年期に関する基本的な知識を確認してみましょう。
男性の更年期は、一般的に40歳代以降に始まります。通常、男性ホルモン「テストステロン」が中年以降に減少し、その影響で更年期症状が出ます。女性の更年期と違い、明確な終わりがないのが男性更年期の特徴のひとつです。
女性の更年期と違い、男性更年期には明確な終わりがありません。
女性更年期は女性ホルモン「エストロゲン」が減少する閉経前後の10年間に始まり、閉経後は5年ほどで徐々に症状は治まっていきます。
一方、男性の更年期は40歳代以降であればいつでも発症する可能性があり、明確な発症時期は決まっていません。
男性更年期には身体的な症状・精神的な症状・性機能の症状の3つの症状があります。
身体的な症状としては、関節症や筋肉痛といった痛みを感じやすくなります。その他、女性の更年期と同様に発汗やほてり、疲れやすさといった症状も出るようです。
太りやすくなってメタボリックシンドロームになる方もいれば、頻尿に悩まされる人もいます。
女性の更年期と同様に、イライラしたり不安になったりする方もいます。また、不眠や意欲の低下といった、うつ病のような症状が出る人も。
その他、集中力や記憶力が低下することもあります。
性機能では、勃起障害（ED）を発症し、性行為ができなくなる場合もあります。また、男性更年期になると性欲自体が低下していきます。
男性更年期への3つの対処法を紹介します。
男性の更年期はテストステロンの減少が大きな要因となっているので、筋トレや睡眠によってテストステロンの分泌を促しましょう。食生活では、テストステロンを増やすために良質なタンパク質を摂ることが重要です。
アミノ酸の一種「カルニチン」もテストステロンの分泌を促す効果があるので、羊肉や牛肉を意識的に食べましょう。テストステロンを産出する精巣は酸化に弱いので、抗酸化作用をもつ玉ねぎやニンニクと一緒に摂るのがおすすめです。
男性ホルモンの数値が著しく低くて生活に支障をきたす場合、保険適用で男性ホルモン補充療法を受けることもできます。
一般的に、テストステロン製剤「エナルモンデポー」125～250mgを2週間に1度筋肉注射することで、男性ホルモンを補充し、男性更年期の症状を改善します。
症状が軽い場合は、漢方薬の服用によって男性更年期の症状に対処することもできます。
男性更年期の生殖泌尿器機能や体力の低下に対しては、「ホルモンバランスの乱れを整える」「血流をよくして、生殖泌尿機能を回復させる」「からだを温め、内臓の機能を回復する」「消化・吸収の機能をよくして疲れをとる」といった漢方薬を選びます。
また、精神的な不調には、「自律神経を整える」「イライラや神経の高ぶりを鎮める」などの働きをもつ漢方薬を選びます。
・補中益気湯（ほちゅうえっきとう）：倦怠感やだるさ、疲労、気力がないといった症状を改善します。胃腸の働きを整え、気力を充実させます。
・八味地黄丸（はちみじおうがん）：加齢により衰えたからだの生理機能を整え、からだを温めることで痛みやしびれを改善します。腎臓や膀胱の機能をよくして尿トラブルも改善します。
・抑肝散（よくかんさん）：不安、イライラなどの精神症状を抑え、不眠症も改善します。
・柴胡加竜骨牡蛎湯（さいこかりゅうこつぼれいとう）：不眠やイライラ、動悸に用いられます。神経の高ぶりを鎮め、気持ちを落ち着かせます。
男性更年期は始まる時期に個人差があるため、症状が始まっても自覚できない人が多いといわれています。不調を感じたら、男性更年期も疑ってみてくださいね。
〈この記事を書いた人〉山形ゆかり●薬剤師・薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。
