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Vol.145 今年も“うた”講座、始めました。

  • 2014年4月24日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

桜と校舎 早くも新年度が始まって1ヶ月が過ぎようとしています。新入生、新入社員のみなさんにとっては、文字通りあっという間の1ヶ月間だったんじゃないかと思いますが、僕は今年もまた母校SFCで、新入生を含む学生たちと週に一度、対話を重ねる時間を持っています。“うた”というタイトルの講座なんですが、すごく抽象的なやりとりが中心になりますし、1年目が300人くらいで2年目が240人くらいという規模だったので、具体的な手応えといったものは感じにくいなあというのが正直なところです。自分のことを振り返ってみても、1年目は夢中でやった感じだったし、2年目はその幻影と闘ってたところもあったように思います。1年目も2年目も、本業のスケジュールがタイトで、準備がドタバタになってしまったということも少なくなかったですしね。ただ、講義をやる日は、予想していたよりもキャンパスにいることができたんで、学生といろんな音楽談義をしたり、相談に乗ったり、ということもけっこうありました。僕にとってSFCというところは“青春の場所”でもあるんです。その“青春の場所”は一般的に言ってもちろん過去のもののはずなのですが、あのキャンパスに行くと“オレ、まだ終わってないなあ”という感じがしちゃうんですよ。大人になって違う人生を歩んでいるのではなく、まだ同じ流れのなかにいるんだなということを確認できるという意味でも、僕にとっては有意義なんです。ある種の道標のようなものというか。それに、ある種の故郷感さえあるんですよね。学生時代は、ほとんど“住んで”ましたから(笑)。

 3年目の講座に向かうにあたり、参考のために過去2年の講義の同録を文字おこししてもらったんですが、それを例えば分析/検討して授業の内容を進化させようというようなつもりはないんです。始めるときに、3年間は同じことをやろうと思っていましたから。というのは、同じ気持ちで3回はやらないと、僕は教育の専門家ではないですから、1回や2回やっただけのことについて、はっきり意識して計画を変更するのは怖いなと思ったんです。じゃあ、なぜ3年なのか?ということについては、なんとなくの勘としか言いようがないんですが(笑)、3年間やってみて、それから次を考えればいいかなっていう。今年は、そういう意味ではひとつの節目の年ではあります。

 先に「具体的な手応えは感じにくい」と書きましたが、それでも学生の意識にかなりデコボコがあるのは感じています。200人、300人という数ですからいろんな意識の学生がいるのは自然なことだと思いますが、例えば“この時間しか選べないので内容に興味はないけど、とりあえずこの講義を取りました”というような人までなんとか引き込もうというふうには考えていません。聴き手のターゲッティングをあまり広くしてしまうと、講義内容自体がまとまりのないものになってしまいますから。その一方で、授業での僕は「正解はひとつも持っていません」というスタンスでやっています。先輩としてちょっとだけ先行している部分はあるにしても、一緒に正解を追い求めてみましょう、という感じですね。僕の授業は、北山というOBの話を集団で聞きに行くというのがいちばん近いかもしれないです(笑)。例えばアカペラのワークショップに出かけていく場合には、真逆のスタンスなんです。起業家が出資を募るように(笑)、「みんな、アカペラやろうぜ!」という感じで、「アカペラとは何なのか?」「僕がアカペラをどう捉えているのか?」「なぜアカペラが好きなのか?」といったことをすごく熱っぽく語ります。ワークショップは基本的には1回きりの出会いですから、伝えたいことをその場で伝えきろうとするわけですね。でも、この講座では半年間、だいたい15回くらいの授業を通して、いろんな角度からアプローチすることができますから、そういうスタンスを取っているわけです。

 そんなふうにして、みんなの思考を、そして僕自身の思考を揺さぶってみましょうというのがこの講座です。さて、今年はどんな地点にたどり着けるんでしょうか? 僕自身、ワクワクドキドキしながら半年間を過ごしたいと思っています。

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