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Vol.141 「あなたにはこれが足りないから、こうなるべきですよ」と説教するのではなく

  • 2014年2月27日

 みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。

 前回は、コヤマススムさんの取り組みが、僕が最近よく考えていることについての良いヒントを提供してくれた気がするというところもまで書きましたが、今回はその「僕が最近よく考えていること」について書いていきましょう。

 前回も書いたように、僕はよく妄想を展開しているわけですが、その妄想をふくらませ、あるいは友達と語り合うなかで、自分の考え方、感じ方が変化していくことがまた面白いわけです。そういう過程にあって、人との関わり合いにおける最近の僕の主要なスタンスのひとつは、「あなたにはこれが足りないから、こうなるべきですよ」と言っても仕方ない、というものです。で、仕方ないから、何もしない、言わないということでは僕としても気持ちが落ち着かないので、“じゃあ、どうすればいいのか?”ということを最近よく考えているわけです。ここのところ中学生と触れ合う機会が増えているというのも、そういうことを考えることが多くなっているひとつの理由かもしれません。

 前回紹介したコヤマさんは、“最近の子供は伝える力が十分ではない”と感じたところで、「もっと積極的に話をしよう」と諭すのではなく、“だったら、その子どもたちが大人に伝えたくなるような体験をできる場所を作ろう”と思い立ち、見事にそれを実現したわけですよね。

 このテーマに関して、もうひとつ僕に良い刺激を与えてくれた出来事があって、それは昨年末にネット上ではかなり話題になったのでご存知の方も少なくないと思いますが、新幹線の車内で泣いている赤ちゃんへの対応に関する堀江貴文さんと駒崎弘樹さんとのやりとりに端を発した論争です。駒崎さんは、病児保育・病後児保育を支援するNPO「フローレンス」の代表で、面識はないのですが、大学の後輩ということもあって、その活動には注目しています。堀江さんについては説明するまでもないでしょう。彼らのやりとりの詳細は長くなるのでここでは割愛しますが、僕自身は、この論争とそれに関するいろんな人のいろいろなツイートを見ていて、考えがかなり進んでいきました。そもそも「これが絶対正解!」というような答がある話ではないような気がしますが、とりあえず現在の僕は“新幹線の中で赤ちゃんが泣き出して親は手をこまねいている”という状況に遭遇したら、「何か手伝えることはありますか?」と声をかけてみる、ということにしています。ウザいと思われる、あるいは不審に思われるという可能性もかなりありますが(笑)、それでも声をかけてみるつもりです。そうすることで、見えてくるものがあるんじゃないかなあと思うんです。それから、この出来事に関して僕が書いたfacebookの記事(ざっくり言うと、子育てをシェアできないかなあ、というもの。時間のある方はこちらをどうぞ:https://www.facebook.com/yohken/posts/3904568868591)に関する感想でいちばん多かったのは「安全面が課題ですね」という意見で、ここにも何かが象徴的に表れているような気がしています。

 そして、この答を自分なりに探していくと、ひとつのことに思い当たります。それは、先にあげた2つの出来事はたまたまどちらも子供に関することでしたが、大人が子供を育てる、あるいは教育するという場面だけでなく、大人同士のコミュニケーション、さらには大人自身が社会で生きていくための知恵や体験の絶対的な量が足りていないのかもしれないなあということです。それはもちろんインターネットの影響があるでしょうし、あるいは社会インフラや社会保障制度の充実がもたらしたひとつの結果である、というふうに考えることもできると思います。ただ、僕がすごく面白いなあと思って注目し、また期待もしているのは、そういう状況に対応して、独自の発想と手作り感覚でチームを組織して、いろんな体験や知恵を提供していこうとしている人たちが増えていることです。

 この連載でも、そういう人たちや取り組みをどんどん紹介したり、取材したりしたいと思っています。どうぞ、お楽しみに。


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